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2011/06/09

翼ある生命(いのち)―ソロー「森の生活」の世界へ

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「翼ある生命(いのち)」 ソロー「森の生活」の世界へ
ロバート ブライ (著), Robert Bly (原著), 葉月 陽子 (翻訳) 1993/11 立風書房 単行本: 198p
Vol.3 No.0297 ★★★★☆

1)森の中に自らのハウスを建てるとして、ソロー・ハウスと名付けるのがよかったか、スナイダー・ハウスと名付けるのかよかったか。それは悩むまでもなく、元祖ソロー・ハットにちなんでソロー・ハウスにすべきだった、と確信する。

2)スナイダーは、キットキットディジーにおいて、いまだ健在であり、すでに40年の「再定住」生活を送っている。それは立派な定住だ。定住しがたい「場」における定住であったとしても、それは定住であり、定住には定住の良い点もあるだろうし、思わぬ陥穽もあるはずだ。

3)2年2カ月と2日で、ウォールデンの地を去ったソロー。通過者として、あるいは「逗留者」として、その地に留まったソローだからこそ感じ得たこともあるはずだ。そしてその短い期間だからこそ、ある局面については、実にシンボリックに物事を表わすことができる。

4)スナイダーは、その「家」にこだわるべきではないだろう。むしろスナイダーにとっての「家」は「地球」そのものであってしかるべきだ。決して家族生活を送るプライバシーが保たれた空間を、なにか特別なものとすべきではない。

5)さて、わがソロー・ハウスのこれからの行方は、というと。元祖ソロー・ハットに肉薄できるかどうかはともかく、「ハウス」という概念まで到達するには、ソローのイメージはどうしても有効だ、と思える。

6)問題はその後だ。現在の、1×4材を骨組みとして強化した大型テントで、実は個人的「森の生活」を送るのは十分なのである。雪深い森とは言え、風にさえ飛ばされなければ、十分冬を越せると判断する。

7)しかしながら、2年位は持つだろうが、40年は持たないだろう。数年のうちにその森を離れるのか、ついの住処をそこに見つけようとするのかでは、取り組みがおおいに違ってくる。当然だが。

8)ソロー・ハウスがソロー・ハウスで終わってしまうなら、それは一つの青年期の試み、ということでカタがつく。老年期にそれを思い立ったとするなら、青年期のやり直しにすぎない。

9)わがソロー・ハウスの次に待ち構えているのはなにか。スナイダーにちなんで言えば、ZENであろう。ソロー・ハウスからスナイダーZENへのステップを見つけることこそ、ソロー・ハウスの目的そのものだと言える。

10)孤独のうちに入ってゆきたければ、社会からだけでなく書斎からも隠棲しなければならない。読んだり書いたりしているとき、私はひとりでいるが、孤独ではない。ひとりきりになりたければ、星を見上げればいい・・・・・・自然の懐に抱かれていると、人は心からの悲哀に浸されているときでさえ、荒々しい歓喜が身内を駆け抜けるのを感じる・・・・  p11 ラルフ・ウォルドー・エマーソン「自然」より

11)ソローの師にして友人、エマーソンにおける「孤独」とはなにか。わがソロー・ハウスは人里離れた森の中にあったとしても、モバイル・ルーターWIFIを使ってネット接続するだろう。そこでは「孤独」をON・OFFできる。

12)スナイダーはもうすこし深く進む。ZENへと進む。ZENへといざなう。

13)雪が降りしきり、森で風がうなりをあげる冬の長い夜にはよく、この植民地が開かれた頃の入植者であり地主であった人物がぼくを訪ねてくる。ウォールデン池を掘り、岸を石で固め、そのぐるりに松の木を植えたと伝えられている人だ。彼は昔の話や新しい永遠の話しをしてくれる。林檎や林檎酒なんかなくても、陽気に笑い、気持ちのいい意見を交換して、ふたりで愉快な一夜を過ごすことができる。とても賢くてユーモアのある友だちで、ぼくは彼が大好きだ。ゴフやウェイリー以上に謎に包まれた人物で、死んだと思われているが、どこに葬られているのか誰も知らないのだ。169p「森の生活」「孤独」

14)森の中にハウスを作ろう、と思いたった時にはソローが役立った。ここはソローにしかできない役割がある。しかし、森の中に足がかりができてしまえば、私なら、ここからZENへと進む。これからはスナイダーZENが役立つだろう。

15)自然よ、ぼくは望みません、
あなたの聖歌隊の長になりたいとは。
大空の流星や
天翔ける彗星になりたいとは望みません。
願うのはただ西風になること、
低きを流れる河のほとりの葦をそよがせる西風に。
隠れた場所をください、
そこでかろやかに駆けめぐれるように。
誰も知らふひそかな草原で
葦笛に吐息をもらさせてください、
でなければ、木の葉のさんざめく森で
静かな黄昏にそっとささやきかけさせてください。
あなたの子となり、
野性の森であなたの生徒となりたいのです、
ほかの場所で人びとの王となり、
心労の高貴な奴隷となるよりも。
あなたの曙の一瞬を楽しみたいのです、
街でみじめな一年をすごすよりも。
ぼくに静かな仕事を与えてください、
ただ願わくはそれがあなたの身辺で為す仕事でありますように。
p179 「自然」

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