意識のターニングポイント
「意識のターニングポイント」ーメタ・パラダイムの転換とニューエイジ・ムーヴメントの今後
吉福 伸逸, 松沢 正博 1987/03 泰流社 単行本 p306
Vol.3 No.0210 ★★☆☆☆
吉福--最初は物理学という物質に関するパラダイムの転換、そのつぎは、人文科学とか生命を扱う科学全般を巻き込んだパラダイムの転換、そして、最後に、日常生活とか人生観や人間観に関連した意識に関するパラダイムの転換が要求されている。という風にとらえることができる。その三つが三乗波のような感じで同時に押し寄せてきているのが、今の80年代の状況かもしれない。そういう三つの層におけるパラダイムの転換をメタ・パラダイムの転換と呼ぶ、というふうに理解すれば、だいたい全体の姿がとらえられるとおもう。p275「メタ・パラダイムの転換」
当ブログ最新のカテゴリを「メタ・コンシャス 意識を意識する」と定めた今、図書館めぐりするというより、自宅蔵書の古い本を読み返すサイクルになりつつある。つい背表紙が気になり、この本をめくる。前半は、外的な状況や社会的な評価などが続くので、いわゆる「意識」そのものに話題が集中しないが、この辺あたりで、「メタ」という言葉使いが気になる。
メタ--広義に、何かを取り込んだ何か、何かについての何か、といったものがメタと呼ばれる場合がある。たとえば、Wikipediaの記事一覧の一覧などはメタ的なものの一つだろう。情報理論では、情報に付加されるそれ自身に関する情報がメタデータ(メタ情報)と呼ばれる。 Wikipediaより
そう言えば、小説の技法として、メタフィクション、というものが気になった時があったな。フィクションの中のフィクション。「物質」、「人文科学」、「意識」も、コンテナ、コンテンツ、コンシャスネス、に対応している。当ブログの現在の文脈では、メタ・コンシャスだから、より絞った形になる。
吉福--さっき神秘主義という言葉を使ったんだけど、その神秘主義という言葉の使われ方もひじょうに曖昧だから、ほんとうはニューエイジ・サイエンスとの絡みで使われる神秘主義が何を意味するかよくわらないんだよね。おそらく、一般的にはカプラが「タオ自然学」の中で言及した東洋思想、つまり東洋神秘主義なんかを意味しているとおもうんだけど、そうなると今松澤さんが説明してきた西洋社会の流れの中における神秘主義とはちょっと質が違うような気がする。
仏教思想にしろ、ヒンドゥー教、道教思想にしろ、根本的にはアジア側からすると、神秘思想というより、やっぱりひとつの考え方とか人生観だからね。それを神秘思想と呼ぶのは西洋的な理性主義から外れていて、特定の意識状態における洞察とか直感が反映されているために、非理性的といいう意味で使われているんだと思う。p238「ニューエイジ・サイエンスの地平」
既知、未知、不可知、でいえば、不可知に対応しているのが神秘、ということになろう。この対談が行われたのは84~86年の間であり、統合して編集されたのが86年後半であってみれば、Osho「神秘家の道」がウルグアイで語られた時代とほぼ同じと言える。
松澤--神秘思想、神秘哲学、神秘学と神秘主義とは違っていて、神秘主義とは、神秘体験を重視し、その神秘体験を自覚的に発展させた神秘思想、神秘哲学をもつとともに、神秘体験にいたる修行形態をもその中に持つ、ひとつの実存様式をさしているわけでしょう。通常の自己を超えた絶対者との神秘的合一。その神秘体験により脱我的に絶対者が真の自己の根拠となり、内面に向かって無限の深まりが開かれる。p239「ニューエイジ・サイエンスの地平」
語ろうとすれば、語ろうとするほど、するりと逃げていく世界がある。語りえないものを語ろうとする努力や試みもあってしかるべきだが、最初から語りえないと断定もできない。しかし、語る、という行為と、いわゆる神秘は、まったく別ものだ。思想や哲学ではなく、また体験というカッコつきの限定ではなく、「神秘家」とはいかなる者をいうのであろうか。
一連の吉福伸逸関連の中の一冊だが、当初は批判的以外には読めなかったこの本も、時代背景を理解する上では、貴重な資料となりつつある。あるいは、当時のアメリカなどの状況をレポートしている前半はともかくとして、より話題を内面世界にしぼりつつある後半においては、素直におちついて読んでみれば、話題になるきっかけもたくさんある。とくにカプラやウィルバー、ライアル・ワトソン、グロフなど、一連の翻訳本の再読の必要を感じたりする。なぜか、ドンファン・シリーズも含めて。
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