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2010/06/21

新しい宇宙像<6>

<5>よりつづく 

新しい宇宙像〈上〉 新しい宇宙像〈下〉
「新しい宇宙像」〈上〉 〈下〉 <6>
[P.D. ウスペンスキー (著), P.D. Ouspensky (原著), 高橋 弘泰 (翻訳) 2002/06~08 出版社: コスモスライブラリー 単行本: 406p、399p
☆☆☆☆

 BIHL「奇蹟を求めて」があり、BIHL3「ターシャム・オルガヌム」が入っているかぎり、P・D・ウスペンスキーを思い出さないわけにはいかない。ここいらへんで、グルジェフの門弟としてのウスペンスキーではなくて、単独の思想家=神秘家としてのウスペンスキーに光をあてて、もうすこし当ブログなりに把握しておく必要がある。

 ましてやBIHL8-2に、この「新しい宇宙像」があり、BIHL10-9に「人間に可能な進化の心理学」が入っているとするならば、一冊一冊の本としてではなく、ひとりの人間としてのウスペンスキーをもっと理解しておく必要がある。「BIHL登場回数の多い著者ベスト10」においても、カリール・ジブランについで、堂々の2位。かのOshoもあれこれ言いつつ、この人物には一目おいていたようだ。

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 こうしてみると、起承転結、 としてこの4タイトルを当てはめることができるかもしれない。ウスペンスキーの独自の思想哲学、インドや東洋にスクールを求めるウスペンスキー、ロシアに帰ったウスペンスキーがグルジェフと出会い、そのワークに参加する、そして、死後に発表された、未来の人間のビジョン。

 他にも著書の多いウスペンスキーであってみれば、これで十分ということはないが、これで大雑把な全体像が見えてくるはずだ。一冊一冊が重い。お気軽に、速読できるような本ではない。すくなくとも、そそっかしい当ブログのような読書では、その神秘が開かれることはない。今後も、機会をとらえては、ここに帰ってこようではないか。

 しかし、どうしても、この4タイトルだけでは、納得がいかないものがある。このウスペンスキーの同時代性としては、もちろんグルジェフのほか、クリシュナムルティ、シュタイナー、シュリ・オーロビンドなどの関連の中で読まれていく必要があるだろう。

 さらには、この4タイトルに先立つこと、マダム・ブラバッキーや、ベサント=リードビーター、などのいわゆる神智学的な流れを受け継ぐものとしてのウスペンスキーを読む必要がある。そして、その可能な進化の果てに、現在のこの時代まで引き継がれてきたものは一体なんであったのかも、おおよそ推し量っていく必要がある。そう言った意味では、うえの4冊に加えて、「シークレット・ドクトリン」や「Gの残影」などを併読していくことも有効であろうと思われる。

 さて、本探しではなくて、「真理探し」のほうが本質的であってみれば、いつまでも本の表紙ばかりを見つめていてもしかたない。あれこれ考えても、たしかにこの時代のこのポジションにおいて、ウスペンスキーはよく噛んで味わうべき位置にある。ただ「新しい宇宙像」は、もともといくつかのヴァージョンがあり、邦訳されているものは1910~20年代に、単発で発表されたり、順次手を加えられていたりするので、一様なトーンではなかなか対応できない。

 ランダムではあるが、各章立てに対する、簡単なメモを残しておく。

第1章 秘教と現代思想
 この時代にいかにウスペンスキーが生きようとしていたのか、どのような背景で、彼の評判が上がっていったのかが分かる。学者というよりジャーナリスト的な、時代を見る目が、必ずしも深くはないが、的確であると感じる。 

第2章 4次元
 次元論については、21世紀の今日、もっと物理学的に根拠のある議論があるはずであり、ウスペンスキーの説だから、というだけではなかなか説得力がない。そういえばリサ・ランドールあたりの5次元の証明などは、どうなっているだろう。

第3章 超人
 当然、ニーチェの影響もあるのだが、ナチス台頭の以前の著書であってみれば、いちど、超人がらみで、ナチスの動きも追っかけてみたいな、とは思っている。今回はそこまではいかないだろうが、始めてしまえば、いろいろ、大変なことが続いておきてくるだろう。

第4章 キリスト教と新約聖書
 この分野もなかなか興味深い。一度はどっぷりはまって、がっちり把握しておく必要がある。関連の書物や情報は山積みとなってしまっている。始めたら、切りがなくなるだろう。

第5章 タロットの象徴主義
 嫌いじゃないが、マルセイユ・タロットを初めとするシンボリズムとその宇宙観を一度眺めておくことも悪くない。しかし、それでも、ウスペンスキーとタロット、という組み合わせはすこし浮足だっている感じがする。

第6章 ヨガとは何か? 東洋の神秘
 20世紀初頭の、いわゆるオリエンタリズムや東洋趣味がウスペンスキーにも影響しているが、どこか、不似合いな感じがする。これは時代が成せる業か、時代の潮流に飲み込まれまいとするウスペンスキーの矜持か。

第7章 夢と催眠術の研究について
 夢については面白い。私もたくさん夢を見る。ただ、その夢についての研究は、限界がある、というのがすでに当ブログが出している結論である。夢は夢。しょせん夢である。それを楽しめばそれでいい。 

第8章 実験的神秘主義
 これもねぇ、私もいろいろ個人的には体験があって、いろいろ試みてみるのだが、表現するのが難しい。共通の話題にしようがないことが多い。つまり科学化できない。

第9章 奇蹟を求めて---小品集
 ここもなかなか面白い。短編であるだけに、簡潔で切りがいい。ひとつひとつは面白いが、さて、全体のウスペンスキーに、最終的にどう関わってくるのか。結局、ウスペンスキーって、誰? 

第10章 新しい宇宙像
 なるほど、この本のタイトルが生れた理由がわかる。しかし、はてさて、このような宇宙観でいいのだろうか。21世紀の現代科学の流れについては、別途、読書をすすめていかなくてはならないが、もし100年前のウスペンスキーに軍配があがるとすれば、科学は一体なにをやっていたのか、ということになる。科学としてではなく、「ウスペンスキー、かく語りき」として読んでいく必要があるだろう。

第11章 永劫回帰とマヌ法典
 この辺は、ウパニシャッドやバガヴァッド・ギータや、その他のインド文献と突き合わせしながら、もっともっと全体的で、量的にも深みのある想いを巡らしていく必要を感じている。

第12章 セックスと進化
 現代では、チベット密教におけるタントラを、いかに現代人のライフスタイルに置き換えるか、という壮大な実験が行われているので、そちらの報告待ちでいいのではないか。

 おおざっぱではあるが、各論として今後突っ込んでいくとすれば、まずは3章、9章あたりか。10章、11章あたりも面白そうだが、簡単に手をだすとやけどしそう。

<7>につづく

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