iPad vs.キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏<1>
「iPad vs.キンドル」日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏<1>
西田宗千佳 2010/03 エンターブレイン単行本 238p
Vol.3 No.0171 ☆☆☆☆★
当ブログの現在進行中のカテゴリは「No Books No Blog」であった。「意識をめぐる読書ブログ」を標榜するのであれば、現在読みかけているOsho「ユニオ・ミスティカ」とか「イスラーム神秘主義聖者列伝」などが主なる読書テーマとなり、やがてはスーフィーの「本」のようなプロセスをたどるのが一つのモデルであるように思える。しかし、道筋は、そう平坦で一方向に定まったようには見えない。
いくつか前のカテゴリで「クラウド・コンピューティング」を始めながら、物事がブラックボックス化するのと、やたらとコンテナ論に終始するのを嫌い、途中から「クラウド・ソーシング」とその名前を変えてみたものの、なかなか目標とするコンシャス論へと向かわないので、昨年後半あたりから、どんどんコンテナ論や一部のコンテンツ論を切り捨ててきた。
しかし、この夏あたりから、切り捨ててきたつもりのコンテナ論が一気に復活した。抑圧してきた分、大きな逆襲にあっていると言っていい。クラウド・コンピューティングの意味も、だんだんとその姿が実体を現し、以前のような獏とした違和感を感じなくなってきたのも事実である。
結論から言えば、このコンテナ論の結末として、当ブログの「No Books No Blog」というテーマは結局、スマートフォンやキンドルで情報を得て、ツイッターにつぶやく、という姿に結実した、と言っても、決して笑い話ではない。実際、そうしてみても面白いのだろうと思う。しかし、それはやっぱり笑い話なのだろう。
次なるテーマを「メタコンシャス--意識を意識する」と定めている限り、コンテナ論から、コンテンツ論に移り、絶妙な方向転換を図っていく必要がある。コンテナ論はまだまだ続きそうだ。だって、一度首を突っ込むとめちゃくちゃ面白いし、面白い状況が進行している。ひとつアイディアを頂いて自分の生活に取り入れると、自分の生活そのものが大きく方向転換する。コンテナ論の魅力ではある。
しかし、この辺で静かにコンシャス論に移動していかなければならない。そして、メタコンシャスそのものは表現されないものの、そちらに向かって方向性を求めているコンテンツを、静かに、微妙に、デリケートに嗅ぎ取っていく必要がある。
「実際のところ、売り上げの中心はアダルト。それも女性向けが大きい。統計を見てみると、10代から30代の女性が購入し、購入時間も深夜が最も多い。これは予想だが、店頭で購入しづらいので、携帯電話が利用されているのでは」p194「日本はどう「eBook」の波に乗るのか
これは日本の状況だが、「ルポ電子書籍大国アメリカ」にもアメリカの状況が書いてあった。アメリカにおいては、もともとシリーズ化したペーパーバックのロマンス本などがあり、すぐに読み捨てられたり、破って読む部分だけが切り取られたりするという。しかも、ほとんど類型化していて表紙もそれと一発で分かってしまう。そのために、電子書籍なら他の人に分かりにくいという。
もともとインターネットも、アダルトページがその発展に寄与したところがあった。ビデオだって、その手のソフトが流通したればこそ無理してビデオレコーダーを買った人々がいたはずである。日米において、電子書籍の拡大においても同じ現象があるのかもしれない。しかも、今度は文章でありながら、その担い手の多くは女性である、というと、これはなかなか面白い現象ではある。
iPadは「小説的」というよりも「雑誌」的だ。キンドルやソニーリーダーが「鞄に入っている文庫本」だとすれば、iPadは「ソファー横のマガジンラックの中の雑誌」に似ている。どちらも薄い板型のコンピュータであるが、その目指すところは相当に異なっているのである。p92「キンドルのライバル、ソニーとアップル」
なるほど言い得て妙である。
iPadは明確に「リビングでの利用」を念頭に置いている。もちろん持ち運んで使うこともできるし、カフェなどで使うにも困らない大きさだろう。だが携帯電話のように電車内で使うには少々大柄だし重い。「新聞や雑誌のように軽く持てないと」と思いたくなるが、考え方を「リビング向け」に変えると、このサイズも納得できる。p99「アップルの狙いはリビング」だった」
リビング向けとなると、納得もできるが、他のノートも含めて競合ガジェットはもっと増えていくのではないだろうか。すきま的、瞬間的芸にせよ、例えばAUのIS01の8円運用などで、自宅無線LANを使ったリビングユースなどががぜん魅力的に見えてくる。
この本、各方面の各人の思惑がリポートされていて、なかなか興味深い一冊である。単に電子書籍というだけでなく、インターネットや、本そのもの歴史、そしてそれぞれのお国柄など、今後の地球人文化にとっての一つの象徴が、今、電子書籍というシンボルの中で、多くのことがクロスしていることがよくわかる。
| 固定リンク
「40)No Books No Blogs」カテゴリの記事
- 神秘家の道<9>(2010.12.20)
- 2010年下半期に当ブログが読んだ新刊本ベスト10(2010.12.21)
- 2001: A Space Odyssey(2010.12.16)
- twitter(2010.11.28)
- 上弦の月を食べる獅子<1>(2010.12.14)
コメント