« 図解 田舎暮らし 目からウロコのさんぶん図解 | トップページ | 里山ビジネス 玉村豊男 »

2011/03/04

田園生活の教科書 辛口のカントリーライフ入門書

【送料無料】田園生活の教科書
「田園生活の教科書」 辛口のカントリーライフ入門書
斉藤令介 2001/04 集英社 単行本 269p
Vol.3 No.0278 ★★★★☆

 私が生まれ育った地は、町名にも「田」がついており、地区名にも「田」がついており、大字の中にも「田」がついているような、まるで田んぼのなかの田んぼ、といった名前である。地名多しと言えど、これほど「田」が重なることも、そう多くはあるまい。そう、私は田園生活の中で、生まれ育ったといえる。

 しかるに、著者が挑戦しているライフスタイルは、決して「田園生活」とは言えない。むしろ、私から見れば、「原野」に近い。その証拠にこの本には「田」については何もでてこない。そして、「生活」というわりには、家族や奥さんについても何もでてこない。これはむしろ「開拓」や「冒険」と言っていい。「原野開拓の教科書」あたりのネーミングがふさわしい一冊である。

 私がそう思ったのは、この本は目的志向的には「図解 田舎暮らし 目からウロコのさんぶん図解」とほぼ同等の内容なのに、特徴的に「狩猟」について、充実した内容が書いてあったことが、ひとつの大きな理由である。

 私のもっとも好きなのが狩猟である。このために私の人生はまわり、田園生活を始めたのも狩猟と魚釣りのためだった。どうしてそんなに狩猟が好きなのかとよく聞かれるが、「それがすべてなのだ」と答えるよりほかにない。

 人間は歌をうたって満足する人、料理に生き甲斐を感じる人、文章を書かずにはいられない人、山に登ることで心が打ち震える人といろいろだが・・・・・。私は之に入り獲物を求めている時が私なのである。

 大自然は多様性という人類や地球を守るシステムを作り出した。この多様性の大切さを知らない環境保護論者たちが、狩猟者を攻撃しているが、ナンセンスな話である。人類が支えてきた大事な要因の一部が、狩猟だったんは厳然たる事実だ。地球上の生物のほとんどが狩猟によって生き延びているのも事実だ。

 だが狩猟者は喧嘩を好まない。日本にいる18万人の狩猟者は、狩猟をしているから、男としての欲望、狩猟欲や攻撃性が満たされている。欲求不満などないのだ。むしろ狩猟の代償行為を行っている人々が、欲求不満から狩猟を攻撃するのだろう。

 野鳥をみるだけの人々、動物を見るだけの人々。彼らは野山に分け入り、獲物を求める狩猟行為をしながら、永久に射止められな、教育や宗教的思想によって抑圧された人々なのだろう。それが多くの人々が驚く暴動まで起こす、一部の動物保護団体の攻撃性の要因と私は考える。p103「田園生活の楽しみ 狩猟」

 狩猟をする人々を私は知っている。秋の収穫物に群がるスズメたちに散弾銃を打ち込むひと、網をかぶせる人、害獣にさえなるイノシシを駆除する人、釣りをする人、熊祭りをするアイヌの人々、ウィークエンドに山間に入り、猟犬と共に獲物を追いかけるレジャー派の人々など。クジラを取る会社に勤めていた友人もいるし、農閑期に野バトを追いかけて、いつもおいしい鳥肉を届けてくれた親戚のじいちゃんもいた。

 しかし、私にはどうもついていけない。生家の敷地内には100坪ほどの池が二つあって、近所の子供達の釣り堀になっていたのに、私と言えば、どうも釣りが苦手だった。ミミズやゴカイという餌が嫌いだったせいもあるが、どうも生ものを追いかける気力がない。

 別にベジタリアンではないが、過剰に生物を追いかける生活を素晴らしいとは思わない。クジラを取る会社に勤めていた友人も、鯨肉解体作業をしていたが、家族からは「テッポウさんにはなるな」と言われていたらしい。

 モリを打ち込む「テッポウさん」は、他の人たちより倍の収入を得るという。しかし、友人が言うには、テッポウさんたちの生活は決して理想的ではないという。なにかかにかの障害があるらしい。べつに因果応報を考えるわけではないが、好んで生物を殺し続ける立場には、私ならなりたくない。

 むしろ、私の狩猟欲は、素敵な女性を追いかけたり、営業職で、有力な顧客をターゲットとしてマーケティングし続けるところで、満足しているのではないだろうか。ライフル銃を持って原野を走り回らなくても、別に私は、他の人々に対して攻撃的になっているとは思わない。

 田園生活をしている人で、犬を飼っていない人はいるのだろうか。私にとって犬は仲間でありパートナーと思っている。p216「犬の飼い方」

 子供時代は、犬のいない生活は考えられなかった。猫もいた。牛も、ニワトリも、ブタも、馬も、ヤギもいた。成長して生家を離れ、町で暮らし始めてから、子どもたちのためにと、柴犬を13年ほど飼った。だけど、数年前に老衰で死んでからは、次の犬を求めようとは思っていない。

 散歩が一緒にできるとか、癒されるとか、いろいろあるらしいが、私は私一人で散歩したほうが楽だ。癒しの相手を動物に求めようという嗜好性も薄い。山の椒エコビレッジという具体的な「場」を与えられ、なるほど、犬がいるとサマになるな、とは思う。だけど、その時は、義弟のところからでも、元気のいい雑種犬を借りてこようと思う。今のところはそれで十分だ。

 その他、この本は確かに「辛口」ではあるが、タメになることがたくさん書いてある。一読に値する。経験者は語るである。しかし、通常のヒューマンサイズなら、ここまで突出しなくても、十分人間らしく生きていける。この本は決して「田園生活の教科書」ではない。そういう意味では逸脱している。

|

« 図解 田舎暮らし 目からウロコのさんぶん図解 | トップページ | 里山ビジネス 玉村豊男 »

39)メタコンシャス 意識を意識する」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 田園生活の教科書 辛口のカントリーライフ入門書:

« 図解 田舎暮らし 目からウロコのさんぶん図解 | トップページ | 里山ビジネス 玉村豊男 »