現代建築家による“地球(ガイア)”建築<1>
「現代建築家による“地球(ガイア)”建築」<1>
乙須敏紀 2008/11 ガイアブックス/産調出版 単行本 287p
Vol.3 No.0262 ★★★★☆
エコビレッジとはなんだろうと、あらためて思いなおし、ウィキペディアを見てみた。まずでてきたのは、次の文言。
・ ヒューマン・スケールを基準に設計される。
・ 生活のための装備が十分に備わった住居がある。
ヒューマン・スケールを基準に設計される、という言葉の響きはなかなかいいが、いまいち抽象的過ぎる。2番目、生活のための装備が十分に備わった住居がある、というのは、逆によくわかりやすい。4万坪の土地がある。起伏に富んでいるし、利用方法はさまざま考えられるだろう。しかし、まずそこに暮らすとすれば、「家」が必要だろう。そして、その家には生活のための装備が「十分に備わって」いなくてはならない。
自分のなかのコミューンやエコビレッジというイメージがある。そして宮城蔵王・川崎町の山の椒エコビレッジという現実の土地がある。この二つを結びつけていくには、さてこれからどうすればいいのだろう。自分がその地に立つこと、そこで暮らすことをイメージしなくてはならない。
その土地に車で行くだろう。日帰りならそれでまた車で帰ってくるので問題ない。もし、一晩そこですごすとしたら、車の中に寝ることもかのうだろうし、長いこと使っていないシュラフもまた役に立つだろう。
数日その地に留まるとしたら、テントが必要になるだろう。これもちょっと大型ハウス型のテントが物置に眠っている。また活躍する機会が訪れたのだ。でも、もっと長期に暮らすとなると、テントはまずいだろう。ましてや暖かい夏ならともかく、秋や冬となったら、テントでビバーク生活は現実的な話ではない。
住居をつくらなくてはならない。それも夏の間に。ログハウスというのがなかなかカッコイイ。土地に生えている木や、地域で伐採される格安の間伐材を購入して、最低限の拠点を作ろう。だが、機械も必要だろうし、道具も必要だ。屋根はどうしよう。先人たちのアドバスが必要になる。それにログハウスは一日ではできない。
一番簡単な方法は、車でキャンピングカーやトレーラーハウスを持っていって据えつけてしまうことだ。安いものだと、数十万円の中古のものが手に入る。個人やカップルなら短期間の「定住」はこれでできるはずだ。湧水をホースで車まで引っ張り、100ボルトの電気を引き、プロパンガスを設置すれば、まずまず生活できる。テレビの電波はどうだろう。ワンセグは視聴できるようだ。
キャンピングカーには、据え附けのトイレが付属でついているものがある。カセットトイレだから、いずれはたまったものをどこかに捨てる必要がある。もちろん、近くの雑木の中に穴を掘って簡易トイレもつくることができるだろう。だが、夏だとハエが飛ぶかもしれない。いずれは考えていかなくてはならない。女性が安心して使用できるトイレをつくらなくてはならない。
そうこうしているうちに「生活のための装備が十分に備わった住居」に次第次第に近付いていくだろう。だが、それだけで「エコビレッジ」は完成したのだろうか。ひとつひとつのプロセスが学びであるならば、このエコビレッジには、究極というものはない。
さて、「マルチバーシティ・ジャパン事業」の企画書を読んでいて気になるところがある。
■デザイン構想
【第2ステップ】
●適正規模の「マルチバーシティ・ジャパン」の拠点を創設。
緑豊かな美しい庭園の中に、小川が流れ、
環境と調和する癒しと充電のためのモダンな建築施設。
施設内には40~50人が集え、防音設備のグループ用大ホールを中心に、
個人セッション用の部屋と、シャワールームやお風呂、
キッチン、宿泊施設、憩いのひとときを過ごすことのできるガーデン、
水場を擁した、ゆとりのあるスペース。
快適に過ごせるように工夫されたホテル並のクオリティ。
建築素材には天然木や大理石などの本物素材を使い、
エコロジカルな先端テクノロジーとパーマカルチャーの発想を
取り入れた未来的設計で、マルチバーシティのビジョンを
象徴するランドマークへ。 mixi「マルチヴァーシティ」コミュより
4万坪というスペースは「40~50」人が暮らすには「適正規模」だと言える。緑豊かではあるし、美しい庭園の中に、小川が流れるだろう。そして建築と調和する癒しと充電のためのモダンな建築施設が、できる可能性は十分ある。しかし、快適に過ごせるように工夫されたホテル並のクオリティ、というところはかなり引っかかる。
本当にホテル並みのクオリティが必要なのか、ということと、ホントウにできることなのだろうか、ということだ。現在は、テント暮らしからしか始まらないのだ。今は夢また夢のお話でしかない。
しかし、開発途上で放置されてしまった30年間を経て、すでに再起をかけて7年間、しずかにこの地は、その眠りから覚めつつある。これから何年も、何十年もかけていけば、ホントウに「ホテル並みのクオリティ」のエコビレッジができる可能性はゼロではないのだ。
さて、そんな目でみるとき、この「現代建築家による“地球(ガイア)”建築」は、実に目を見張らせるような斬新なデザインで埋められている。いずれ、山の椒エコビレッジにも、このような現代建築デザイナー達がやってくるだろう。そして、この地にこそ可能な自然と調和した建築を作ることになるだろう。人間と地球が一体化するような、最も自然な家ができるに違いない。
ガイアとは
地球上の全ての生命を丸ごと活かす地球環境そのものです。ガイアブックスは人間と地球(ガイア)を含めた全ての生きものの自然生命エネルギーを接続可能にしていけるナチュラルライフを支援していきます。
ガイア(地球)建築とは、自然環境の中で住まうこと。
地球に元からある天然素材を組み合わせ、その質感を、住宅建築の中に活かすことは、住宅に比類なき優雅さを付与する。
地球と人類、今ほどこの根源的な関係が問われている時代はない。本書で紹介する作品群は現代建築家によるその解答の一部である。
第1部建築、第2部インテリアという2部構成の中で、建築が切り開く地球と人間の新たなる関係が見えてくる。 表紙見返しより
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