深いことばの山河 宮沢賢治からインド哲学まで 山尾三省
「深いことばの山河」 宮沢賢治からインド哲学まで
山尾三省 1996/06 日本教文社 単行本 231p
Vol.3 No.0320★★★★☆
1)ネットやメディアは、大震災や原発事故についての報道で満載だ。その震源地により近い場所に住んでいる我が身にしてみれば、むしろ、そのようなニュースに耳をそばだてて、一喜一憂すべき時なのかもしれない。
2)この時期に三省を読みなおすとはどういうことなのであろうか。以前より計画としてはあったものの、なかなかそのチャンスがなかった。この機会をなくすと、もう後がない、ということでもないのだろうが、こういう時期だからこそ、三省をめいいっぱい読んでおく、ということで、大震災や原発事故とバランスを取っている自分がいる。
3)かと言って、走り読みしたところで、三省の奥深いひとつひとつの言葉を全部理解できるはずもなく、今はただ、全体像の中の、ひとつひとつのパーツを埋めるように、山尾三省という人の人生を俯瞰しながら、みようとしている。
4)そして思うことは、身辺のあれこれを常に自らの文章に書き連ねた三省において、一冊一冊が、新しい事どもが書きしるされてはいるが、外況に反応や感応している三省はいるものの、三省そのものは、ロングヘアーの時代から再定住者となった後期まで、ある意味、一貫した視点と人生観を持っていた人であり、そのような人生を生きた人だったな、ということだ。
5)そういう意味からすると、数十冊ある三省関連リストのどの本を読んだとしても、一応、三省を読んだ、ということになり、縁ある数冊を読めば、それなりに、人物と作品のテーマが浮きあがってくるようでもある。
6)この本は、96年6月に発行されており、月刊誌などに別々に掲載された文章をこの時点でまとめて、一冊の本として書きなおしたものであり、時代背景から、麻原集団事件などについて触れている部分もあり、興味深い部分も多い。
7)宮沢賢治やウパニシャッド、日本の祖師方についてのコメント群も、いつもの三省が、誠実に、彼なりに自らの思想を投影していると言える。道元についてのコメントなども格別にうれしい。
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