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2010/10/12

生命保険のウラ側

生命保険のウラ側
「生命保険のウラ側」
後田亨 2010/02 朝日新聞出版 新書 260p
Vol.3 No.0177 ☆☆☆☆★

 当ブログにおけるホケン追っかけも、着々と淡々と続けていくしかない。これも立ち読みだが、なるべく新鮮な本で、注目度の高い本となると、それほど多くない。しかもあったとしても、基本的なことが再録されていることが多く、いわば、かゆい所に手がとどくほどにこなれている本はすくない。

 かと言って、暴露本のようなものは、全体像が見えないばかりか、闇雲な疑心暗鬼を生みだすだけになり、不用意な無保険者を多く生み出してしまいかねない。痛し痒しである。そもそも、潤沢な資産に支えられている個人なり企業であってみれば、べつにホケンなど準備する必要などなく、リスクなど無視して、事故が発生した時に、手持ち資産で処理すればいいだけのことだから、いくらでもホケン無用論は言える。

 逆に、潤沢な資産など及びがつかない、という立場からこそ、互いに助け合いの心情からホケンが生み出されたのであり、自分が補償される、というより、その立場に遭遇した人をみんなで救おうというポリシーこそが大事なのである。しかるに、自分はいらないからホケンに加入しない、というのは、本当はホケンを理解していないばかりか、相互補助の精神に欠けている、と非難されてもおかしくはない。

 地域有縁社会が成立していた時代には、義理や結いとかで互いに助け合いの社会を作っていた。冠婚葬祭の場合の「相場」は互いに「出資」していたものの「回収」であったあろうし、病気見舞いだって、つまりは互いの「医療保険」の役割を果たしていたはずである。

 ただ、これだけ「無縁」社会が拡大し、病気入院情報だって、プライバシーや個人情報保護のもとで秘匿される時代になると、「相互扶助」という考えかたやシステムがなかなか成立しなくなる。一部のクローズド社会以外には、もはや現代社会では存在しないと言ってもいいかもしれない。

 そこで、いわゆるホケンの制度そのものの重要性が語られ、また担うべき機能も増加していると言える。ここで問題なのは、そのホケン機能を維持するのが「会社」や「団体」であるということだ。「相互会社」であろうが、「ホールディングス」であろうが、利に聡い。そもそも利に無頓着だった団体ホケンなどが、どんどん破綻していっている。

 そもそもが、もっとおだやかで、ほのぼのとしていたはずのホケンの世界が、いまや利を生みださなければならない状況に追い込まれている。だから、いたずらにリスクを過大評価し、ホケン加入を煽らざるを得ない、という状況も生まれてきている。

 ホケンは、大数の法則で、ごく一部のアクチャリーが計算した数字が根拠になって、ひとりひとりが支払う保険料の基礎が決定されている。だが、実際には、被保険者が抱えるリスクよりさらに、企業や団体、株主などへの配当などの利益分も上乗せされているので、本来被保険者が負担すべき金額より、多くなってしまっていることになる。

 賭けごとは、大体において胴元が儲かるようになっているのであり、ひとりひとりのギャンブラーの勝ち負けは予想はできない。ことほど左様に、ホケンによって救われる人も多くいるが、かけっぱなしで、なんの「利益」もなかった、という人がでてきて当たり前である。そもそもホケンとはそういうものである。しかしながら「胴元」であるホケン会社や団体は、自分自身については、そうあってはならない、と思っている。

 ホケン会社がつぶれそうなので、ホケン料を値上げします、という可笑しなことになる。ましてや、被保険者のリスクの変動がホケン料に反映されるのではなく、被保険者から預かったホケン料の投資に失敗した、という例が続出している。グローバル金融の中で、実際はかなりキリモミ状態になっている、というのが本音のところではないのか。

 この本は、とくに生命保険に限っているわけだが、生命保険の終身部分などのように、長期に多額の資金を運用せざるを得ないシステムの場合、おうおうにして「ウラ側」があることは、容易に想像がつく。しかし、その実態を、一被保険者として個人が追っかけることができるかどうかは、ほとんど不可能であろう。

 このような生命保険会社に長く勤めたあとに、自由な立場になった人からの「ウラ側」情報は貴重である、と言える。だがしかし、結局は、独立して代理店や販売店を経営している立場の人、となれば、当然、自分の立場が危うくなるような情報を外に出すはずがない。

 「ウラ側」とはいうものの、それを一つの看板として、「売らんかな」というスタイルを取っている場合もあるので、個人的には要注意だと思う。所詮は、自己責任ですよ、と言われて、泣き寝入りするのは被保険者個人個人になってしまわないように、どの立場にあろうとも、高邁なホケンの思想を忘れることなく、将来的にも、正常かつ有効にホケン機能が社会の中で存在していくことを望む。

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