ツイッター社会進化論 1万人市場調査で読み解く
「ツイッター社会進化論」1万人市場調査で読み解く
金正則 2010/10 朝日新聞出版 新書 208p
Vol.3 No.0176 ☆☆☆☆★
買い物ついでに上の階の書店で立ち読み。いろいろあるなぁ、図書館新刊本コーナーには及びもつかない。当然のことだが、新刊書の山である。ひとつひとつ読み始めたらキリがない。図書館や新刊本コーナー、という絞り込みがあってこそ、なんとなくホッとするところもある。
多分この本もいずれは図書館にはいるだろうけれど、立ち読みしたくなった。タイトルとしては津田大介「Twitter社会論 新たなリアルタイム・ウェブの潮流」と対をなすもので、津田がドックレースの逃げウサギ的立場を買ったとすれば、金正則は、その追っかけカメラの立場を取ったということだろう。
金正則はブームとしてのたまごっちやバーチャル・ゲームのセカンドライフを思い起こす。たまごっちの誕生は1996年。たしかにあの時代性の中で、なんでこのゲームがあれほどのパニックを産んだかは定かではないが、販売したメーカーは逆に大損害を被った、という皮肉がある。つまりマーケティングの失敗。
セカンドライフにしたところで、そのサービスは維持されているが、あの「ビジネスモデル」に「参入」した「企業」などのなかには、おおいに当てがはずれたところが多いだろう。ある地方自治体などは、公式の無料の講習会まで開いて、自前のブースもセカンドライフの中に確保した。だが、所詮、ホームページの物産展以上のものではなく、訪問しても、販売員さえいないという閑散としたものだった。
たまごっちの場合は、そのたまご風のウォッチそのものがアイコンとなったわけだが、パソコンや「育てる」というソフト面が、一般化するパンデミック現象として起きたのであろう。思えば、あのインベーダーゲーム流行も、社会が積極的にコンピュータ社会を受け入れた瞬間であった、といえるだろう。
セカンドライフは、そのバーチャルゲームをすることができる高機能パソコンがアイコンとしてあったのだが、世の中は、そこまで高機能なパソコンの流行を望まなかった。結果としては、セカンドライフはカテゴリーキラーに成り切れなかった。
さて、ツイッターは、もう誰でも持っているパソコンやケータイで、簡単にできるわけで、あらたなアイコンは必要ないようにも思うのだが、ここにきて、スマートフォンなどとの絡みでよく取り上げられているようだ。ツイッターをしたいがためにスマートフォンにする、というのは、聞き分けのない親を説得する高校生レベルの手口だが、それでも、社会はその手口を容認している。
電子書籍とiPadやキンドルもどこか、これらの関係に似ている。青空文庫などは別にパソコンで十分活用できるのに、あえてキンドルやiPadを話題にする傾向がある。モノも動かないと経済も復興しないのだし、そもそも、常に買い替え需要があるわけだから、新規の商品が登場してくることは歓迎すべきだろう。
この本は、1954年生れ(だったかな)のマーケッターが、細かいデータを元にするどく各レベルで切り込んでいるので、なかなか興味深い。ブームとしてのツイッターに浮かれてばかりいると、落とし穴があるよ、と警告している。ちょっと早すぎるソーカツであるようにも思うが、アクセルとブレーキは、安全運転には必要だろう。それにレスポンスのいいハンドルと。
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