ウェブで学ぶ―オープンエデュケーションと知の革命
「ウェブで学ぶ」 ――オープンエデュケーションと知の革命 ――
梅田望夫 (著), 飯吉透 (著) 2010/9 筑摩書房 新書 272p
Vol.3 No.0194 ☆☆☆☆☆
梅田望夫関連リスト一覧
「シリコンバレーは私をどう変えたか」2001/08紀伊国屋書店
「ウェブ進化論」2006/02筑摩書房
「ウェブ人間論」vs平野啓一郎 2006/12 新潮社
「フューチャリスト宣言」vs茂木健一郎 2007/5 筑摩書房
「ウェブ時代をゆく」2007/11 筑摩書房
「ウェブ時代5つの定理」2008/03 文藝春秋
「私塾のすすめ」vs斎藤孝 2008 ちくま新書、 未読
「シリコンバレーから将棋を観る」2009/04 中央公論新社
「ウェブで学ぶ」vs飯吉透 2010/9 筑摩書房
向井万起男が「週刊ブックレビュー」で紹介していたのは、「ロスト・シティZ」だけではない。この本もまたその一冊。梅田望夫ウェブ・シリーズの各論、今回のテーマは「教育」である。対談の相手は必ずしも「教育者」ではなさそうだが、教育を主テーマにした研究をしている人、というべきか。
私も子供達の成長とともに小学校父親の会や、中学校PTA、高校甲子園出場支援、その後、自治体の教育委員会外部委員など、いわゆる教育の場に、主に「親」の立場で参加してきた。だから、教育に無関心ではない。しかし、ウェブに期待するものは、いわば教育の次のものだ。教育が学生と教師の関係なら、その次のステージは、求道者と師の関係である。
梅田 それが、飯吉さんのオープンエデュケーションの三分類における「コンテンツ」「テクノロジー」「ナレッジ」のうちの、テクノロジーとナレッジですね。そこについて詳しく具体的に教えてください。p189「学びと教えを分解する」
ここに於いては当ブログにおける三分類と、「コンテナ」=「テクノロジー」、「コンテンツ」=「コンテンツ」、「コンシャスネス」=「ナレッジ」、と対応するものとする。コンテナ、コンテンツについては、大まかにこれでいいだろう。しかし、「コンシャスネス」と「ナレッジ」の間には大きな隔たりがあり、むしろ≠で結ばなければならない。
飯吉 ここで使っている「教育的な知識や経験」という意味での「ナレッジ」の定義は簡単ではないのですが、僕は、教えや学びのコミュニティ内でやりとりされる「教育的な知識の通貨」が「ナレッジ」であり、それがオープンにされたものが、「オープン・ナレッジ」だと考えています。p190
先日読んだ「グーグル時代の情報整理術」は必ずしも即自的に役立つ本ではなかったが、あらためてドギッとしたのは、「整理術の原則」 の中の「6)知識は力ならず、知識の共有こそ力なり。」とあったこと。まさにこれこそ「オープン・ナレッジ」だ。しかし、知識や技術の伝達だけが教育ではない。いや、それでは本当の「教育」ではない。
飯森 「師」や「同志」というのは情報や刺激を与えてくれる「環境」であり、「師」や「同志」とどのように出会えるかということは、どのような学びのための環境」に自分を置くか、ということと密接に関係してくるのではないでしょうか。p193
当ブログで言えば、「師」=マスター、「同志」=コミュニティ(あるいはコミューン)と置き換えることができるだろう。そして、そこにおいて伝えられるべきものは決してナレッジで終わってしまってはならない。そこからさらに、コンシャスへとジャンプするべきなのだ。オープンナレッジ論は、更にオープンコンシャス論へと進化していく必要がある。
トップシークレットはオープンシークレットだ。コンシャスはそもそもオープンなのだから、あえてそう表現する必要もないのだが、あえてここはオープンコンシャス、と明言しておこう。ネット社会、ウェブ社会はまだまだ進化の過程にある。その目標を見失ってはいけない。
飯森 大学の歴史を考えても、たとえばアメリカの最古の大学であるハーバード大学は、元来は聖職者養成のための教育機関として17世紀に設立されました。ハーバードという名前も、大学設立のために自らの蔵書と資金を遺産として寄贈したジョン・ハーバードという牧師の名前に由来していますし、大学の書いの校訓は、「キリストと教会のための真実」というもので、いずれにしても非常に宗教的な色彩が強い。p099「進化と発展の原動力」
インターネットには、結局はグローバル・スピリチュアリティへと繋がるオープンコンシャスのコミューンと化す宿命がある。この本、オープンエデュケーションという現場の情報を得るには多少役には立つが、そこからさらに未来へと繋がる道は見えない。さらなるコンシャスへとジャンプするビジョンが足りない。
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