夢遊病者 ジブラン
「北村薫の本格ミステリ・ライブラリー」
北村 薫 (編集) 2001/08 角川書店 文庫: 392p
Vol.3 No.0047☆☆☆☆★
この本をめくり始めたら、向かいの席に座る奥さんがなにやら興味深そうにこちらを見る。「誰に勧められたの?」 まずはお見通しだ。すくなくとも、この本は私がいつも読んでいるジャンルとはかなり離れている。むしろ、お向かいに座る奥さんの方のお得意のジャンルと言える。少なくとも、私が進んでこの本を読んだのではないことが、奥さんにはすぐバレる。
私がこの本に用事があったのは、ほんの数ページだけだ。なのにも関わらず、奥さんのレクチャーが始まる。近年、なんとか賞を取った有名作家で、確か中年の男性で、好きな人は好きだろうと。こちらは作家の性別も分からずにめくっているのだが、なんとなく少し分かってきた。
淡々としたストーリーが多いので、本屋大賞などにはなりにくいかも知れないと。「サギとなんとか」は、ある貴族階級(っていったかな)のちょっとした事件が書かれていて、留学した女性が恩を受けたある家族の運転手になって、そこの娘を送り迎えする。ところがその娘が好奇心旺盛で、云々。
なるほどね。こちらが興味あったのは、208pと209pだけ。この見開きページにジブランの詩が載っているよ、と教えてもらったのだ。しかも、翻訳は、西条八十(さいじょうやそ)。あれ~、そういえば、西条八十って誰だっけ。たしか、童謡や流行歌の作詞家としてなら、何曲か聞いたことがあるはず。
このジブランの「夢遊病者」は、小森健太朗訳「漂泊者」p22の中に「夢遊病者たち」として、納められている。一般的には、「カリール・ジブラン」で統一傾向のある作者の名前だが、もともとアラビア語の名前で、しかも、のちに学校の先生の勧めもあって英語風の表記にしたとかで、しかも発音が微妙なので、日本語表記はまだ統一されていない。ここで西条八十は「カーリル・ギブラン」としている。
ほんの十数行のコンパクトな詩ではあるが、上の北村さんとかの例の小説とどこか言葉使いが繋がっているようでもあり、なんだか不気味さが湧きあがってこないわけでもない。しかし、ここから、この「売れっ子作家」(だと推測する)に耽溺するには、当ブログには、まだまだ片づけなくてはならない仕事が山積みされているのであった。
まずは、ここで、たしか大正時代を代表するような大作詞家である西条八十が、すでにカリール・ジブランの翻訳を手掛けていた、ということを確認すれば、それで足りるだろう。
| 固定リンク
「42)One Earth One Humanity」カテゴリの記事
- Books I Have Loved<78>(2010.06.20)
- ミラレパの十万歌<3>(2010.06.19)
- バガヴァッド・ギーター<8>(2010.06.18)
- ミルダッドの書―灯台にして港<3>(2010.06.18)
- 『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する<5>(2010.06.17)
コメント
ラオツさん
それは当ブログのテーマでもあります。
ジブランの「預言者」について、Oshoは単独で2冊の講話録「The Messiah」を残しています。http://terran108.cocolog-nifty.com/blog/2010/06/the-messiah.html
ゆっくり検証していってみましょう。
投稿: Bhavesh | 2010/06/14 13:03
カリール.ジブラン<預言者>も<漂泊者>も読んだとは思うのですが
この人Oshoは本気でとりあげたのだろうか? 欧米で人気なのでその読者たち向け
のサーヴィスでリストアップしたんじゃないのとおもうぐらな~にも腑に落ちなかった記憶があります 読み方が悪いのか?
訳が悪いのか? やっぱり顔を洗って
読み返すべき本なのかなあ?(笑)
投稿: ラオツ | 2010/06/14 12:36