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2011/07/09

レイチェル・カーソン 上岡克己・他

レイチェル・カーソン
「レイチェル・カーソン」 
上岡 克己 / 上遠 恵子 / 原 強 (編著), 2007/05 ミネルヴァ書房 単行本 175pVol.3 No.0351 ★★★★☆

1) 好著「森の生活―簡素な生活・高き想い」の上岡克己の繋がりで、この本を見つけた。やはりソローとレイチェル・カーソンは繋がっているのだな、と納得しつつ、東日本大震災や東京電力原発事故を体験した今、より今日的に、この先達たちをとらえ直す必要がある。

2)ソローについて、カーソンは「偉大なるナチュラリスト」とか、「身のまわりの世界を瞑想的に観察した代表的人物」という表現を用いて紹介している。p26「レイチェル・カーソン--人・思想・評価」鈴木善次

3)当ブログにおけるレイチェル カーソン読み込みは「沈黙の春」「『沈黙の春』を読む」などで始まったばかりだ。アラン・ワッツ的表現を借りれば、どちらかと言えば「ねばねば」派である当ブログにしてみると、彼女は、ちょっと「とげとげ」しく感じられて、積極的に取り組むには、準備期間が必要である。

4)彼女の後継を意識するビル・マッキベンなども、とげとげ派に属すると思われる。震災後、ひとつひとつの点検が必要であることが分かっているのだが、公立図書館の早めくり読書ブログでしかない当ブログには、なかなか精緻な読書態度を作ることは難しい。

5)いくらそれが事実であったにせよ、「これでもか、これでもか」といわんばかりの批判だけであれば、読者は「沈黙の春」を途中で投げ出してしまうだろう。しかし、「沈黙の春」はそれだけでは終わらない。人間と自然との関係はいかにあるべきかという点についてひとつの回答を示しているのである。p86「『沈黙の春』--世界を変えた本」原強

6)この辺を、これからゆっくり見ていくつもり。

7)彼女は、先進工業国による環境破壊に対して、多くの責任をもつべきだという反省もこめて、新しい環境理論として、「自然との共存共栄」こそ、現代の科学技術文明の矛盾を克服する道であり、人類を含むあらゆる生物が、この地球で生き残りうる唯一の道であるとのべた。

 カーソンのこの思想は、仏教思想や多くの先住民族にみられる「自然との共存思想」と共通したものがみらえる。「一木一草悉皆成仏」とか「一寸の虫にも五分の魂」というのは、東洋思想というより、原始アニミズム思想というべきものだろうが、そのことの現代的意義を、カーソンは、自然科学者の立場から指摘した人である。p132「『センス・オブ・ワンダー』」と幼児教育 竹内通夫

8)読み手側がどう理解するかは読み手に任されているが、彼女自身は、「仏教」や「原始アニミズム」に通じていたかどうかは定かではない。

9)次にあげるカリール・ジブランの詩を読むと、子ども期の大切さだけでなく、子どもの存在の意味について、考えさせられる。

預言者

赤ん坊を抱いたひとりの女が言った
どうぞ子どもたちの話をして下さい
(それで預言者は言った)
あなた方の子どもたちは
あなたがたのものではない
彼らは生命そのもの
あこがれの息子や娘である
彼らはあなたがたを通して生まれてくるけれども
あなたがたから生じたものではない---
あなたがたは彼らに愛情を与えうるが
あなたがたの考えを与えることはできない
なぜなら彼らは自分自身の考えを持っているから
あなた方は彼らの体を宿す事が出来るが
彼らの魂を宿すことはできない
なぜなら彼らの魂は、明日の家に住んでいるから
  p137「『センス・オブ・ワンダー』」と幼児教育 竹内通夫

10)ここでジブランに会うとは思わなかった。こうして、読み手たちが、盛んに他のナニかと「ねばねば」しようとするのは、やはり、彼女自身がすこし「とげとげ」している証左になるのではないだろうか。

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