森・川・海つながるいのち 畠山重篤
「森・川・海つながるいのち」 守ってのこそう!いのちつながる日本の自然
畠山重篤/宍戸清孝 2011/01 童心社 単行本 40p
Vol.3 No.0358★★★★☆
1)今年になっての発行である。「森は海の恋人」の、ひとつの完成形としての一冊がここにある。海の大切さ、森の大切さ、川の大切さを、漁師の立場から解説し、学術的に裏付けながら、なお、子どもたちに対する教育として位置づけた。出版社も童心社という教育関係の出版社からでている。
2)しかし、その数カ月後に東日本大震災が襲ってくる。その近況は震災後に出版された「鉄は魔法つかい」に僅かに報告されている。養殖棚は全滅し、気仙沼港も漁港としての機能を失った。森や川とて、大震災の地割れや放射性物質の影響など、計り知れない被害を受けている。
3)これまで、いくつもの難問を超えて、大きなムーブメントを巻き起こしてきた著者である。すでに68歳という年齢に達してはいるが、これから、まだまだ活躍が期待される。ここから東北沿岸部のリアス式海岸において、復興が進められ、本当の意味での地域が生き返るには、どのくらいの時間がかかることだろう。
4)三陸沖の漁場には、日本列島の河川からの「鉄」だけではなく、中国大陸アムール川(黒龍河)からのフルボ酸鉄も流入していて、さらに良質な漁場を生み出しているという。石巻湾に注ぎ込む北上川とアムール川は、 国魂学では見事に対応しているが、この本に関しては余談となってしまう。
5)アムール川流域も開発の嵐が押しよせています。巨大ダムの建設、森林伐採、森林火災、湿地の喪失、工場排水増加など深刻な問題が横たわっています。アムール川流域に暮らす人びとに、森と川と海がどのようにつながっているかを伝える必要があるのです。
気仙沼湾に注ぐ大川は、わずか25キロです。しかし、流域に暮らす人びとの心に自然を大切にする気持ちがふくらむと同時に、河川環境が復活してきました。水生昆虫の調査からもそのことが判明しています。新月ダム計画も中止となりました。
今では、大川はサケが七万尾も上がる川となり、海の環境も大幅に改善されました。
「森は海の恋人運動」は、人の心に木を植えることだったのです。 p39「あとがき」
6)なかなか素敵な結句だ。40ページ足らずの子供向けのカラー図鑑であってみれば、このような「ハッピーエンド」でこの本が終わるのは、とても救いがある。
7)しかし、人生は、地球は、真実は、そう簡単な終わり方をしない。東日本大震災は、著者や、「森は海の恋人運動」に新たなる宿題を提出した形になった。この動き、今後も、熱い想いを込めて注目していきたい。
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