アップル、グーグル、マイクロソフト クラウド、携帯端末戦争のゆくえ
「アップル、グーグル、マイクロソフト」 クラウド、携帯端末戦争のゆくえ
岡嶋裕史 2010/03 光文社 新書 181p
Vol.3 No.0157 ☆☆☆☆☆
この人の本は「郵便と糸電話でわかるインターネットのしくみ」(2006/03)、「数式を使わないデータマイニング入門」(2006/05)、「構造化するウェブ」(2007/11)、「迷惑メールは誰が出す?」(2008/10)、なんて本を読んできた。真面目なお人柄は分かるのだが、正直言って、この方の本は、ドシロートの私にはいまいち面白くない。最新刊は「ポスト・モバイル」(未読)である。この人の名前だけでは、手にとって読もうという気にはなかなかなれない。
こちらの本も図書館に入っていることは分かっていたが、いまいち手が伸びないでいた。図書館までウォーキングして、帰り道に大型書店に入って、ようやくパラパラと立ち読みした。それではあまりにも失礼なので、キチンと図書館から借りだして読んでみることにしたら、なんと、これがなかなかおもしろかった。
この面白さは、IT業界、栄枯盛衰の虚実が入り混じっていて、本質的に基礎的な部分においては百年一日のごとくのホケン業界などとは、まるて違っていることによるだろう。そしてまた、著者の、視点、とくに冷静に客観的に、中立的に見ようとする視点と、やはりあくまでも日本人としての、ちょっと大人っぽい視点がなかなか好印象を持たせるところによるだろう。
最初はそれが、デスクトップ・パソコンだと思われていました。それがいつしか本命はノート・パソコンだと囁かれるようになり、そして、私たちの生活がコンピュータを使ったサービスに依存する割合が大幅に高まり、いつでもそれを使いたいとなると、携行性にすぐれた携帯電話がその地位にふさわしいと脚光を浴びました。p8「まえがき」
そして、それもスマートフォンやiPhone、ストレートPCへと雪崩を打つように流れている。筺体ばかりではなく、そのOSもアンドロイドやウインドウモバイル、kindle、などなどの新興勢力が跋扈し始めている。
NTTドコモの副社長が、「ブラックベリーがあれば、パソコンは必要ない」と発言する時代である。ブラックベリーとは、欧米における代表的なスマートフォンで米国のオバマ大統領も愛用していると伝えられている。p86
ブラックベリーとまではいかないまでも、最近、代替えしたスマフォ風ガラケーには、小さいフルキーボードがついている。私はこれが大のお気に入り。いままでケータイのテンキーで打っていたメールは時間がかかりすぎた。フルキーボードなら、タッチタイピングができないまでも、操作時間が圧倒的に短縮された。かなり慣れてきた。
アンドロイド端末の売れ行きは、少なくとも日本市場では現在のところ期待された水準を下回っている。パソコンとは異なる利用者像を持つ携帯電話に合致しOSにどう仕上げていくのか、いかに魅力的なクラウドサービスを提供できるかが、今後のグーグルの課題だろう。p121
たしかにアンドロイドも今回の選択肢のひとつではあったが、私のケータイとしては、今回は見送ることにした。掛け声ばかりで、実質的なサービスはまだフィットしたものになっていない。選択肢も少ない。ただ、今後はだんだん目移りするような機種がどんどんでてきそうな気配がある。
後方集団に沈んだ企業が嵌る「クラウドかどうでないか」という議論など、彼らにとっては製品の価値に何ら寄与しない神学論争のようなものだろう。利用者は、目の届かない世界の裏側がどのように構成されているかを気にして、製品を購入するわけではない。p163
この辺は、あまりに巨大な視点を持つことが当ブログの目的でもないが、あまりに歪化された小さなユーザー像に押し込められるのも窮屈である。原寸大の一人の地球人としての視点は大事だ。200人程度の直接的な人間関係を持つ、年収3~500万程度の地球人が、もし情報端末として選ぶとするなら、何を選ぶのか、その辺の基準を保っていく必要がある。
日本の携帯電話市場はガラパゴスと呼ばれる。閉鎖的な環境の中で、奇形的進化を遂げ、世界とあまりにも違うと批判されてきた。しかし、旧ルールがそうであるならば、自らの手でルールを変えてしまえばいい。p178
かなり無茶なことを言っているが、たしかに現在の日本の産業界には、このような元気な声が必要であることは間違いない。
日本の携帯電話は、製品最終処理にこだわり、過剰品質で、一生かけても使いきれないほどの機能を持ち、結果的に高コストだと言われ続けてきた。だが、世界は今、携帯機器をクラウドの受け手にしようと躍起になって高機能化している。
そうであれば、国内携帯は過剰品質でなく適性品質である。すでに日本は世界が求める水準にいるのだ。p178
たしかにスマフォにできなくてガラケーにできることはたくさんある。ワンセグやimodoなど、あるいは最近私が重宝しているのが、デフォルトでインストールされていた英和、和英、国語辞典である。30年前にインドを旅した時に使った小さな辞書をいまでもポケットに入れて使っていたのだが、最近は、ケータイで辞書を引くようになった。とくに英語のスペルの訂正には持ってこいである。
う~ん、やっぱりこの分野、なかなか目が離せない。
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コメント
☆setu
詳しくは知らないが、ワンセグを実現するには、ケータイをいじるだけではなく、その電波を出さなくてはならないはず。だから、例えば、中国にワンセグを流行らせようとしたら、その電波を全土に流す必要があるわけで、なかなかこれはむずかしそう。
おさいふ機能も、ケータイを作ることは可能だけど、電車の改札口とか、商店のレジが変わらないことにはどうしようもない。
この時点で気づいているのだから、いずれ、お互いの位置関係を取り合って、統一基準に向かっていくのだろうが、難しいのは、どちらが「勝つか」みたいな競争原理が働いてしまうこと。
コカコーラとペプシ、どちらが好きか、と言われても私ゃ困る。どっちも好きだから、どっちも飲む。自販機が多いほうに、本数は傾いてしまうだろうが、どっちもいいと思うんだよなぁ。
だから、このスマフォvsガラケー問題も、とにかく、同時並行で、当面すこし流してみる必要があるだろうなぁ。そして、結局は、さらにガラパゴス化したスマートフォンが日本には流行していきそうな気がする。
光がすでに埋設されているのに、一回isdnやadslに戻ってみたりするけど、やっぱり早い方がいいとなれば、光が勝ち、ってことになる。
ケータイの前はphsだった。私も最初は、音質の良さと通話料金のやすさでphsだった。だが、いまや圧倒的にケータイが勝ってしまった。
ワープロ専用機を買うのと、ワープロを使うためにパソコンを買う、という選択肢に悩む時代があった。いまじゃお笑い草だが、当時は真剣だった。
ケータイがポケットコンピュータに進化し、ノートパソコン要らずの時代を造るとすれば、時代はどんどんスマートフォン化するのは当然のことだ。
そして、インターフェースも、フルキーボードとマウスが当たり前になってしまっているけれど、ほんとはもっと違ったスタイルがあるのかもしれない。
ipad kindle、スマートpcなどなど、今後もそれぞれの栄枯盛衰が続いていくとすれば、一歩下がったところから見ていたら、なかなか面白いバトルロイヤルではある。
携帯コンピュータ資格4Qを30年ほど前に取得した私としては、ようやく、一番初期にイメージしたような「魔法の箱」が、いよいよ出来上がりつつある、という感じがして、ワクワクする。
投稿: Bhavesh | 2010/10/01 21:16
世界的にもスマートフォンを持ってる人の割合って少ないはずだよ。インドじゃ圧倒的にすくない。周囲のサニヤシンでも少ないよ。先日イタリアから来た知り合いがアイフォンを持ってた。
日本はガラパゴスに進化しちゃったので、世界市場との合流が難しいよね。アイフォンやアンドロイドになって、日本携帯と並べる位置に世界が追いついた。
でも、世界は安い通話料金でやっていくなかで進化してきたので、その強豪と日本の保護された中で進化したメーカーがやりあうのは大変だろうなあと思う。
日本の、普通の携帯が、スマートフォンの機能をもっているので、うまく移行を行えると、日本は有利になりえるけど。
でも、「日本で進化した規格を、世界の規格にする」ということに精巧はしていなと思う。例えば、お財布携帯を世界規格にしちゃう前に、既にアイフォンが独自の支払い方法を開発したと思う。確か、PayPal も携帯で支払う方式を用意してると思う。
例えば、「ワンセグ」を世界規格にしちゃえば良い。それを中国で採用させるとかね。たぶん、しない。やっぱり、欧米で採用されないと、工場をしている国は採用しないかも。
投稿: setu | 2010/10/01 16:22
☆setu
今回、代替えするにあたって、当然日本版スマフォは思案の対象になった。そして、二台持ちも視野に二次的検討にはいっている。
1)通話とデジカメに特化したムーバの使用状況から、日本のガラケーを通り越して、世界標準スマフォに進化してしまうのは、ちょっと惜しい気もした。
2)ブラックベリーも検討したが、通常のガラケーより、この機種だけは2000円/月ほど、通信費が高くなる。
3)iPhone4は、目下の話題だが、通話品質がソフトバンクなので、一台に限定するのは難しい。
4)とにかくフルブラウザ+キーボード付きの機種を選んで、様子を見ることに。ほんとうにフルブラウザは使い勝手がいいのか、必要なのか。
5)使い放題ダブルとやらを選んで、フルブラウザを使い倒すと月6000円がプラスになる。機種代+基本+フルブラウザで、なんと12000円!は、通話専用ムーバを(しかも受信が多い)を使ってきたオジサンとしては、いかにも高い。
6)インドの料金も実際に品質やら必要やらを考えれば、高いのか安いのか分からないが、日本の通信費は高い。確かに高い。
7)ただ使い方によっては、家族割とかあるので、その部分が無料になったりするので、どう使うかによって、大きく感想がことなりそう。
8)たしかにAUはiPhoneは販売できない仕様だったので、その状況を突破しようとしている。3社ともそろったら、もうすこし機種の進化も違ってくるだろう。
9)simフリーになれば、またまた市場は流動的になるだろう。
10)5段階に分けて、私は3段階のアーリーマジョリティあたりにいたいな、と思っているのだが、現在では、トップの開発者達はもうスマフォ(二台持ちを含め)は当たり前になっている。現在は2段階の人々が使い始めている感じ。ラガードを含め、誰もがみんなスマフォになる、というのは10年以上かかるだろうけれど、一般的にはこの1~2年が大きな変化の時期かな、と思う。
11)個人的には、今回購入したガラケーをあと2年は使いたいし、長く使いたい。しかし、魅力的なアンドロイドあたりが出てきて、使い方によっては料金が安くなるはずだから、そうすると、すぐに替えてしまうかもなぁ・・・・(笑)
投稿: Bhavesh | 2010/10/01 08:37
日本の携帯がガラパゴスなのは、携帯の通話料の高さのセイだ思うんだよね。詳しくは知らないけど世界的にも高いらしい。インドの数十倍もする。w
インドでは固定電話間が、3分1ルピー(2円)に対して、携帯間が1分1ルピー。最近は年に50ルピーくらい払ったら、毎日二度目の発信から1分0.5ルピー(2分1ルピー)です。
つまり、日本の携帯ネットワークは収入が大きいんじゃないだろうか?と思っている。
それで、日本市場でしか使えない開発に対して、大きな資金が使える。それで日本独自の進化をしちゃう。
すごく良い物を開発したんなら、それを世界で売ったらいいのに、日本の市場相手だけで、十分ペイしちゃうので、海外で売る必要もない。
さらに、日本独自の進化をしているので、市場としては小さい日本のために、海外のメーカーは投資が出来ない。そういうわけで、日本のメーカーも競争する必要がない。
これが、3G:第三世代の携帯通信方式になって、ドコモとソフトバンクの通信方式が、世界の標準の方式になっている。
これが、ドコモがアンドロイドを売りはじめて、ソフトバンクがアイフォンを売りはじめた理由。
もしかしたら、AUなども同じ3Gの通信方式なのかな?
そうなると・ですね。海外のメーカーの日本進出が始まるんではないでしょうか?ガラパゴスで守られて育った日本のメーカーに競争力があるかどうか?っていう心配があります。
投稿: setu | 2010/10/01 04:48
2010年3月と言ったら、まだ日本ではドコモのHT03しかアンドロイドが出てなかった頃だから、言ってることが古いみたい。ソニーのXperiaが出る前だから。
HT03と言ったら、世界的にはほとんど一般向けの最初のアンドロイド端末です。その前のキーボード付きのは、どちらかというと開発者向け、技術オタク向け。世界的には、2009年の9月にHTCの次の機種が出て、そっちが主流になって、そのあと12月にモトローラが出て、
どちらにせよ、日本のアンドロイド市場は、ここから見ている限り、ガラパゴスな気がする。
まず、ソニー・エリクソンのXperia自体が世界的に見てガラパゴスなアンドロイドだという印象。既に、アンドロイドは 2.2 で 11月末には 3.0 が出てこようとしているのに、Xperia は、1.6 がベース。2.0, 2.1, 2.2 と世界は進んでいる。1.6 というのは、1年以上前のアンドロイド。
その上にソニー独自のユーザ・インターフェースを載せている。発売前は話題だったけど、結局、買った人は独自な部分は使ってなくて、普通のアンドロイドとして使っている。
で、ソニー独自な部分が複雑過ぎて、アンドロイドの進化を半年以上遅れて追いかけている。11月くらいに Xperia 向けの 2.1 の更新があるらしいけど、 2.1 って1月に出てきたやつだとおもう。つまり1年遅れの対応。
アンドロイドとしては、ソフトバンクから出てるHTCのほうが世界的な主流のアンドロイドです。もうすぐ日本でも、2.2 の更新が出ます。
というわけで、アイフォンは、世界と同じものなので日本で売れてるんではないかな?と思う。
インドですら、アンドロイド携帯は12機種の中から選べます。
ソニーが出してる機種ですら3機種あるんですよ、アンドロイド。アンドロイド1.6だけどね。日本と同じXperia、画面サイズが半分で全体的にも小さくて値段も半分近いやつ。その小さいのにフルキーボードがスライドで出てくるやつ。
アメリカ的には、アンドロイドを使ってる人の数がアイフォンの数を越えたそうですし。アイフォンはATTだけで、他のネットワーク各社は複数のアンドロイドを出してますからね。そういうことにならざるをえない。アイフォンはそろそろATTの独占をやめる必要がありそう。
ただ、アンドロイド 3.0 はソニーがからんでるみたいなのと、もうすぐアンドロイドを積んだグーグルTVがソニーから出てくるので、今後、ソニーがアンドロイドの主流になる可能性もあるです。
アンドロイドは3ヶ月くらいで次の時代に移行してきたんですが、「これじゃ早すぎるので、公開の周期を半年にします」ってことで、2.2 の後、3.0の発表までは半年くらいのギャップがありました。3.0 が本当の一般向けアンドロイドになる予定。こうご期待!(いや、僕が期待してる
「確認」ボタンを押したら超長文で驚いちゃった。とりあえず、投稿しちゃいます。
投稿: setu | 2010/10/01 03:25