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2010/10/05

自動車保険金は出ないのがフツー

自動車保険金は出ないのがフツー
「自動車保険金は出ないのがフツー」
加茂隆康 2010/07 新書 228p
No.0164 ☆☆★★★

 弁護士。 ホケン業界をかなり悪く語っていはいるが、ホケン・マーケットがあればこそ食えている、つまりギョーカイ人の一人に違いはない。一般人はこのようなタイトルにはギョッととして反応するが、実態を正確に反映したフェアな表現ではない。むしろ、第三者的なジャーナリステッィクな立場以外なら、ヒキョーな表現とも言える。

 これだけモータリゼーションが加速している社会である。一定程度の交通事故が起きることは、織り込み済みである。事故が起きないことに越したことはないが、実態として交通事故は多発している。死亡事故こそ減ってはいるが、小さな物損事故などは、限りない。

 その中で、ほとんどの自動車保険金は正当に払われているのであり、紛争になったり、弁護士に持ち込まれ、裁判になるような案件などは、ほんの0.001%ではなかろうか。すくなくとも、「フツー」ではない。

 近年、自動車保険には弁護士を依頼した場合の費用とか裁判費用の一部を負担する特約ができたので、月数百円の負担ならばと付帯する被保険者が増加している。だが、実際には弁護士を依頼したり、裁判になったりするケースはごくごく限られている。

 弁護士であれば、そのようなこじれたケースが持ち込まれるのであろうし、それを専門にやっていれば、自分の事務所のケースがたしかにそのような案件に満ち満ちているのは当たり前と言える。火葬場の職人が、この世は死人で満ち満ちている、と言っているようなものだ。

 このようなベンゴシの悪質な宣伝にも似た所業による本書などを読んで、一部、クレーマーやモンスター化する顧客がいる。でも、訳もわからず損保に立ち向かっても勿論恥をかくだけである。結局、この本を読んだ人は、弁護士を依頼するようになるだろうし、弁護士事務所は繁盛することになる。

 この本に書かれているケースは、非常にまれなケースが多い。しかも、さまざまな側面が略して書いてあるが、全体像を知ることができるなら、やはり裁判に持ち込まれざるをえないようなレアケースであるに違いない。すくなくともフツーなケースではない。

 そもそも、交通事故など、まったく同じ案件などひとつもないのだから、時間、空間、当事者の要素を考えれば、ひとつひとつゼロベースで対応していくしかない。分類や判例で、手っ取り早く解決しようとする気持ちも分からなではないが、複雑化し、ゴネてやろう、と待ち構えている連中も、少なくないことも忘れてはいけない。

 労災などでも、危険な作業での傷害事故は減っている。むしろ精神的苦痛に対する賠償が倍増していると言われる。交通事故も死亡例は激減しているが、必要以上の治療を請求する被保険者も多い。その心情にパラサイトしている整骨院なども決して少なくないのだ。

 この本の中では、ヘンなタイミングで新聞記事のコピーが挟まれている。かならずしも記事と本文には関連がないのだが、誤解を招くような形で引用されているところが多い。D損保、S損保、Z共済、アメリカ系のA損保など、本文には、実在する保険会社をイメージできるように記載されていたりするが、なるほど、あの会社なら、この対応はありうるだろう、と笑えてくる部分はある。ひとつひとつ、会社にも個性がある。

 弁護士は因果な商売だと思います。無理だと思われる要求でも、被害者の代理人を務める限り、顰蹙を買わない範囲で請求しなければなりません。損保側の代理人になれば、裁判で通らないと知りつつも、不払いの片棒をかつぐようなことをやらされます。p198「因果な商売」

 悪いことは言わないから、誇りに思えないような仕事なら、さっと止めるべきだ。仕方なくやっているなんて、へんてこなエクスキューズをだすべきではない。すくなくとも、なんと言おうと、このようなヘンテコな人物たちも、ホケン・ギョーカイでおいしく食べていることを忘れてはならない。

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