ブックビジネス2.0 ウェブ時代の新しい本の生態系
「ブックビジネス2.0」 ウェブ時代の新しい本の生態系
岡本真/仲俣暁生/他 2010/07 実業之日本社 単行本 238p
Vol.3 No.0173 ★★★★★
ちょっと甘い気もするが、この本レインボー評価としておく。何故、甘いか、というと、この本、全体をスラスラ読むことができて、あまりひっかからないところが、少し気になる。「ブックビジネス」というタイトルからして、ちょっと構えた姿勢で読み始めたのが、良かったか、悪かったか。とにかく、意表を突かれて、うん、我が意を得たり、と共感する部分が多くあった。
ひっかからない本というのも善し悪しで、喧嘩しつつ、最後まで取っ組み合いをしながら最後まで気になる本が、結局自分にとっての良書だったりする。逆に、そうそう、そうなんだよねぇ、と面白い本が、いつの間にかすっかり忘れてどこかに行ったりする。だから、本の評価はすこし時間をかけてみないとわからない。
それでもこの本をレインボー評価とするのは、結局、当ブログであちこちウロウロしているけど、結局、あんたはん、何をいいたいんでおまっしゃろ、と言われてしまった場合、手っ取り早く、そうですなぁ、最近は、こんな本がよく私の言い分を言ってくれてます、と、言える一冊、と言えるからではないだろうか。
まず、図書館を大事にしている。もちろん本を大事にしている。そして、新しいデバイスについても積極的に取り組んでいる。そして、「ツィッター社会論」の津田大介や、「iPad vs.キンドル」でも意見を述べていた国会図書館館長の長尾真なども一筆を献上しているところが、とてもよい。
電子書籍やウィキペディアやグーグルについてもバランスよく把握している。問題意識はかなり共有できる。その解決策(?)についてはよく分からない。どうあるのが解決なのか、よく分からない。しかし、このような問題意識の結果、時間と、空間と、そのビーイングのなかで、起こってくることが、リアルという真実なのであろう。と、なんとなく納得できるような信頼感を持つことができる。
国立国会図書館では全国の主要な図書館と協力してこれらの図書館のOPAC情報を集め総合目録データベースを作っている。これにアクセスすれば国会図書館にはないがどこの図書館にはあるということがわかり、その図書館のシステムに飛んでゆけるようにすることができる。そしてその図書館で目的とする資料の内容がディジタル化されていて外部に出せる場合には、それを電子的に取り出せる。このようなことを効率よく行うためには、書誌データ形式の標準化、MARC(機会可読目録)の統一などが大切となる。p138 長尾真「ディジタル時代の本・読者・図書館」
ここにおける本・読者・図書館、という三位一体が私には妥当のように思う。本がなくなることはないだろうし、図書館がなくなることもない。本を読む人がなくなることもないだろう。ここに図書館が入っていることが、なんだかとてもうれしい。私は、ネットで入手できる情報、というものだけでは納得できないだろう。図書館、という機能がとても大事だと思う。とくに、最近、ネット社会に対応しようとする図書館は一昔前のものとはまったく違う機能を持ち始めているように思う。
この本、ブックビジネス、というタイトルを持ってはいるが、いわゆる銭金の金もうけとしてのビジネスではなく、趣味としての書籍、でもなく、現実社会の中でキチンと機能していく書籍、という意味で、ブックビジネスと名付けているのだろう。「ウェブ時代の新しい本の生態系」というサブタイトルこそ本当の本書のタイトルだと思う。
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コメント
とても魅力的な記事でした!!
また遊びに来ます!!
ありがとうございます。。
投稿: ビジネスマナー | 2011/10/22 23:43