屋久島の森のメッセージ ― ゆっくりと人生を愉しむ7つの鍵 山尾三省
「屋久島の森のメッセージ」―ゆっくりと人生を愉しむ7つの鍵
山尾 三省 (著) テラウチ マサト(撮影) 2000/05 大和出版 単行本 190p
Vol.3 No.0317 ★★★★☆
1)出版されたのは2000年5月。1938年生まれの三省、還暦も過ぎて、一般社会に向けた最後のメッセージの色合いがある。翌年2001年8月にガンで亡くなる。
2)7つのキーワードとは、土、水、火、空気の四大、そして、森、時間、心の三つ。更に、「生活誌」として、屋久島の四季、春、夏、秋、冬、の折々のシーンが描かれている。
3)三省の人生を、スナイダー流に二期に分けて表現しようとすると、「ロング・ヘアー」としての三省、と、「再定住者」としての三省がいるだろう。この本においては、「再定住者」としての三省がほとんどであり、濾過された、すっきりした三省がいる。
4)20世紀文明は石炭と石油の火によって支えられてきましたが、第三の火としてその後半から原子力の火が登場してきました。
この巨大なエネルギーを放出する火は、核兵器として利用されることに象徴されるように、暴発すれば一瞬の内に何十万、何百人という人間と全生物を焼き尽くします。原子力発電にそのエネルギーを管理することはできないという点でぼく達に大きな不安をもたらすと同時に、プルトニウムその他の新たな猛毒の放射性物質を絶えず排出しつづけるという宿命を持っています。p48「四つのおおいなるものへの尊敬」
5)当ブログが、ここに及んで三省の再読モードに入ってしまったのは、当ブログのテーマが「森の生活」となったからだった。「再定住者」としての三省の「森の生活」を確認したかったのだろう。
6)情報のグローバル化とネットワーク化が進めば進むほど、東京も含めて、これからは日本中のすべての地域がそれぞれに日本の中心になり、世界中のすべての地域がそれぞれに世界の中心となっていくのですから、自然は田舎に、文明は都市にというあまりにも単純な区分法(ゾーンニング)からは、ぼく達はそろそろ脱却しなくてはなりません。p160「三っつの大いなるものへの尊敬」
7)「再定住者」として屋久島の森で後半生を送った三省にしてみれば、であるならば都市に留まり、都市を森化することを目的とする人生もあったのではないか、とも思う。だが、前半生の「ロング・ヘアー」の三省の時間があってみれば、屋久島もまたよいバランスであったのだろう。
8)屋久島にいても、そこに「隠遁」しているわけではなく、そこにいながら、視線は都市にも向いていて、屋久島にいるからこそ発信することができるメッセージを、三省は送りつづけた。
9)一生をかけて果たすはずだった願いの数々は、もう間に合わない年齢までに、いつのまにか至ってしまいました。若い日の一日一日をおろそかにしたせいで、このようなぶざまな事態になってしまったと悔恨するのです。
そうであるにもかかわらず、また新たなる夢を先に見て、死ぬまでには何とかなるだろうと、また今日も一日をおろそかにしている自分が、ここにいます。p183「三つの大いなるものへの尊敬」
10)腰の低い三省、それでも鋭い指摘をし続けた三省。屋久島の森からの、最後のメッセージ。「ゆっくりと人生を愉しむ7つの鍵」。コンパクトに収められた一冊に込められた意味は深い。
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