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2010/08/02

人生をいじくり回してはいけない 水木しげる

水木しげる 人生をいじくり回してはいけない (人生のエッセイ)
「水木しげる 人生をいじくり回してはいけない 」 (人生のエッセイ)
水木 しげる (著) 2010/04 日本図書センター 単行本: 241p
Vol.3 No.0083☆☆☆☆★

 最近よく朝のNHKドラマ「ゲゲゲの女房」を見る。7:45からBSで見て、8:00からNHK総合でまた見る。どうかすると、お昼の12:45頃もちょうどこの番組にチャンネルがあっている時がある。さらには夜にもやっているらしく、また週末にも特集編みたいなのをやっている。必ず見ようと思っているわけでもないので、見逃しているところもたくさんあるのだが、なぜだか、ついつい見てしまう。

 ドラマの現在進行中なのは、漫画家として大ブレーク寸前の、ようやく貧乏神が離れていった段階のところだが、なんだか、あの貧乏風景がいいのかもしれない。しかもあの貧乏に人間が負けていない。必死で、「豊かに」生きている。そんな風景がたくさん表現されていて、パワーをいっぱいもらえるからだ。きっと、世間的にもこの番組は話題になっていることだろう。

 この本、この番組にヒットしたことにあわせた書きおろしかな、と思ったが、「人生のエッセイ」というシリーズ物の中の一巻で、いままで何冊もでた水木しげるの本のなかから、あちこち集めてきたものを一冊にしたものである。いずれ、水木しげるブームに合わせた一冊である。

 水木さんがベビーの頃までは、島根半島にキツネやタヌキがいた。でも今はもういない。電気だらけの奇妙な時代になって、島根半島だって電気がついています。昔の境港は、蛍光灯も今みたいに明るくはなかった。うっすらとした明るさが妖怪にはちょうどいいんです。最高なのは行灯(あんどん)の光です。行灯が消えたから、妖怪も消えました。それが証拠に、蛍光灯が普及してから、新しい妖怪が出てきません。蛍光灯の光は、行灯と違って想像力を働かせないんです。p169「妖怪が棲めない国はダメになる」

 昔のことや、戦争のことがいっぱいでてくる。南国の”土人”のこともたくさんでてくる。戦争のこともでてくる。敵弾が破裂して左手をうしなったこと。紙芝居、貸本漫画との出会いもある。不思議にぶらぶらして一生を終えた親族の話しなど、興味は尽きない。

 以前、水木しげるの「妖怪図鑑」なんてものを買ったことを思い出した。一時期、私のお宝だった。今でも、書庫を探せば出てくるだろう。水木しげるは、独特な世界を生み出した。つげ義春や池上遼一らが門下にいる。

 世代的には私の父親世代だ。悲しい話ではあるが、戦争の話は貴重である。私の父親も戦地に赴いたが負傷して復員したため、私が物心ついたころには療養生活に入っており、ついぞ、戦争の話など聞くことはできないまま亡くなった。水木しげるの話しを聴いていると、とても親しい肉親から話しを聴いているような、ほのぼのとした雰囲気につつまれる。父親のかおりがする。

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