生きるチカラ 植島啓司
「生きるチカラ」
植島啓司 2010/07 新書 集英社 221p
Vol.3 No.0146 ☆☆☆☆☆
今年の夏は暑かった。今日は中秋の名月で、明日は秋分の日。あんなに暑い暑いと思っていた毎日だったが、しだいに朝晩は寒さも感じるようになり、毛布をかけて寝るようになった。やっぱり地球は自転しているのである。
夏の暑い盛りに、布団に行くまでがおっくうでソファーで寝たり、そのままカーペットの上でごろ寝することが多かった。エアコンはつけてはいるのだが、それでも暑い。上着は脱ぎ捨てて上半身裸は当たり前で、どうかすると、素っ裸でカーペットの上に転がっている日が何日もあった。
そんなある日、局部にピリッとした痛みを感じた。変だな、と見たら、なんと、先っちょのほうに小さなできものみたいなものができているではないか。あれ~、他に身の覚えのない自分としては、早めに泌尿科に行ってみてもらうことにした。
するとやっぱり、内科的なものではなく、どうやらカーペットの上の雑菌をわが局部が拾ってしまった結果だったらしい。これからは、カーペットの上で素っ裸でごろ寝する時は、キチンとファブリーズする必要があるようだ(笑)。
そんなこんなで、いざ涼しくなってみると、なんだか、夏に緊張していた体がだんだん溶け始めて、今頃になってすこしバテ気味になってきた。ちょっと脱力感。あんまり面倒な本も読みたくない。何冊かのハードカバー本は取り寄せたもののそのまま閉じてしまったものが何冊もある。
そんな時、この本はちょうどいい。「生きるチカラ」。こんな名前の生命保険があったような気もするが、この本はどっかの回し者ではない。1947年生まれ、「聖地の想像力」、「世界遺産 神々の宿る『熊野』を歩く」などの著書のある宗教人類学者の手による一冊である。
東京の一等地に住みたいとか、高級車を乗り回したいとか、最高級のワインが飲みたいとかいわない限り、年収なんか300万から500万もあれば十分ではないか。もちろん1000万くらいあればいうことなしだけど、必ずしも多ければいいというわけではない。p108「金持ちはみんな不幸?」
この本、なんだかこの脱力感がいい。勝間和代的モチベーションでもなければ、香山リカ的いじけ節でもない。ちょうどニュートラルな脱力感が、ちょっと老子的な味わいを感じさせる。
むしろ死があるからこそ老いは輝きをますのである。人生はうんざりするほど長い。終点に近くなればなるほど、人生は豊かさを増すことになる。なにより、老いのもっともすぐれた点は、その人が持っている能力をだれにも簡単に譲り渡せないということではないかと思う。
どんなにすごい才能があっても、その人が死ねばすべてが無に帰するという潔さ。それこそ人間のもっともすぐれた特性の一つではないかと思われる。なるべく自分を世界の側に委ね、つまり、自分中心の世界観から逃れて、ゆったりと死を待つのもそんなに悪いものでもないだろう。p209「自分の身に起こることはすべていいことなのだ」
この人、他の著書においてはどんなことを書いているのだろう。毎回毎回この調子でやられたのではうんざりしないこともないが、たまにこういう形でレイドバックされると、うん、これもありだな、と思う。
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コメント
確かにこの脱力感は貴重だ貴重だ。
今更一冊読もうという気力もないが、過去の自分の書き込みを見るのは、面白い。
投稿: Bhavesh | 2018/06/23 00:14