グリーン・エコノミー 脱原発と温暖化対策の経済学
「グリーン・エコノミー」 脱原発と温暖化対策の経済学
吉田文和 2011/06 中央公論新社 新書 276p
Vol.3 No.0364 ★★★★☆
1)この手の本を、しかも3.11以降のものを、ようやく読みこんでやろう、という気になってきた。
2)その一番大きなきっかけは、なでしこジャパンのワールドカップでの活躍である。最後まであきらめないこと。チームワークを大切にすること。夢は実現するためにあること。教えられた教訓は大きい。
3)To Our Friends Around the World Thank You for Your Support このメッセージも大きかった。そうだな。世界中が注目しているのだ。地球上のマップで見れば、被災地にもっとも近く、原発にも限りなく至近距離にいる。
4)日本であって、本人、親族で震災から影響を受けなかった人はおそらく、皆無であろう。pi「はじめに」
5)沿岸部の津波の被害は甚大なものである。目を覆っても、耳をふさいでも、どうにもならない現実がそこにある。地震に襲われた内陸部においては、やや被害が少ないようにも見えたが、実際には、仕事や人間関係において、被害のない人などいなかった。しかし、それは、ここ東北に限らないのだ。日本全国、おそらく、地球上全体に影響を及ぼしているのだ。ましてや、この原発事故においては、だれもが無関心ではいられない。
6)この手の本を読む気にならなかったのにはいくつかの理由がある。まず、図書館が壊滅した。書店が閉鎖した。そして、あまりに被害が甚大で、しかも目の前にある。なにも図書館や書店に頼る必要などなかったのだ。あるいは、これ以上見たくない、という気持ちもあった。
7)グリーン・エコノミーとは、「環境保全型経済」であり、自然と調和し、環境に優しく、エコロジカルであり、社会正義にも合致した経済システムである。p54「グリーン・エコノミーとは何か?」
8)再開した図書館にも、ようやく3.11以降の新刊本が入るようになった。人気本は予約が殺到しているので後回しにして、とりあえず、手に取れる本からめくってみることにする。この本も必ずしも、目新しいテーマを扱っているとも、稀有な結論に到達しているとも思えない。「当たり前」のことが書いてあると思う。しかし、この、子どもにもわかる「当たり前」のことが、大人の世界では通用しなくなっているのだから、悲しい。
9)この本を読むのなら、ビル・マッキベンの「ディープエコノミー 生命を育む経済へ」(2008/4)などもキチンと読んでみたい。ネーミングとしたら、グリーン・エコノミーより、ディープ・エコノミーの方が意味深い感じもする。
10)この本のタイトルにもなっているが、「脱原発」は子供にもわかるテーマであるのに、これが、大人の社会では理解されない。口では言っても、実行できない。悲しいことである。
11)東日本大震災を受けて、長期、中期、短期の復興政策が必要であるが、その柱は、原子力発電の依存を減らしながら、地球温暖化対策をすすめること、そして震災に強く、環境に優しい国土と「よい生き方」を保証する生活の再建をすすめることであることは間違いない。それは膨大な投資需要を生み、雇用と消費をつくり出し、「よい生き方」と将来にわたる持続可能な発展のモデルとなりうる。p247「グリーン・エコノミーの展望」
12)このような文章も実にお題目でしかないように思う。この程度の把握なら、たとえば1992年の「スピリット・オブ・プレイス」などで、十分提案されていたし、理解し得ていた。しかし、そうならない。そうならないまま、このデッドエンドまで来てしまったのだ。そして、デッドエンドに来ても、まだ目が覚めない連中がいる、ということに、絶望する。
13)といいつつ、個人でできることは少ない。節電、ゴミの分別、ボランティア、ツイッターのつぶやき、デモ参加、あれこれ思いをめぐらしても、さして効果があるのかないのか、歯がゆいばかりの日々である。
14)この本の著者は、北海道大学の先生であり、3.11当時はドイツにいたということだから、むしろ、「外」からこの事態を見ることができただろう。結城登美雄や畠山重篤のように、「現場」にいる人は、こうは簡単に快活に語ることはできない。
15)いや、現地にいれば重くなる。むしろ、離れたところから、語ってもらうことも、大いに必要なはずなのである。
16)三省やスナイダーのように「森に住む」ことで全てが解決するわけでもない。彼らには「生産」や「経済」観念が希薄だ。なにか、もっと新しい現実的でしかも深遠なモデルが必要とされている。
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