預言者アルムスタファは語る
「預言者アルムスタファは語る」
カリール ジブラン (著), Kahlil Gibran (原著), 堀内 利美 (翻訳) 単行本 1993/03 近代文芸社 単行本: 131p
Vol.3 No.0032 ★★★★☆
しかし、丘を下りて行くと、悲しみが湧き、アルムスタファは、心密かに思った---
私は、悲しむことなく、穏やかに、この町を去れるだろうか。いや、心を傷めずに、この町を去ることは、できないだろう。
私が、城壁の中で過ごした辛い日々は、長かった。孤独の夜も、長かった。私は、名残りを惜しまずに、自分の苦しみと、孤独から、訣別することはできないだろう。p12「別れの日」
ジブランの無二の親友ミハイル・ナイーミの「ミルダッドの書」に比べれば、物語は一気に核心へと突き進む。極めてシンプルな物語の構成だ。
当ブログが確認したジブランの「預言者」の二桁に及ぶ翻訳群を、ひとつひとつ比較するまでもなく、どれも読みやすく、いずれも甲乙つけがたい。であるのに関わらず、これだけの翻訳が存在するところに、いかにジブランが広く、多くの人に愛されているかがわかる。
それでもなお、BIHL2に居並ぶ他の名著とともに眺めてみれば、他の書たちがそうであるように、この書も単なるエンターテイメントとして読まれるべきではない、ということは明確なことだ。この訳者には、個人的に親近感を感じる。一度お会いしてみたいな、と思ったほどだった。
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