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2011/06/24

ここで暮らす楽しみ 山尾三省

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「ここで暮らす楽しみ」
山尾 三省 (著) 1998/12 山と溪谷社 単行本 335p
Vol.3 No.0329 ★★★★☆

1)この本には、月刊「アウトドア」誌1996年7月号~98年6月号に連載された文章がまとめられている。

2)この本のもっとも注目すべき部分は、スナイダーとの再会の部分であろう。1998年の二人の再会の部分は、「シェラネバダにて」というタイトルで前編と後編、二ヶ月に渡って掲載されている。また、のちに二人の対談は、「聖なる地球のつどいかな」(1998年/ 山と溪谷社)として単行本化されている。

3)ゲーリー・スナイダーが、読売新聞社主催の環境問題に関するシンポジウムに呼ばれて来日し、基調講演をしたのが(1996年)8月のことである。近頃はシンポジウムばやりで、いささかアレルギー感がないでもないが、古い友人であり先輩でもある人の発言なので、この頃はどういうことを考えているのか、と新聞に載った講演の要旨に目を通してみると、バイオリージョナル・生命地域主義、というあまりに耳慣れない言葉をテーマにして、話を進めていた。

 ゲーリーによれば、バイオリージョナルとは、ぼく達がこれまでのように自然をモノと見なして摂取することを止め、ぼく達人間が自然の一部であることを認識してその場所(地域)に住み直すこと、を意味しているようで、特に、その場所(地域)に新しい意識を持って住み直すことに重点を置いて話を進めていた。p89「山ん中の湧水」

4)そんな訳で久しぶりに三省は、キットキットディジーのスナイダーに1997年春、会いに行くことになった。バイオリージョナルは生命地域主義、と訳している。

5)ゲーリー・スナイダーについては、以前に少々触れたが、1974年に出版された「亀の島」という詩集で翌年ピュリッツァー賞を受け、昨(1996)年出版された「終わりなき山河」と題する詩集でさらにボリンゲン賞を受けた。
 その他にも数多くの詩集やエッセイ集を出しており、アメリカインディアンの文化とエコロジーと、文化人類学と東洋思想(特に禅)に基づいた彼の著作は、現代アメリカ社会に大きく深い影響を与えるとともに、その社会に根底からの変革を促す原動力ともなってきている。
p174「シェラネバダにて(前編)」

6)「ここで暮らす楽しみ」というタイトルは、どことなくヘルマン・ヘッセの「庭仕事の愉しみ」を思い出させる。

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