フューチャリスト宣言<3>
「フューチャリスト宣言」 <3>
梅田望夫/茂木健一郎 2007/05 筑摩書房 新書 213p
☆☆☆☆☆
またまたこの本を手にしてしまった。開架棚にこの本の背表紙をみつけて、何だかまだ読み切っていない感じがした。3年前は立ち読み、2年前は何かの合間にそそくさとめくっただけ。そして、必ずしも良いコメントを残して来なかったんではないか、という、ちょっとした後ろめたさがあった。
今回、さらに時間が経過した現在、この本を読んでみると、ようやくこの本を読む準備ができたのではないか、と思う。3年前の彼らが、3年後の私に語りかけている、という感じだ。ネット社会のドッグイヤーの展開は早い。言葉遣いや流行りの技術はどんどん陳腐化しているので、少しづつ時代がかり始めたところがないでもない。しかし、視点はこれでいいのだろうし、むしろ、コンテナに走りすぎた分、コンシャスに路線を引きもどしてくれる、という意味では、この本は貴重である。
茂木 ネットに関しては、僕はユーザーに徹する。そのかわり、僕は一介のフューチャリストになりたいと思います。
梅田 僕も同じです。p125「フューチャリスト同盟だ!」
ネット社会の紹介者のような立場の人たちではあるが、必ずしもネット開発の技術者たちではない。あくまでも、一介のユーザーとして、人間としてネットに対峙しているところが、親しみやすいところでもあり、見逃しやすい貴重な視点でもある。
茂木 ネットが人間の脳に対して、なんでそんなに相転移的にはたらくのか、ということについて考えていくと、一つのビジョンが見えてくる。それはわれわれの脳自体が、まさにウィズダム・オブ・クラウズだということです。p163「ネットの側に賭ける」
ここでのクラウズとは、当然、「群衆」達としてのクラウズだ。2010年、クラウドと言えば、ひたすら「雲」を表わすキーワードになっている。そして、ひところよりは、親しみのある、実態の意味のある言葉になりつつある。
梅田 アップルのiPhone(電話とネットとiPodの機能をあわせもつ携帯端末)の発表(2007年1月10j日)のときの、向こうでの興奮ぶりは凄かったですよ。たまたまそのときシリコンバレーで若い漣ちゅうと一緒にいたのですが、iPhoneの発表の情報がネットで流れてくると、ワーッという感じで盛り上がりました。p135 同上
私なんぞは、iPhone4になって、ようやく今頃になって、ふむふむなるほど、と言っている段階だから、少なくとも3年半以上は、遅れていることになる。開発に着手した段階から考えれば、もっともっと遅れているだろう。逆算してみれば、すでに、3、4年後のプロジェクトがすでに始まっているはずだ。そのあたりに向けてのアンテナを立てておくことも必要なのだろう。
茂木 おそらく意識とか認知過程の本質が、我々の代で解けるということはないと思うんですよ。僕は97年に「脳とクロリア」という本を出して、もう10年くらいこの問題を考えているんですが、考えれば考えるほど、意識の問題をいま最終的に解くということは不可能だと思えてくる。p115「フューチャリスト同盟だ」
一連の茂木健一郎の中でも、特に「意識とはなにか」に的を絞って読書を進めようとしているが、著者の中においても結論がでているわけでもなく、その見通しも立っているわけではないのだ。ただ、この辺に戻って、もうすこし読書を進めることができればいいと思う。
梅田 本も雑誌もどちらもデジタル化されていないから、その内容について語るとき、ネットに書き写す手間は変わらないから、その点で差異はない。どちらかがコピー&ペーストできるから、ということではない。でも新聞・雑誌の記事は、ネットで書く対象にならない。p148「ネットの側に賭ける」
2010年では、新聞も雑誌も「デジタル化されていない」とは言えない時代になって来ている。押し寄せる「電子書籍化」の波で、軒並みデジタル化が進んでいる。しかし、ブログなどで書き込みの対象になるのは「本」が圧倒的に多いという。
梅田 ただ、、僕がいま面白いと思っているのは、ネットだけではなくて、「本」と「ネット」を結びつけることなんです。茂木さんのブログへのアクセスが1万2000とおっしゃっていましたが、僕のブログが8000くらい。特別な話題になるようなことを書いた時は別ですが、そのくらいで安定。p147同上
確かにネット上の情報で物事を間に合わせようとすればできないことはないが、もっと深めようとした場合、「本」は不可欠なようそになる。どうしても2次的、3次的な情報になり、しかもタイミングもずれたりする場合も多くあるが、しかし、拙速を顧みないトップ志願の部分を除いてみれば、「本」は重要なたたき台となる。
3年、4年と、やや遅れて走る長距離ランナーではあるが、当ブログは当ブログなりに、マイペースで「意識をめぐる読書ブログ」という存在意義を確かめつつ、今日もまたシコシコ(古い!)未来に向かって疾走するのであった。
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