知覚の扉・天国と地獄
「知覚の扉・天国と地獄」
オルダス・ハックスレー (著), 今村 光一 (翻訳)1976/03 河出書房新社 単行本 p192
Vol.3 No.0063☆☆☆★★
この本の原書は1954年にでている。クリシュナムルティの「The First and Last Freedom(邦訳・自我の終焉)」もまた同じ1954年にでている。そしてハクスレーは、クリシュナムルティの本の序文を10ページに渡って書いている。残念ながらその部分は邦訳からは割愛されているが、二人のこの時代の親密ぶりを物語っている。
ハクスレーはここから亡くなる1963年あたりまで、「エスリンとアメリカの覚醒」に繋がっていいくような動きをする。この「知覚の扉・天国と地獄」はハクスレーの代表作とも目される本である。全般にサイケデリックスに彩られ、場合によっては、同好の人々に教則本的な扱われ方さえされている。
ハクスレーの邦訳・近刊としては「多次元に生きる 人間の可能性を求めて」2010/02を読んだ。あるいは、当ブログで進行中のテーマに連なるものとして、「永遠の哲学 究極のリアリティ 」1988/03などにも目を通した。その他「素晴らしい新世界」や小説「島」などもいずれ目を通す必要があるだろう。
ただ、よくもわるくも20世紀中盤以降に強いモダニズムとして現れたサイケデリックスについて、それが、ナチュラルであろうとケミカルであろうと、21世紀の今日もまた継続して「実験」し続けなければならないのだろうか、と、強い疑問は湧きあがる。
古代や中世において、高い精神性や秘儀の中で使われたサイケデリックスが公開され、一般化されることによって、20世紀後半にはすでに風俗と化し、乱用されるに至っている。個々の問題については個々に対処しなければならないが、ことコンシャスネスというキーワードにおいてハクスレーを再読する時に、この部分だけに注目し、抜き書きするようなことはあってはなるまい。
ましてや、当ブログのような不特定多数にオープンな姿勢を取っている「読書ブログ」としては、好奇なスノビズムだけでハクスレーを見ることは、内外にとって極めて危険である。ただ、クリシュナムルティを読み進めたり、人間に可能な進化の心理学に想いを馳せるとき、ハクスレーの名前は避けて通れない。
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