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2011/06/22

南の光のなかで 山尾 三省

南の光のなかで
「南の光のなかで」
山尾 三省 (著) 2002/04 野草社  単行本 259p
Vol.3 No.0321 ★★★★★

1)この本、2002年の4月に出版されているが、2001年8月に亡くなった三省の遺書集とも言えるもので、著者自身が本の内容に関わった最後の本となるのではないだろうか。

2)「あとがきに代えて」は、妻である山尾春美さんが書いており、三省最期の日々が、短い文章の中にも、しっかりと記されている。

3)この本も野草社からでており、「ロングヘアー」時代の三省をまとめた「聖老人」の初版こそ関わらなかったが、その後、一貫して、山尾三省---石垣雅設というタッグが、後半生の「再定住者」としての三省を支えたのだった、と再認識した。

4)第一の遺言は、神田川の水を飲める水に再生してほしい、ということである。第二の遺言は、脱原発、代替エネルギーを開発してほしい、ということだ。そして、第三の遺言は、戦争をするな、「南無瑠璃光・われら人の内なる薬師如来」ということである(意訳)。

5)私個人は、この第三の遺言に痛く共鳴する。

6)私には、現在の住処から数百メートル、母の生家に縁のある樹齢1300年のカヤの木が思いだされる。その巨大な老樹は、ちいさな祠を持っており、その中から、瑠璃光薬師如来がでてきたという云われから、お薬師さんと呼ばれている。

7)私にはこの巨大なカヤの木が、屋久杉には樹齢では及ばないにせよ、古代からの生命を保っている存在としては、まったく同じものに見える。ましてや、三省が「南無瑠璃光・われら人の内なる薬師如来」と言った、その言葉の意味をそのまま受け継ぎたいと思う。

8)もともと数十年前からうすうすとは気がついていたが、この木は何か、どこかでつながっている。この本で、最期の最期に、三省がこの言葉を遺したことが、私にとっては、金科玉条のように感じられる。

9)そもそも、三省のように信仰深くない私は、樹齢1300年のカヤの木にあっても、いつもぶつぶつとなかなか素直な気持ちにはなれない男なのだが、これからは、すくなくとも、このカヤの木の前に行ったら、かならず三省を思い出すだろう。

10)そして、「南無瑠璃光・われら人の内なる薬師如来」と、静かに唱えてみようと思う。三省ありがとう。

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