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2010/08/14

超訳『資本論』(第2巻)拡大再生産のメカニズム

<第1巻>よりつづく 

超訳『資本論』(第2巻)
「超訳『資本論』(第2巻)」 拡大再生産のメカニズム
的場昭弘 2009/04 祥伝社 新書 祥伝社 新書 276p
Vol.3 No.0097☆☆☆★★

 お盆時期の恒例のテレビ番組はいろいろあれど、ヒロシマ・ナガサキにつづく終戦(敗戦)の日についての特番は、先祖の供養という意味も込めて、なかなか重いテーマを扱っているものが多い。例えばロシア軍によるシベリア抑留の体験談を聞いたりすると、いかに共産主義、マルキシズムが、体験として、悪魔的であったかが浮き彫りとされる。

 一方で、例えば帝国日本軍の所業は、それに参加した個々の兵士の苦労話として語られることが多いが、帝国日本軍に侵略された側からの告発として、日本のテレビが全うに取り上げることは少ない。

 卓上の「マルキシズム」や「共産主義」は、いかに理想的に語られたとしても、歴史的な「マルキシズム」や「共産主義」は、決して理想の人間的な道を歩んできたとは言えない。しかし、それはなにもこれらのサヨク的な動きばかりではなく、総じて20世紀は、戦いに彩られた世紀であったから、仕方ないのかもしれない。他に理想的な動きなどあったのか。

 マルクスは、まさに現代直面している資本主義の危機を信用論でとらえています。今回お届けする二冊は、エンゲルスが編集した「資本論」第2巻と第3巻を対象とします。この二つの巻はひとつと考えてもいいでしょう。なぜなら、この二つの巻の対象は、工場から出ていった商品が流通過程でどう販売され、そのあとどう再生産されるかということを問題にしているからです。第1巻では基本的に工場の中だけの問題でしたが、ここでは工場の外の市場が問題になります。商品の価値は市場の中ではそのまま実現されない。的場 p10

 マルキシズムは決して完結した完全無欠な論理ではない。いやむしろ未完の一試論であったとさえ言える。その出版後に世界の人類史に与えた影響を考えれば、いまさら試論であったとされても、しかたないのだが、それでもやっぱり、それだけの多くの影響力を持ち得た要因はどこにあったのか、気にはなる。

 労働力が市場にある間は、資本ではなく、商品資本でもない。労働力はけっして資本ではない。労働者は資本家ではない。労働者は商品を、つまり自らの肉体を市場にもっていくのだが、労働力が売られ、生産過程に合体されたとき、---したがって商品として市場で流通するのをやめたのち、はじめて生産資本の構成部分となる。
 つまり剰余価値の源泉としては可変資本であり、労働力が支出された資本価値の回転から見れば、生産資本の流動的構成部分になる。
Marx p122「固定資本と流動資本に関する理論(1)」

 家計簿をつけたり、小さな企業の借方勘定や貸方勘定を仕分けしているだけでも面倒なのに、マクロな経済を一辺に学ぼうとしても、七面倒くさいうえに、21世紀の現代にあてはまっていないのではないか、という疑問がどこまでも付きまとう。しかし、研究者たちは、牽強付会にあちこちくっつけては、さまざまな解釈をしてくれる。たしかにそれはそれで、わかったような気にはなるのだが、やっぱり、どこか抜けてるよなぁ~。

 なぜ社会主義では恐慌が起きないか
 資本主義社会ではない社会だと、これはどうなるのでしょうか。それは実は問題にならないといいます。なぜか、そうした社会では計画的な過剰な生産が行われることで、在庫として供給される。生産調整が計画的に行われることで過剰生産が恐慌へと導かれないというわけです。生産が増えることはそれ自体問題ではない。しかし資本主義では生産が無政府的であり、それが予期せぬ過剰生産、過小生産を引き起こす。それが経済を行き詰まらせ、破綻に至るというわけです。
的場 p243「単純再生産」

 18世紀なかばにマルクスによってつぶやかれたこのような論理が、その当時や20世紀に信仰されていたとしても、それから1.5世紀が経過した21世紀の今日において、このような卓上の空想論を鵜呑みにするようなロウドウシャは絶無に近い。もしそれを信仰しているとすれば、それは迷信というに、さもふさわしいであろう。

 なにが抜けているのかなんて、いまさらここで言うことでもあるまい。徹頭徹尾、不足しているものがある。また、徹頭徹尾、それを抜いたからこそ、マルクシズムや共産主義として存在し得たのであろう。でも、それってやっぱりいびつだ。全体的ではない。全体的ではない、ということは、人間的ではない、ということであるし、真実でもない、ということになる。

<第3巻>につづく

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