宇宙家族ヤマザキ 妻から届いた宇宙からのラブレター
「宇宙家族ヤマザキ」 妻から届いた宇宙からのラブレター
山崎大地 2010/12 祥伝社 単行本 280p
vol.3 No.0261 ★★★☆☆
「宇宙家族ロビンソン」を連想するようなタイトルだが、決してSFドラマではない。女性日本人宇宙飛行士・山崎直子さんのおつれあいさんが書いた、実話である。表紙には、これ見よがしに、iPhoneの画像が大きく載っている。へぇ、iPhoneを持ってスペースシャトルに乗ったのか、と思ったが、そうではない。
このとき妻が使っているメールアドレスは、宇宙飛行士が宇宙滞在中に使う特別なメールアドレスである。なぜ特別なメールアドレスを使っているかというと、もし飛行中に通常の地上勤務用のアドレスを使うと、飛行中に友人知人同僚親戚などから膨大な数のメールが届いてしまうし、地上での普段の仕事上のメールもむやみやたらに届いてしまう。
そのため、それだけでスペースシャトルや国際宇宙ステーション用の通信回線がパンクしてしまう可能性があるのだ。そこで、事前に限られた人のメールアドレスリストをNASAに提出しておき、そこにリストアップされているメールアドレス宛に事前にNASAから確認メールが送信され、そのやり取りが確認されたアドレスだけがその特別なメールアドレスとの送受信ができるようになっている。
いずれにしても、宇宙から普通に自分の携帯電話にメールが届き、それに返信すると、スペースシャトルや国際宇宙ステーションに普通にメールの返事が届く時代になったのだ。これは携帯電話で宇宙にいる家族と普通に話ができるのと同じように画期的なのだ。あらためて、地球近傍の周囲軌道まではすでに人間が普通に活動できる領域になりつつあることを実感するのであった。p207「きぼうの未来」
宇宙からのメールをiPhoneで受け取ったのだから、別にノートパソコンでも、ディスクパソコンでも同じことなのだが、この時代性を表現しようとして、iPhoneの画像を掲載したのだろう。それに、宇宙から直接自宅に電波を飛ばしたのではなく、一旦NASAに流れた電波をインターネットに転送したのであろうが、それでも、宇宙と話せるというのは、いまから20年前に外国とメール交換できるようになったのと同じくらい画期的であると言える。
それに引き換え、山の椒エコビレッジのことを考える。今時、地球上にいるのであれば、ケータイやスマートフォンを通じて、常に会話やメールを交換することが当たり前であってほしい、という期待が高まっている。まだ未確認だが、各社のメールやケータイ通話が、かの地において可能であるのだろうか。ネット接続はどうなのだろう。もしその空間に長時間いるのであれば、ネット接続はどうしても必要になってくるだろう。
1986年1月にチャレンジャー1号の事故があった。発射台から飛び立ったばかりのスペースシャトルが打ち上げ直後に爆発したのだ。著者はこの時、中学一年生だった。
私はこの事故のニュースを見ていつか自分が大きくなったら必ず、今よりももっと安全な飛行機や宇宙船を作りたい、絶対に事故を起こさない乗り物を作りたい、そしていつか自分もそれに乗って宇宙に行ってみたいと思うようになったのだった。
実はそのとき、私の妻・直子もテレビの前で、宇宙飛行士を志すきっかけを得ていた。p18 「『宇宙家族』の出会いは必然」
そうか、あの時、中学生だった人たちが、すでに宇宙に行っているのか。私はあの時、アメリカの中学生たちが動揺して、全国の中学校にカウンセラーが派遣されたというニュースを見て、まだ日本ではカウンセラーという言葉すら一般的ではなかったが、自分はカウンセラーになりたいと思った。
この本、野口聡一さんの「宇宙飛行士が撮った『母なる地球』」と対をなすような一冊と言えるかもしれない。
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