ロスト・シティZ 探検史上、最大の謎を追え<2>
<1>よりつづく
「ロスト・シティZ」 探検史上、最大の謎を追え<2>
デイヴィッド・グラン/近藤隆文 2010/06 日本放送出版協会 単行本 p316
☆☆☆☆☆
フォーセットの探検と、その探検の痕跡を追いかける、この本の著者デイヴィッド・グラン、この二つのストーリーが交互に展開される。この本が映画になる時、ブラット・ビッドはどっちの役を演じるのだろう。どっちもカッコいいが、ひょっとすると、これは一人二役、おいしいところはどっちもブラッド・ビッドが独り占めするのではないだろうか。
ヴィクトリア朝に現れたなかでもきわめて型破りな人物がいた。ヘレナ・ペトローヴナ・ブラヴァッキー、通称ブラヴァッキー夫人だ。19世紀後半のその時期、霊能力者を自任するブラヴァッキーは、その後長く続くことになる宗教活動をまさに始めようとしていた。p49
フォーセットの生きていた時代は、まさに探検・冒険の時代であり、それは外側にも、内側にも、目が向けられていた。ここにブラヴァッキーがでてくるのも、意外でもあるが、当然、という気もする。
「ここだ」。僕はコンピュータの画面に映し出されたアマゾンの衛星写真を指して妻に言った。「ここが僕の行き先だ」
その写真には、大河とその支流が容赦なく刻んだ地球の裂け目が写っていた。のちに僕はグーグル・アースを使ってその座標をさらにはっきりと妻に指し示すことができた。2005年の夏にベールを脱いだこのソフトウェアは、地球上のほぼどの地点でも、瞬時に数メートル手前まで迫って拡大表示してくれる。p110
そしてまた、本書の著者が生きている現代は、GPSや4輪駆動車、インターネットが縦横に活用できる時代である。この二つの時代のストーリーの同時進行が、新たなるリアリティを産む。
年代記は古い教会や図書館のほこりにまみれた地下室に埋もれ、しかも世界中にちらばっていた。フォーセットはふだんの探検服からあらたまた服に着替え、そんな巻物を各地で探し求めた。(中略)こうして少しずつエル・ドラードの伝説をつなぎ合わせていった。p163
フォーセットはエル・ドラードとは言わなかった。単に「Z」としか言わなかったのだ。失われた都市「Z」。当ブログの「アガルタ探検隊」の目的地には、当然、この「Z」も含まれている。
かつてフォーセットがオカルトに興味をいだいていたのは、主に若者らしい反骨精神と科学的好奇心からくるもので、それが自身の属する社会の主流への反抗心と、先住民族の伝説や宗教への敬意につながった。p182
現在、名古屋で開催されているCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)において、いわゆる先住民達が伝説やシャーマニズムの中で使用してきた植物や生物のなかから貴重な資源がみつかり、現在、薬品などに使われている。冒険や探検が生み出す成果は限りなく大きいが、それを現地で保存し言い伝えてきた住民達に対する敬意ももっと大きいものであってしかるべきだろう。
フォーセットは大佐を自称したが、じつは大戦後に除隊したときは中佐だった。彼は会見に先立ち、英国陸軍省に階級の変更を承認するよう要請していた。(中略)「現地の役人を相手にする時は高官であることが重要なのです。」(中略)どちらも陸軍省から要請を却下されたが、フォーセットはかまわず階級を上げることにしたーー一歩も譲らない彼のことを、そのうち家族や友人をはじめほぼ誰もが”フォーセット大佐”としか呼ばなくなった。p191
これもまたフォーセットの人と成りを伝える面白い逸話である。
フォーセットは1991年の小説「インディ・ジョーンズ第七の魔力」にも登場している。これは1981年の大ヒット映画、「レイダース/失われたアーク<聖櫃>」の成功に乗じて書かれたシリーズ本の一作だ。入り組んだ筋のこの小説で、インディアナ・ジョーンズは、「私は考古学者だ、私立探偵ではない」と言いながらも、フォーセットの捜索に乗り出す。p243
B級娯楽映画「インディ・ジョーンズ」全4作は図書館にビデオやDVDとして貸出可能になっている。借り出して見てみよう。
信頼に足る統計値は存在しないものの、近年の推計によれば、こうした遠征による死者の数は100人をくだらない。p261
命知らずの男たちを誘うものはなにか。
1924年には、フォーセットの手記は、世界の終わりや、エデンの園めいた神話上の跡アランティス王国に関する熱に浮かされたような文章にあふれていた。Zは「あらゆる文明の揺りかご」にして、ブラヴァッキーが語った”白ロッジ”、すなわち高次の霊的存在の一団が宇宙の運命を方向づける場所の中心へと変貌したのだ。フォーセットは「アトランティスの時代」から存在する白ロッジを見つけ、超越を達成することを願っていたのだ。p287
ここでの白ロッジとは、グレート・ホワイト・ブラザーフッドのことと考えていいだろう。
出発を控えたパオロと僕に、ビジネスマンはこう警告した。「この世界で探しているかぎり、Zが見つかることはありません」p289
ニコライ・レーリッヒ「シャンバラの道」のどこかに、似たような台詞がなかっただろうか。
フォーセット物語の完成稿は、永遠に地平線の彼方にあるように思われた。それは単語とパラグラフで構築される神秘の首都、僕自身のZだった。p292
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