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2010/09/07

Kindle Revolution キンドルの衝撃 メディアを変える

キンドルの衝撃
「キンドルの衝撃」 メディアを変える Kindle Revolution
石川幸憲 2010/01 毎日新聞社 単行本 185p
Vol.3 No.0137☆☆☆☆★

 「kindle解体新書」について書いた記事に対するアクセスが異常に多いことに、それこそ衝撃を受けている。これだけ、世間ではkindleに対する関心が高いのか、と改めて図書館リストを検索してみた。解体新書よりはすこし前の本だけど、こんな本も入っていた。ひょっとすると、これは、「iPadショック」(2010/05)なども関連付けて再読するべきなのかも、とさえ思った。

 キンドルは2010年に本当にブレークするだろうか。もしそうなれば、メディア業界にはどのようなインパクトがあるのだろうか。p4

 2007年、アメリカにおいてアマゾンがキンドルを発売して以来、それは爆発的な支持を受けているということである。アップルの発売したiPadを含め、各社がそれぞれに意欲的な電子書籍のシステムを発売し始めているが、そもそもパイオニアだったソニーや松下電器など日本のメーカーは03~04年頃に一度電子書籍端末を発売したが、全く売れなくて撤退した経緯がある。

 ペーパーレスの世界で新聞や雑誌は、個性を取り戻すことができるのだろうか。また神と電子書籍端末はどのように共存するのだろうか。p8

 キンドルは、白黒で、印刷物に近いディスプレイの表現能力があり、一度充電すれば、2週間は維持できるという。しかし、そこまでして電子書籍にたよらざるを得ないアメリカの事情も見えてくる。

 米国の郊外での新聞配達は大まかだ。「ドアステップ(玄関わき)まで配達」が宣伝文句だが、実際には配達員が車を降りずに車窓から投げるので歩道わきに着陸する。冬の寒い朝に新聞を取りに行くのは、誰もが嫌う日課になっている。p2

 活字文化、印刷文化は、今後どのように生き延びていくことができるのか。

 新聞の電子化に社運を賭けているニューヨーク・タイムズは、パソコン、スマートフォン、電子書籍端末のどれでもニュースが読めるように複数のプラットフォームを開発し、思考錯誤を繰り返している。p107「キンドル配信に力を入れる米国新聞社」

 技術の革新に沿って、旧メディアの危機感も必死なものがある。新聞社の生き残りには、3つの選択がある。

活字かインターネットか

 

1)活字の新聞に専念し、インターネットは無視する。

 

2)印刷版とデジタル版の併用。

 

3)デジタル版に専念する。p136

 しかし、米国の新聞社の状況はともかく、日本においては、とくに個人の一読者としての私の場合はどうなるだろう。

1)紙の新聞は購読しなくても、生活に影響がないことがすでに事実化している。

2)新聞をよみたければ、図書館行けばいいし、すぐ読みたければ、近くに何軒もあるコンビニに行けば、100~200円ですぐ購読できる。ネット上の情報であれば、各新聞社の複数を読むことができる。もっとも、こまかい地方ニュースやベタ記事は逃してしまう可能性はないでもない。

3)ネット上に掲載されていればそれで十分だ。もっとも有料版は、複数読むことができないので、無料版を複数購読することによって、ステレオ効果を狙うだろう。もっともネット上、となるなら、新聞社だけのニュースに異存することはなくなるだろう。

 キンドルという新しいメディアに注目することで、「ポスト危機」のシナリオが見えてきた。紙の新聞や雑誌がある日突然消えてしまうのではなく、紙もペーパーレスも、という「共存の時代」が近くに来ている。p183

 1950年生まれのジャーナリストにしてみれば、これまでの紙の媒体の活躍の場が失われてしまうのは、悲しいだろう。しかし、事態はそんなノスタルジアに支えられるような甘いものなのだろうか。ぺパーレスには、環境保護、という後ろ盾もある。膨大な印刷物を支えるために切り倒されている樹木が、環境汚染の悪循環のサイクルを後押ししていることも忘れてはならない。

 当ブログにとっては、電子書籍(端末)問題は、とってつけたような新しい問題だ。多分、この新しいメディアに対しても、ラガード(採用遅滞者)でしかないだろう。ただ、このような潮流が起こっているのだ、ということに対しては注意深くありたい。

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