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2010/09/30

見直し以前の「いる保険」「いらない保険」の常識 基本の知識118

見直し以前の「いる保険」「いらない保険」の常識
「見直し以前の『いる保険』『いらない保険』の常識」 
清水香 2010/07 講談社 単行本 156p
Vol.3 No.0156 ☆☆☆★★

 ホケンを、英語力、FP(会計・財務)力、IT力の中の一つの要素として考えることができるなら、ホケンを考えることも、まんざら新鮮味がないとは言えない。

 人の死や火災、交通事故の発生率はだいたいわかっています。1年間に1人が死亡する場合、100人の加入者から1万円を集め、死亡した人に100万円の保険金を支払う-----話を単純化すると、支払った保険料と保険金の間のお金の流れはこんなふうになるのです。p101「支払った保険料は自分のために積み立てられていない?」

 この本の中で語られているホケンは、生命保険。生保ときたら、まずは一家の大黒柱の死亡リスク。これを考えないことには生保の意味がない。ただ、おひとり様が増加している現代においては、「大黒柱の死亡リスク」は減って来ているのだから、まったく生保は考えなくてもよい、という結論にさえなる。

 集めた全員の保険料が、死亡した1人に渡されるわけだから、保険に入ることは「助け合いクラブに入る」みたいなものです。自分が死亡すれば、他人が支払った保険料から助けられ、逆に他人が死亡すれば、自分の分はその人を助けるために使われる。こういうしくみだから、保険は加入後すぐにでも保険金が受け取れるのです。p101同上

 そもそも、講とか結といった集合性のあった社会においては、この相互の助けあいがあった。地域のだれかが死亡すれば、他の人々が少しづつ持ちあって、その人を助ける。もちろん、自分が不幸にあえば、地域に人々に助けられる。お見舞いであろうと、お祝いであろうと、「地域力」があれば、本来ホケンなどいらないのである。

 逆にそもそもホケンとは、この相互の助け合いなのだから、そこにビジネスや金もうけを持ち込むことは邪道なのである。しかし、人間界には必ずや、全う以外のことをやる奴がでてくる。その「地域力」だって、悪用されてこなかった、とは言えない。

 基本的には、この本は生保については極めて妥当な、基本的な基本を説明した一冊と言えるだろう。ネット生保だの、アカウント型生保だのと、なんだかめんどくさそうになっているが、ものごとは実はシンプルなのだ。めんどうくさそうにしているのは、それはまやかしでしかない。上げ底、過剰包装でしかない。

 この本、図書館においてのホケンジャンルでは最新に属する。「基本の知識118」となっている通り、実にシンプルで、実にわかりやすい。この本、10年前に出版されても正しかっただろうし、10年後に出版されることになっても、ほとんど間違いではないだろう。

 つまりホケンのなかの生保は、実は非常にシンプルで、すでに完成された世界だと言える。ただ、それを活用しようとする人間の方がかなり変化している。ホケンをどうのこうのいう前に、人間のライフスタイルがどうなっていくのか、どうあるべきなのか、そこのところを見つめておかないと、ホケンに振り回されることになる。

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