「祈り」 山尾三省 <1>
「祈り」 <1>
山尾 三省 2002/09 野草社 単行本: 151p
Vol.3 No.0337 ★★★★★
1)「原郷への道」は三省にとってのホワイト・アルバムだろうし、「ぼくらの知慧の果てるまで」だって、デザイン的にはホワイト・アルバムだ。「島の日々」だって、色こそ黄色だが、三省イエロー・ページとは言えない。やはりホワイト・アルバムのひとつだろう。
2)しかし、これまでのところ、当ブログで読み込んできた三省ライブラリーの中においては、三省のホワイト・アルバムの白眉と記録されるべきは、この「祈り」であろう。
3)この「祈り」においてはタイトルの「祈り」という文字でさえ、型押しされているだけで、脱色化されている。なんと、三省にはお似合いのことか。
4)しかし、残念なことに、この本は、三省が亡くなって一年後に出版されているものである。三省自身が、この詩の選定にあたり、自らがこの本を制作したのかどうかは、この本を読む限り、定かではない。
5)永遠の青い海
わたしは それである
わたしは そこからきた意識の形があるから
そこへ還る
意識の底がぬけて
そこへ還る
永遠の青い海 p15
6)「聖老人」で始まった三省追っかけの読書、あるいは、三省の人生が、この書で終わるとしたら、それはそれ、何の不足もない。なるほど、そういう読書であったのか。そういう人生だったのか。
7)「祈り」
南無浄瑠璃光
海の薬師如来
われらの 病んだ身心を 癒したまえ
その深い 青の呼吸で 癒したまえ
南無浄瑠璃光
山の薬師如来
われらの 病んだ欲望を 癒したまえ
その深い 青の呼吸で 癒したまえ
南無浄瑠璃光
川の薬師如来
われらの 病んだ眠りを 癒したまえ
その深い せせらぎの音に やすらかな枕を戻したまえ
南無浄瑠璃光
われら 人の内なる薬師如来
われらの 病んだ科学を 癒したまえ
科学をして すべての生命(いのち)に奉仕する 手立てとなさしめたまえ
南無浄瑠璃光
樹木の薬師如来
われらの 沈み悲しむ心を 祝わしたまえ
樹ち尽くす その青の姿に
われらもまた 深く樹ち尽くすことを学ばせたまえ
南無浄瑠璃光
風の薬師如来
われらの 閉じた呼吸を 解き放ちたまえ
大いなる その青の道すじに 解き放ちたまえ
南無浄瑠璃光
虚空なる薬師如来
われらの 乱れ怖れる心を 溶かし去りたまえ
その大いなる 青の透明に 溶かし去りたまえ
南無浄瑠璃光
大地の薬師如来
われらの 病んだ文明社会を 癒したまえ
多様なる 大地なる花々において
単相なる われらの文明社会を 潤したまえ
Om huru Chandali matangi Svaha p144
8)この詩を結句とすることもできるだろう。
このような人生を送った人が、山尾三省だった。
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