ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え<1>
「ロスト・シティZ」 探検史上、最大の謎を追え<1>
デイヴィッド・グラン/近藤隆文 2010/06 日本放送出版協会 単行本 p316
Vol.3 No.0193 ☆☆☆☆☆
先日、NHK「週刊ブックレビュー」で紹介していた。日本人女性宇宙飛行士の向井千秋さんのおつれあいのご紹介。この本をブラッド・ビッドが映画化することが決定したという。ブラッド・ビッドが大好きな向井万起男さんは書店でカバーを見ただけですぐ購入したという。
そうか、この本の主人公ハーシー・ハリソン・フォーセットをモデルにした映画が「インディー・ジョーンズ」だったのか。そのフォーセットの足跡を追ってさらに探検にでる、現代の冒険物語。当ブログとしては、「アガルタ探検隊」に連なる一冊。
そう言えば、最近、ジャングルの奥地を探検するような、さも冒険家になったような体験をした。いやそれはかなり大げさだが、「パジャマを着たままパソコンの前に座る日常冒険家」にとっては、さもフォーセットがアマゾンの奥地を探検するに匹敵する体験だった。
自宅から車で1時間ほどにある里山。とあるゴルフ場の、そのとなりのおよそ数万坪の土地。かつては高度成長期に別荘地として開発され、分譲のためにアスファルト道路が総延長数キロほど巡らされている。その土地にはいるには大きな入り口だけでも3か所。
バブル時には10億の値がついたという土地も、その後の景気低迷で、別荘地として分譲されることもなく、幸か不幸か放置されることになった。いつか忘れられた土地となり、裁判所の競売物件になっても入札もなし。ほとんど捨て値となった頃、密かに最安値で落札した人がいる。
その友人がこの何年もかけて密かにそこに小さな里山の自らの菜園を作って、ひとり楽しんでいる。ミツバチを飼い、山菜を獲り、畑を耕す。ティーピー・テントを建て、ログハウスを計画する。水は山水をパイプで引っ張り、アケビやシイタケの収穫の日々。
しかし、そこには熊もイノシシも出没する。原自然との接点である。ひとりの菜園ではこの大きな山林は使いきれない。使っているのはほんの一部だ。一時はきれいに造成され、豪華なパンフレットも作られ、外国人向けにさえセールスされたという土地は、いつのまにか自然に帰り、あちらこちらの建造物も里山の雑木に包まれて見えることがない。
友人は、中古で買ったナンバーなしのダンプカーで、その雑木を切り分け奥地に案内してくれた。ミツバチを狙った熊の凶行の痕跡、収穫直前のサツマイモ畑を荒らしたイノシシの足跡、蔦に絡まれて見えなくなった大型建設機械。その数十分間は、さも、アマゾンの奥地へと誘われたフォーセットもさぞやと思わせる体験だった。
1925年1月のある寒い日、長身の著名な紳士がニュージャージー州ホーボケンの波止場を磯気、全長156メートルのリオデジャネイロ行き大洋航路汽船<ヴォーバン>号へと向かっていた。年齢は57歳、180センチをゆうに超える身長に、引きしまった長い腕。頭髪は薄くなりつつあり、口ひげには白いものがまじっていたが、休憩も食事もほとんどとらないまま何日も歩けるほど壮健だった。鼻がボクサーのように曲がったその風貌には、どこか獰猛なとkろがあった。(中略)彼こそはパーシー・ハリソン・フォーセット大佐、その名は世界中に轟いていた。p12「かならずもどる」
私はいま、このフォーセットと同じ年齢に達している。体も意志も、知名度も、なにもない私であってみれば、アマゾンの奥地どころか、あのゴルフ場の脇の土地にさえ、容易に踏み入ることができないほど、軟弱化しているように思う。
フォーセットをアマゾンの奥地へと導いたものは何だったのか。この小説は彼の痕跡を追って旅をする現代ジャーナリストの物語である。ブラッド・ビッドは、この話を映画化するとするなら、80年前の冒険家と現代のジャーナリストのどちらに扮するのだろう。
私には友人のように、山林を切り開く力はない。しかし、なぜに彼はここに来るようになったのか、せめてそこのところを、もうすこし分かってみたい。そして、すでにジャングル化しているこの土地の、再活用はあるのか、ないのか。そして、そこに隠された「お宝」はあるのか。もういちどあの地に立ち、ナタを振るって、人の歩けるほどの道でも作ってみたい。
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