原郷への道 山尾三省
「原郷への道」
山尾 三省 (著) 2003/09 野草社 単行本 253p
Vol.3 No.0328 ★★★★☆
1)ビートルズにも、いわゆるホワイトアルバムというものがあったが、この本は、まるで三省のホワイトアルバムであるかのように、装丁が真っ白で、文字だけがくっきり印刷されている。
2)この本には、九州なかんずく鹿児島の小さなメディアに連載した文章に加え、屋久島の季刊誌に寄せた文章もまとめられている。
3)出版されたのは2003年であり、三省没後2年が経過している。晩年の三省、というには、あまりにも若々しかった三省だから、まだまだ寂滅した雰囲気はないが、それでも、ロングヘアー時代のような、事象を時間順に追いかける必要は感じない文章が続く。
4)この本においては、事象というより、より心象に近いものが綴られており、三省の文の、さらにその向こうに立っている三省の「原郷」へとの連なりを感じる。
5)「自己への旅」というタイトルに似て、「原郷への道」もまた、矛盾をはらんだ表現だが、ホワイトカバーと相まって、より三省のエッセンスを思わせる。
6)この本においては、コンピューター、コンピューターと、やたらとこの言葉がでてくるが、書かれた年代がインターネット革命が起きた1995年以降の文章が多く集められていることを考えると、当然のことと言える。
7)コンピューターを否定はしない(できない)ものの、もろ手を挙げて歓迎しているわけではないことが、よくわかる。
8)もちろん、それと対峙してバランスを取るべきものは何なのか、各人は知っているつもりではいるのだが、いつの間にか、時流に流されてしまう、というのは本当のことだ。
9)南無瑠璃光 樹木の薬師如来
われらの沈み悲しむ心を 祝わしたまえ
その立ち尽くす 青の光に
われらもまた静かに
深く立ち尽くすことを 学ばせたまえ
南無瑠璃光 風の薬師如来
われらの閉じた呼吸を
解き放ちたまえ
その深い 青の道すじに
解き放ちたまえ p91「樹木と風」
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