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2011/06/23

ザ・ダルマ・バムズ (禅ヒッピー、改題)

【送料無料】ザ・ダルマ・バムズ
「ザ・ダルマ・バムズ」  (禅ヒッピー、改題)
ジャック・ケルアック/中井義幸 2007/09 講談社 文庫 497p
Vol.3 No.0327 ★★★★★

1)主人公のひとり、ジェフィ・ライダーは、ゲーリー・スナイダーがモデル、ということになっている。小説だから、当時の状況をどこまで反映しているか定かではない。

2)しかし、ストーリーの流れや、状況描写から考えると、後のスナイダーや、今日のスナイダーへは、直線的に結びついてくるので、当ブログ、スナイダー関連リストの中では、やはり、欠かせない重要な一冊ということになる。

3)原文は1958年に出版されている。邦訳は1975年に「禅ヒッピー」として小原広忠・訳がでて、1982年に「ジェフィ・ライダー物語--青春のビートニク」として、中井義幸・訳がでた。その後2007年に改訂され「ザ・ダルマ・バムズ」となった。

4)思えばかなり古びた小説ではあるが、これだけ長きにわたって読まれ続け、ケルアック人気が下がらないということは、すごいことだな、と思う。

5)一過性の風俗として見られてしまったロング・ヘアーたちの、もともとの明るい問題意識は、21世紀の今日においても、的確に受け継がれているということになろう。

6)本文には、スナイダー(ジェフィ・ライダー)の生い立ちや両親や妹、叔母などの描写があり、興味深い。

7)「ヤブユム」など、かなり仏教に対する理解がアメリカ的で、混交していると思われるが、むしろ、この小説が書かれた50年後の今日の世界的な仏教の広がりを考える時、かならずしも、皮相なとらえ方、とばかりも言えないようだ。

8)「こいつは神聖な儀式なんだぞ。チベットの寺でやるんだ。居並ぶ坊さん達が経を唱えている目の前で、今おれがやっているような工合にな。すると善男善女が一斉に、
『オム・マニ・パドメ・フム』
と念仏を唱える。こいつは『空なる暗闇の中にひらめく有難き稲妻』という意味だ。
p56

9)翻訳の仕方で、酔っ払い小説なのか、ジャンキー小説なのかわからない部分があるが、風俗的な面もあり、精神性の面もあり、そのミックスの度合いが、ケルアックが今だに人気を誇っている理由なのだろう。

10)330pあたりでは、三帰依文がでてくるが、最初、ブッダム、ダンマム、サンガムの順なのに、次はブッダム、サンガム、ダンマム、となる。以前からこの順番が気になっている当ブログだが、おおらかなとらえ方として、これはこれでありなのだろう。

11)「ああ、いずれにせよ、東と西は出会うわけだよ。なあ、東と西が遂に合体する時、どんな世界大革命が起こるか考えてもみろよ。その仕事を、おれたちは今ここで始めるのだ。世界中の何百万人とも知れない人間が、リュックサックを背負って、山奥を歩きまわり始め、ヒッチハイクをしながら、御言葉を万人にもたらしていく様を想像してみろよ」p396

12)私は16歳の時、ヒッチハイクを始めたが、それはこの小説が出て12年後のことだった。

13)ゲーリー・スナイダーと、山尾三省の比較、という流れのなかで、この小説をめくってみた。

     オム・ニ・パドメ・フム

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