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2010/08/18

狂い者 その詩と譬え カリール・ジブラン

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「狂い者」 その詩と譬え
カリール・ジブラン/佐久間彪 2008/10 至光社 単行本 121p
Vol.3 No.0103☆☆☆☆★

 この本、だいぶ前に図書館にリクエストしていた本だが、近隣の図書館にはなかったらしい。気長に待っていたら、国会図書館から転送されてきた。類書には小森健太郎訳「漂泊者(さすらいびと)」があり、佐久間彪にはジブランの「預言者」や、そのポケット版の訳書がある。10種以上あるジブランの「預言者」の中でも独特の位置を占めている。

 さて、この「狂い者」、訳者においては、「預言者」に先立つジブランの処女作のような評価がされている。いままでは「預言者」を処女作と考えてきたが、何度も手を入れられtいることを考えれば、なるほど、こちらの「狂い者」のほうが先、ということになるのか。35ほどある短編の中でも、限りなく小さな詩片も多く、最近はやりのツイッターの140文字縛りでも、全然問題なくスルーしてしまうようなちいさな作品も含まれている。

 一匹のきつねが、日の出に出来た己の影を見て言ったものだ。 「俺、きょうの昼飯はらくだにするぞ。」 それで朝中らくだ探しをした。しかし昼になって、また己の影を見て----いうことには、「鼠にしとこう。」 p46「きつね」

 これで約100文字。

 先夜、私は新しい快楽を見つけ、それを初めて味わっていた。すると天使と悪魔が、ひとりずつ我家に飛んできた。ふたりは家の戸の前で出遭い、私の新しい快楽について互いに論じあった。ひとりが叫んだ。「それは罪悪だ!」---もうひとりも叫んだ。「それは美徳だ」と。p52「新しい快楽」

 こちらもなんとか140文字以内に収まっている。 

 私の父の家の庭園には、ひとつの檻、ひとつの鳥籠がおいてあった。檻にはライオン、父の使用人たちがニナヴァーナの砂漠から運んできたもの。鳥籠には歌わない雀が入れられていた。毎日、夜が明けると、雀がライオンに呼びかけて言った。「おはようさん。御同囚!」 p62「檻と籠」

 こちらもセーフ。実にまぁ、うまいことジブランもつぶやいているものだ。

 きのう、神殿の大理石の階段で、ひとりの女が、ふたりの男のあいだに座っているのを見た。女の顔の片面は青ざめており、片面は赤らんでいた。p68「神殿の階段で」

 こちらはなんと140文字の半分の70文字。なるほど、文字数が少ないから表現できない、なんてことはないようだ。 

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