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2011/06/18

「亀の島」―対訳 ゲーリー・スナイダー ナナオ・サカキ <1>

亀の島―対訳
「亀の島」 対訳 <1>
ゲーリー・スナイダー(著)、ナナオ・サカキ (翻訳) 1991/01 山口書店 単行本 251p
Vol.3 No.0308 ★★★★★

 

1)ゲーリー・スナイダー関連リスト 

『リップラップと寒山詩』  ゲーリー・スナイダー・コレクション1(2011/10 思潮社)

『ザ・ダルマ・バムズ』ジャック・ケルアック(「禅ヒッピー」改題、1958年) 

『The Back Country』 (奥の国 1967年)

『地球の家を保つには』(Earth House Hold、1969年)

『亀の島』(Turtle Island、1974年)

『アメリカ現代詩ノート ゲイリー・スナイダー、仏教、宮沢賢治』 金関寿夫 1977/07 研究社出版

『野生の実践』(The Practice of the Wild、1990年)

『ノー・ネイチャー』(No Nature、1992年)

『惑星の未来を想像する者たちへ』(A Place in Space、1995年)

『終わりなき山河』(Mountains and Rivers Without End、1996年)

『ゲーリー・スナイダーと宮沢賢治についての覚書』 富山英俊 「現代詩手帖」1996年3月号

『聖なる地球のつどいかな』(1998年) (屋久島の詩人、山尾三省との対談集)

『神秘主義とアメリカ文学---自然・虚心・共感』 志村正雄 1998年 研究社

『アメリカ現代詩の愛語―スナイダー/ギンズバーグ/スティーヴンズ』 田中 泰賢 1999/08 英宝社

『自然と文学のダイアローグ―都市・田園・野生 (国際シンポジウム沖縄2003)』山里勝己・他・編 2004/09 彩流社

『場所を生きる』山里勝己 (2006年) (ゲ-リ-・スナイダ-の世界)

『絶頂の危うさ』(Danger on Peaks, 2007年)

『場所の詩学』山里勝己訳「異文化コミュニケーション学への招待」鳥飼玖美子他編みすず書房2011/12より抜粋 

『ゲーリー・スナイダー・イン・ジャパン』 「現代詩手帖」2012・7号 新潮社

『聖なる地球のつどいかな 』 山尾三省との対談 再刊新本 山里勝己監修( 2013/04 野草社/新泉社)

『For the Children 子どもたちのために』(2013/04 野草社/新泉社)

2) 巻末の2ページに渡るスナイダー自身の手による略歴が簡潔で、なおかつ、彼から見た場合の彼自身のストーリーとなっていて、それなりにかっこいい。翻訳のナナオのセンスが入っているのか、他所による紹介と、多少違うところが、関心深い。自然の情景をふんだんに取り入れた詩とともに、スナイダーの啓発的な散文が力強い。

3)「アメリカ」は確か西欧人アメリゴ・べスプッチにその名前を由来するが、思えば確かにあの大陸を「アメリカ」と称するのはいかがなものか。とするなら、「USA」にしてもおかしいことになる。なるほど、ネイティブな人々が行っていたように「タートルアイランド=亀の島」と呼ぶことのほうが圧倒的に妥当性がある。
 

4)”亀の島”の侵略者 合衆国は
世界中で 戦争おっぱじめる されば
立ち上がれ 蟻よ アワビよ カワウソよ 狼よ エルクよ
ロボットの国々から 君らの贈物を取り戻せ!
 p99「母なる地球の鯨たち」から抜粋

 
5)灰色ギツネ 雌
重さ 9ポンド 3オンス
長さ 尾つきで 39 5/8 インチ

開の忠告で
皮剥ぐ前に
まずは 般若心経
 p135「漁師を前に 仏陀の戒を説くべからず」から抜粋
 

6)産業による水と空気の汚染に対しては、重い刑罰を----”汚染は誰かの利益”なのだから。内燃機関と石炭、石油の使用を段階的に止めてゆく。汚染なしのエネルギー源、太陽や潮汐流等をもっと研究しよう。

 核廃棄物について、大衆を欺すのは止めさせよう。その安全な処理は不可能だから、今は原子力発電を計画すべきではない。
p189「四易」から抜粋

 
7)合衆国、ヨーロッパ、ソビエトそして日本は、エネルギー大量消費の中毒にかかり、化石燃料を貪り喰らい、注射し続ける。これらの国々は、石油の埋蔵量が先細りになるにつれ、自らの中毒を続けようと、恐るべき原子力エネルギーの賭に手を染める。ここに賭けられるのは、未来にわたる生命圏の健全性なのだ。p207「エネルギーは 永遠の喜び」から抜粋

 
8)ロング・ヘアーの一部が農耕を志し、辺境へ帰ってゆくのは、郷愁に駆られて19世紀を再現しようというのではない。先住の民インディアンから、謙虚に学ぼうとする白人の時代がやっと現われたのだ。私たちの子供、またその子供がいく世代もこの大陸に(月の上ではなく)生き続けるには、いかにあるべきか。この土くれ、これらの樹々、これなる狼を愛し守り、”亀の島”の原住民となること。p211「エネルギーは 永遠の喜び」から抜粋

 
9)現代の国々は、今やこれら化石燃料に、まったく依存している。だが生けるすべての内奥には、源泉なる太陽に近く、しかも異なった形を取るエネルギーがある。それは内なる力。どこから? 喜びから。無常を、死を十分に納得し甘受し、この生を生きる喜び。定義するなら

 
     喜びとは
     互いに溶けまじり合い 抱き合い
     差別と対立の彼方 完璧で 無で 複雑な
     輝くひとつの世界を
     認識し 実現しようと
     湧き上がる 純粋な感動

     p227「”詩人といえば”について」より抜粋

<2>につづく

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