パーマカルチャーしよう! <1> 愉しく心地よい暮らしのつくり方
「パーマカルチャーしよう!」 <1>愉しく心地よい暮らしのつくり方
安曇野パーマカルチャー塾/糸長浩司 2006/09 自然食通信社 単行本 147p
Vol.3 No.0276 ★★★★★
パーマカルチャーは、ひとつの重要なキーワードになりつつある、ということは分かった。そして、その本質的な部分は、必ずしも、特別なことでもない、ということもわかった。
パーマカルチャー。どこか新鮮な響きを持つこの言葉は、パーマネント(持続的・永久の)、アグリカルチャー(農業)、カルチャー(文化)を合わせた言葉です。1970年代、タスマニア大学で教鞭をとっていたビル・モリソンとデビッド・ホルムグレンによって体系化された実践的な学問で、発祥の地オーストラリアでは学校教育にも取り入れられています。生態系が持つ生産力を最大限に活用し、多種多様な要素を有効に配置すること。生態系を成す一因として(持続可能な)環境を自らつくり出していくことが重視されています。p3
関係書を読み進めていくと、このフレーズは何回となく出て来る。なかなか魅力的な食いつきであり、どこか新鮮で、どこか魅惑的でもある。しかしながら、よくよく考えてみれば、この本に展開されているような「実践」とは、つまりは昭和30年代あたりまでは、ごく普通に身の回りで行われていた生活スタイルのことなのではないだろうか、と思う。
農業があるが、決してモノカルチャーではなかった。コメ作りは確かに中心ではあったが、菜の花畑があり、麦畑があり、レンコンを作っているところもあれば、ヨシが茂る湿地帯もあった。屋敷林があり、曲がりくねった砂利道が、どこまでも続いていた。
意識的に、あの時代まで遡ってみようという取り組みはそれなりに面白いが、時間軸は決して過去には遡らない。車を使い、電話で話し、インターネットで世界とつながる、というライフスタイルは、もはや人間生活には欠かせないものになっている。
この本、たくさんのカラー写真が続いて、実に美しく、分かりやすく、やさしい本だ。そして、この本のなかには、イサカも紹介されており、地域通貨イサカアワーについて紹介されているように、経済についての取り組みも多く書かれている。
日本のネットワークもたくさん紹介されており、なんだ、こんなにいっぱいあるなら、もう「できあがっている」ところに参加したほうが、早いんじゃぁないか、なんて思ってしまう。いやいや、これからだ、自分は自分でやろう、とは思うが、ここで敢えて「パーマカルチャー」を錦の御旗として、唯一のシンボルにするのは、すこし面映ゆいなぁ、と思う。
そして、まぁ、あえていうなら、いわゆるゲイリー・スナイダーでいうところの「野性」がすこし欠けている。そして、スナイダーで言うならZENという言葉に込められている「スピリチュアリティ」への手掛かりが、すこし薄まっている感じがする。
多くの人の共感を得ようとすれば、広く浅くになってしまうし、深い世界へと進み過ぎると、暗く、狭い道へと歩んでしまうこともあり得る。妙に明るく作られているこの本、自然食通信社の本だからなのだろうか。
山の椒エコビレッジ、という具体的「場」を与えられた現在、さまざまな情報は、取捨選択され、よりリアリティのあるものから次第に像として結実していくことだろう。どれほど魅惑的なものと思えても、薄っぺらな流れになってしまっては、ついには根なし草としていつかは流れて消えてしまう運命だ。ここはじっくり、ゆっくり腰を据えていこう。
この本もまた、繰り返し再読を重ねていくことによって、持っている意味が違ってくるだろう。
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