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2010/10/07

iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化

iPhoneをつくった会社
「iPhoneをつくった会社」 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化
大谷和利 2008/08 アスキー・メディアワークス 新書 191p
No.0167 ☆☆☆☆★

 この本も2年以上も前の本だ。この当時、私はiPhoneという単語さえ知らなかった。いや聞いてはいるのだろうが、完全に無視していたと言える。この前も書いたが、我が家の子供たちは1998年にiMacを買い与えたのに、使っていたのは中学生、高校生時代のみ。その後はすっかりWin派になってしまった。そのころ、私はLinuxなどにうつつを抜かしていたが、「i」ブランドにはとんと無頓着だった。

 しかし、私は大きな動きを見逃していたのかもしれない。子供のパソコンばかり気にしていたが、実はiMacからiPodへと移行していたのである。その後の「i」ブランドの移行にはまったく気にしていなかったが、最近、そのうちの一人は、どうやらすでに二台目としてiPhoneをオモチャにしているようだ。

 「iPhoneをつくった会社」というタイトルではあるが、実際は、そのCEOであるスティーブ・ジョブスが中心となるべき本ではあろう。良くも悪くもアップル社は彼の才能に頼るところが大きい。経営者としてはかなりユニークで、スタッフとして身近で働いていたら、あまりつきやすい「上司」とは言えなさそうだ。

 しかしまた、このような独断専行の秘密主義な経営者をかかえることができる会社、というところがまたアップル社の文化といえるのだろう。ひとつひとつ知っていくと、好ましく思う面と、これはちょっとなぁ、と思う面とある。もちろん当事者たちにも、どっちに転ぶかはかなり未知数であろう。だが、ジョブスあたりの力技が難解な状況を打開してきた、と言える。

 ざっと考えると、アップル社の哲学とはどのようなものだろうか。

1)OS、ハード、ソフト、サービス、一貫して自社ブランドを提供する。

2)直感的なユーザー・インターフェイスを重視する。

3)見切千両で、不要だと思った機能はバッサリと落とす。

 これに比較して、リナックスを考えてみるとするなら・・・

1)誰もが、どこにでも入れることができるOSをみんなで作る。

2)ユーザーがどんどん作りかえることができるようにする。

3)流通している機能は何でも取り込めるようにする。

 となるだろうか。

 うまい比較になるかどうかわからないがウィンドウズはどうだろう。

1)なんでも自分が1番だと思っている。

2)ユーザーは自分が提供するものを使うのが一番安全である。

3)新しい機能は、自分が使ってこそ、世界に流通する。

 こんな比較でいいだろうか。もしこの比較が妥当だとするならば、直感的に、私はリナックス派だと言える。Do It Yourself的で、いかにも私にぴったりと感じがする。しかしながら、リナックスは日曜大工とか庭いじりの世界とはちょっと違う世界だ。高い専門性や技術を持っている上でのDo It Yourselfなのである。結果的には、一般的な潮流に従って、ウィンドウズの下流に属するしかない、という実態である。

 その実態をよしとはしないが、なんともしがたい。そこに風穴を開けんとするMacのアップル社。この会社の哲学を私のライフスタイルが受け入れなかったのは、第一には、仕事でアップルが使えない、という点がある。友人の中でも、アートやクリエイティブルな業種の人々にはマック派が多いが、私の業種はそういうわけにはいかなかった。

 そして、第二には、よくも悪くも、一部のスター的な経営者が前面にでて何事かをしていく、という文化は、正直言って抵抗がある。投資ビジネスのように、自分の力をファンドマネージャーに預けて、大きくしてもらおうしているかのような、すこし安直な感じがする。損をしたらあいつのせいで、儲かったら、あいつを選んだ自分のセンスが良かったからだ、ということになる。

 こういう視点から、改めててアップル社がつくったiPhoneというケータイを見てみると、なかなか興味深いものがある。そして、この例え話にあうように、リナックスを多用するグーグルがケータイOSとしてアンドロイド、マイクロソフトがウィンドウズフォンOSを造っているのも面白い。もっとも、すべてはすでにブラックボックス化しているので、いちユーザーのド素人でしかない私などには中味をいじることなどできない。

 さて、自分がパソコンなりケータイになりに求めるものとは何だろう。

1)基本的な機能が安定的に、長期に使えること。

2)イニシャルコスト、ランニングコスト、ともに安価で、高品質で使えること。

3)先進性、話題性、一般性、など、不確定要素がそれなりに含まれていること。

 自分でこうして見てみると、いつの間にかだいぶ保守化しているなぁ、と思う。3)は、矛盾している部分がある。60点合格主義の自分としては、60%の機能が満たされていれば、あとは曖昧でも(失格でも)よいとする傾向がある。そもそも1)における「基本」とは何かだがだ、ライフスタイルより前にビジネスシーンが来るだろう。つまり、仕事で仕方なく使うけど、遊びにも使いたいな、というあたりか。

 そもそもパソコン文化に比べれば、ケータイ文化をバカにしていた嫌いがある。若者向けだ、パソコンのモノマネだ、矮化されたいびつなものだ、というイメージがあった。それが故に、通話範囲が広く、200万画素デジカメがついているムーバ機で6年も頑張ってきたのであった。「基本」的には、これで十分なのである。ついていたオサイフ機能など一回も使っていなかった。

 だが、ここに来て、iPhoneを初めとするスマートフォン「騒動」は、必ずしも新しいケータイではない、ということを知らされることになった。これは新しい「パソコン」かもしれないのである。そして、この夏過ぎになってようやく目が覚めたわけだが、こうして2年以上も前を本を読んで感心しているがごとく、実は、意欲的な企業による、深謀遠慮なる戦略があったことをまざまざと知ることになる。

 iPhone向けのアプリケーションを作るための「iPhone SDK」と呼ばれるソフトウェア開発キットは、マックOSX向けのものしか用意されないのだ。つまり、現在、ウィンドウズプラットフォームをメイン環境として利用している企業ユーザーが、iPhoneを便利なスマートフォンとして大量導入した場合、社内向けのアプリケーションを自社で開発するにはマックが不可欠になる。

 すると企業は、現場に導入するにはウィンドウズに比べてコストがかかると思っていたマックが実はそうでもないこと、UNIXベースのマックOSXがウィンドウズXPやビスタよりもトラブルが少なく、ウィルス対策も楽であること、アップル純正のブートキャンプや他社製の仮想化ソフトを利用すれば、1台でマックOSXとウィンドウズの両方を利用できることなどを実感するようになる。p116

 スケールも、業種も、仕事への関わり方もまったく違う。しかし、決断したり、責任を取ったり、あるいは、新しいものを作り上げるという想像力において、確かに「iPhoneをつくった会社」に学ぶべき点は多くある。そうか、この本はすでに2年以上前にでた本だったのか。あらためてケータイ音痴な自分に気がついた。

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コメント

シアノジェンモッド、って発音を覚えるまで大変だ。http://ja.wikipedia.org/wiki/CyanogenMod
例によって、日本は日本らしく、略称を考えるかも。

投稿: Bhavesh | 2010/10/11 18:20

>>CyanogenMod
> またまた気になる新しい名前がでてきましたね。

そうなんです。Cyanogenっていうのがメインの開発者のハンドル名なんだけど、人物のタイプとしてLinusと共通するような部分があるかもしれない。

ちょっとしたら、CyanogenModを標準で載せた携帯とかタブレットとか出てこないかな?とか期待してるんだけどね。

1年半くらい前に最初に出て1機種をサポート、1年くらい前に1.5機種。0.5というのは、同じ機種だけどハード的にちょっと違うモデルをサポート。(どちらも HTC Magic)。

1年前にグーグル・Nexusをサポートして2機種に。

これが3ヶ月くらいまえに、一気に移植が進んで10機種くらいになった。安定版になっているのは5機種くらいかも。

コミュニティ開発版というのが、結構大きくなってきたアンドロイドで、ちょっと楽しみな展開です。

投稿: setu | 2010/10/10 23:39

すでに一般的な操作さえ、ほとんどブラックボックスと同じように見えてしまうこのごろではあるが、まったく閉鎖的、と表現されるより、いじれる、と表現されているほうが親しみが湧くんだよね、ドシロートでも。

>CyanogenMod

またまた気になる新しい名前がでてきましたね。

投稿: Bhavesh | 2010/10/07 22:55

> もっとも、すべてはすでにブラックボックス化しているので、
> いちユーザーのド素人でしかない私などには
> 中味をいじることなどできない。

アンドロイドは基本が自由なソフトウェア(オープンソース)です。
メーカーがソフトをいじれないように防御してますが、この防御(プロテクション)を外したら、自由にいじれるようになれます。

実際に、僕のアンドロイド携帯: HTC-Magic は、コミュニティが開発しているアンドロイドOSに載せ替えてます。

ここが、今、一番のコミュニティ版アンドロイドの開発吉になっている。ここ数ヶ月で、バラバラにやっていた開発者が、Cyanogen の元に集まってきて、開発体制が固まってきています。
http://www.cyanogenmod.com/

次のアンドロイド(携帯、タブレット)を買うときには、CyanogenMod (このOSの名前)に載せ替えが出来ることを前提に探します。

投稿: setu | 2010/10/07 20:12

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