聖なる地球のつどいかな <1>
「聖なる地球のつどいかな」 <1>
ゲーリー スナイダー (著), 山尾 三省 (著) 山里勝己(監修), Gary Snyder (原著) 1998/07 山と溪谷社 単行本: 287p
vol.3 No.0252 ★★★★★
山尾 僕たちが提供されたのは険しい急斜面の山が主ですが、面積は13町歩(13万平方メートル)もありました。急斜面といえども、それだけの山があれば、そこにまた新しい小さな村を作れるかもしれない、と僕は考えました。実際のところ、それから20年経った今は、16世帯50人ほどの新しい人が住む、小さな村ができてきました。p27「私たちはなぜそこに住むようになったのか」
思えば、急斜面における十数町歩とは、ケースXとほとんど同じような状況だ。そこに16世帯、50人が住んでいるということだから、まさにイメージどおりの規模となる。周囲の環境や住む人たちの意識の違いがあるからなんとも言えないが、単なる「エコビレッジ」という言葉だけで遊んでいる自分がちょっと恥ずかしくなる。
山尾 ここは標高1000メートルくらいですか?
スナイダー ちょうどそのくらいですかね。また泉があちこちにあり、井戸がきれいに掘れるところでもあるんです。シカもたくさんいる豊かな土地です。あとでわかったことなんですが、ここは高度と水と雨の量から見ると、森に適した完璧な土地なんです。アメリカにおいて最も上質で優れた森林地帯なんですよ。p71「シエラネバダの森」
三省が屋久島に入ったのは77年の4月。スナイダーがカリフォルニア州シエラネバダの森に住むようになったのは1970年の5月。ふたりとも、土地に入るのは、やはり春がよさそうだ。もっとも、ふたりとも数年前から、その土地周辺について模索を始めている。本格的始動には4~5年はかかるのだ。
山尾 どのくらいの広さですか?
スナイダー 100エーカー(40万平方メートル=40町歩)ぐらいでしょうか。日本の広さの尺度で100エーカーがどのくらいの大きさか分かりませんが、あとで一緒に歩いてみましょう。でもここの土地を歩くにはとても時間がかかります。とにかく広いんです。40分から1時間、あるいはもっとかかるかもしれませんね。p72「シエラネバダの森」
100エーカーというと、三省の住んでいる土地の4倍、甲子園球場にしたら、約40棟分くらいか。単純に比較はできないが、とにかく広い。このほか、この本の中には具体性が多く、とても感動的で、一気に読んだ。
アメリカ現代詩の一大潮流であったビート派の詩人として、アレン・ギンズバーグ等と共にその人生と詩を展開してきたゲーリー・スナイダーは、シエラネバダの山中に住むようになった1970年代から次第に<場(プレイス)>の感覚を深めて、生命地域主義(バイオリージョナリズム)という新しい世界観を確立するに到った。13p 山尾三省「はじめに」
昨日読んだスナイダー「惑星の未来を想像する者たちへ」の英語原題は「A Place in Space」だ。この<場(プレイス)>という言葉に込める二人の意気込みが伝わってくるようだ。私は三省とは一度しかあったことがなく、それは1991年の国際環境心理学シンポジウム「スピリット・オブ・プレイス」でのことだった。
二人の対談は1997年3月にスナイダーのシレラネバダにあるキットキットディッジーで二日間にわたって行われた。この本は一貫して<場(プレイス)>について語りあわれた本と言っても過言ではない。
三省も、ナナオも、ポンもいなくなった今、地球にはどんな <場(プレイス)>があるのだろうか。この本、英語原題は「Great Earth Sanga」となっている。
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