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2011/06/21

銀河系の断片 山尾三省 堀越 哲朗/編集

銀河系の断片
「銀河系の断片」
山尾 三省 (著) 堀越 哲朗 (編集) 2009/03 幻戯書房 単行本 334p
Vol.3 No.0315 ★★★★☆

1)「山の時間海の時間」が、現在のところの最新の三省の消息だとするなら、この本は、三省の「全仕事」を俯瞰した上での、ベストコレクション、ということになるだろう。

2)三省を、その人生の区間で分けるとすれば、いくつかのパターンがあるだろうが、この本では一部と二部に分かれているのみである。

3)思えば、私の知っている三省は一部に大きなウェイトがあり、当ブログでも、今回読み進めてきたあたりなまでの内容となっている。

4)あとにもさきにも私は三省とは一度しか会っていないので、それこそ一期一会だが、それは1991年の「スピリット・オブ・プレイス」シンポジウムの会場でのことだった。私はスタッフのひとりとして忙しく動き回っており、三省はパネラーのひとりとして二泊三日で来ていた。その時、他のパネラーでもあった生物学者・清水芳孝先生(現在97歳)を紹介しながら、三人で同じテーブルで談笑したのが、印象深く思い出される。

5)二期に分けるとするなら、それは往相と還相にわけることができるかもしれない。あの1991年あたりが、三省にとっての還相がスタートしたあとの直線コースあたりだったかもしれない。

6)本書においては、二部制とはいうものの、一部に大きなウェイトがかかっており、二部は一部の半分の量の文章しか収められていない。しかし、それはそうあるべきであろうと思われる。

7)一部は、情報が多く、事柄の叙述が多い。それに比較すれば、二部は、むしろ透明化した心象が写し取られることが多く、むしろ、分量ではなく、一部の内容を踏まえたうえで、その行間を読んでいくことが大事になるからだ。

8)三省の文章は多い。いまから読み始める人たちにとってみれば、どこから手をつけたらいいのか、分からなくなるかもしれない。そして、三省の生きた世界は一様ではない。そんな時、このベストコレクションは、山尾三省、という人のひとまずの人生をかいま見せてくれる。

9)この本をインデックスにして、三省の元の本を読みだすことができれば、この本の果たした役割は大きいということになる。気取らない表紙が、いい。

10)編集の堀越哲朗は、私と同じ1954年生まれで、一年間のインドの旅の帰国後、雑誌記者などを経て、郊外で暮らしているという。「山暮らし始末記」(1999/06)がある。

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