自我の終焉―絶対自由への道 <3>
「自我の終焉」―絶対自由への道 <3>
J.クリシュナムーティ (著), 根本 宏 (翻訳), 山口 圭三郎 (翻訳) 1980/08 篠崎書林 単行本: 446p
☆☆☆☆★
こちらもまた「BIHL3」の5番目に「The First and the Last Freedom by J. Krishnamurti」として登場してくる一冊である。ようやく「BIHL1~2」の準備が整ったところなのに「BIHL3」へと上滑りしてしまっていいのか、という忸怩たる思いは残る。
しかし、BIHL1はその10冊として完結することを望まず、BIHL2の11冊を加えてマジックナンバー21としたところで、オリの中に放り込まれた猛獣たちは、さらなる自由を求めて、括りとしてはばかるオリの金柵を食いちぎる。
そこで便宜上、BIHL3の8冊を加え、29冊の括りを考えてみる。29もまた当ブログにおいては、重要なマジック・ナンバーのひとつである。いずれはこのささやかな俄か作りの金柵は食いちぎられ踏み倒される運命にあるのだが、非力な一読書ブログ子に、残された秘策はほとんど残されていない。
さて、クリシュナムルティ、なぜこんなに読みにくいのか(当ブログにとって)を考えてみた。ひとつ、この本の原書は1954年に発行されている。その年は私が生まれた年でもあるので、記念すべき年ではあるのだが、1895年生まれのクリシュナムルティーはすでに還暦を迎える時代となっていた。
1929年に「星の教団」を解散し、1930年には神智学協会をも脱退したクリシュナムルティは、それからこの本が出るまでの四半世紀に渡って、一般には無名、あるいは「神秘」のベールに包まれていた。詳しい経歴さえ、つまびらかにされていなかった。だから、さまざまな誤解やフレームアップに包まれていて、その中にこれら一連のクリシュナムルティーの言辞があると、ごみ捨て場で白鳥に出会ったような、普通の白でも、より純白に見えたのかも知れない。
一般的には、彼の邦訳がでたのは、この「自我の終焉」が最初であり、時代はすでに1980年となっていた。その時、クリシュナムルティ御年、85歳。日本で「唯一の『星の教団』の会員」だったとされる今武平の息子・今日出海でさえ、この本を1980年になって、偶然、書店の店頭で手に取ったというのだから、日本ではまったく無名だった、ということになる。
個人的には、私が肉体的にクリシュナムルティに一番近かったのは1977年のこと。ボンベイからプーナに向かい、ようやくアシュラム生活にも慣れてきた頃、周辺の何人かのサニヤシン達がボンベイに向かった。クリシュナムルティの講演会があったのだ。
あの時、誘いに乗って私もボンベイまで行っていれば、私の生涯にわたる「自慢話」のひとつにでもなるところだが、40年以上経過した今でも、なぜか、惜しかったなぁ、失敗したなぁ、とは思わない。Oshoの講話でクリシュナムルティのことは知っていたが、その人物のなりや業績(?)については何も知らなかったから止むを得ない。だが、そのような精神世界の「有名人」に会って舞い上がる、ということ自体、クリシュナムルティが指摘している精神世界の落とし穴でも、あった。
いずれにせよ、1980年にでたこの邦訳にはオルダス・ハクスレーの序文は載っておらず、巻末においては、鈴木大拙がハクスレーを通じてクリシュナムルティを知っていなかったのは惜しかった、というような表現p432があるが、どうやらこれは誤解であるようだ。大拙は、一時「神智学協会」日本支部の代表格として存在したことがあったようで、その後のクリシュナムルティの登場についてまったく知らなかった、ということはないだろう。
かくのごとくよくわからないまま、誤解や虚飾を交えて紹介されてきたクリシュナムルティであるし、アンソロジーのように何十年間のものを一気にまとめて読まされる側にしてみれば、「読みにくい」のは当然なのではないか、と思う。禅に近い、と一部で評価されるクリシュナムルティではあるが、よくよく自分なりに、原寸大で判断しないと、まだまだ総合的評価はできない。
つづく・・・・・
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コメント
☆田伏さんこんにちは
貴HPを拝見すると、ヌメロジーなどの活動もされているのですかね?
最近、知人が「数申」という本をだしました。私はまだ読んでいないのですが、その長期にわたる制作過程を知っているので、ちょっと肩入れしているところです。http://homepage2.nifty.com/forest-g/book/4264.html
投稿: Bhavesh | 2010/07/02 06:28
色々検索しておりまして、
心で検索していたらここにたどり着きました。
とても素敵で、興味深い記事を書かれていますね。
こちらは、東洋と西洋の叡智を広げる活動をしています。
よろしければ遊びに来て下さいね。
http://www.yumenomiya.com/
投稿: 田伏 哲也 | 2010/07/01 22:08