預言者のことば
<9>よりつづく
「預言者のことば」
カリール・ジブラン (著), 有枝 春 (翻訳) 2008/2 サンマーク出版 ハードカバー: 192p
Vol.3 No.0073☆☆☆★★
ジブランの「プロフェット」は何種類もの邦訳を読んできた。もう著作権の有効期限が切れているからだろうか、それとも、それだけこの本を愛している人が多いからだろうか、一つの小さな本にこれだけの邦訳本が存在する、というのも珍しいのではないだろうか。
きっちりと、比較しながら読み進めてみれば、もっと一冊一冊の個性が引き出せるのであろうが、まだ、それはできていない。だが、それだけの邦訳が存在しているのだ、ということは確認済みだ。
ざっくり言っておくなら、1)ですます調より、だある調のほうが私は読みやすい。2)女性の翻訳より、男性の訳のほうが好き。3)一部のキャラクターの濃い翻訳者は敬遠したい。となると、だいたい、私自身の好みの本は決まってくるのだが、その選択が必ずしも、一般的に妥当性があるとは、決して言い難い。
毎回同じような内容の言葉を読んでいて、どこか端折って読み進めている自分に気がつく。ここには20数種の「~~について」のアムルムスタファの言葉がある。だが、一度はなるほどと感心したものの、何度も読んでいると、はて、本当にそうか、と疑問が湧いてこないわけではない。
これらのテーマについて、一方的にジブランの「哲学」に酔うだけではなく、例えば、Oshoの「英知の事典」などの言葉と比較してみるのも面白いのではないだろうか、と思う。幸いに、邦訳「英知の事典」の中には、このジブランの書に対応している「項目」が意外と多い。もともとこの本たちは意識しあっていたのではないか、とさえ思うくらいだ。
もっとも、「英知の事典」は英語版「The Book」三部作の要約版だから、もし対応する言葉がなければ、英語版に近似のテーマを探していくことも可能であろう。もっとも、そんなことを試みるなら、最初から、Oshoがジブランの「プロフェット」を語った「Messiah」を読めばいいじゃないか、ということになるが、まあ、そこはいろいろなお楽しみコースの選択肢があるのもいいだろう。
オルファリーズのみなさん、
人は太鼓を布で覆ったり、リラの竪琴の弦を緩めたりすることならできます。
しかし、ヒバリに歌うなと命じることは、できはしないのです。有枝春・訳p89「法律について」
もともと優しさに満ちたジブランのポエジーであるのだから、これはこれいいのだが、どうも、もともと大雑把な私には、優しすぎる。
オルファリースの人びとよ、太鼓を黙(もだ)させることも、竪琴の糸を緩めることもできるが、空を舞うひばりに、歌うのをやめろとは、だれも命じられないのだ。小林薫・訳p100「法(おきて)について」
ひとつひとつの言葉についての邦訳の妥当性など論じることなど、当ブログに力量に余る。しかし、好みとしていうだけなら、長いこと手元にあるだけに、小林訳のほうが、私にはぴったりくる。ぶっきらぼうな言い方のなかに、ジンワリとアル=ムスタファの優しさが湧きあがってくる。
もうこの段階で、テキストの妥当性などをどうのこうの言っている場合ではない。ジブランにについては、もうすこし歩を進めるべきだ。ニーチェの「ツァラトウストラ」に触発されて書かれた「プロフェット」であってみれば、優しいだけが注目点ではない。「人の子イエス」と同列に語られなくてはならない一冊であれば、ソフィストケートされ過ぎるのは、この書の本質を捻じ曲げてしまうのではないか、とさえ思う。
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