こうして原発被害は広がった 先行のチェルノブイリ ピアズ・ポ-ル・リ-ド
「こうして原発被害は広がった」 先行のチェルノブイリ
ピアズ・ポ-ル・リ-ド/高橋健次 2011/06 文藝春秋 単行本 405p
No.0397★★★★☆
1)チェルノブイリについて書かれた本の最高峰とされるこの本は、1993年にイギリスのノンフィクション作家によって1993年に英語で出版され、1994年に邦訳された。その時点までのチェルノブイリが書かれているわけだが、今回の3.11大震災を受けて、この6月に解説を加えて新装出版されることになった。
2)この本、最高峰というだけあって、文字数は多いし、二段組みだし、文字は小さいと、途中で投げ出したくなるような本である。ましてや、おびただしい数のロシア人(とその周辺の人々)の名前が乱発されるので、まるで、ロシアの文豪たちの文学作品を読むような、重々しさがある。
3)更に、原発のルーツをたどるために、第二次世界大戦中のソビエト内の政治情勢あたりから語られるので、ホントに重い。実際、この本、すでに一カ月くらい前から手元にあるのに、すこしづつすこしづつしか読み進めることができなかった。
4)ついに文字面を追うのを止めて、今回は、大体の全体像をつかむことでよし、とすることにした。
5)登場してくる単位(レム)などの読み込みも十分ではない。シーベルトやベクレルなどの単位と連動しながら、もっとリアリティを持って、読みなおさなければならないだろう。
6)この本の持っている意味は多義的である。
・ソビエトという国家体制の在り方について。
・国家をささえるためエネルギー政策としての原発の在り方について
・原発と核兵器の関係について
・人間の巨大技術のほころびについて
・放射性物質汚染のおびただしい事実の検証について
・「廃炉」に向けての、今後の努力について
・他
7)チェルノブイリについての本格的な総まとめ的な一冊ではあるが、とっかかりとしての一冊目としてはいささか重すぎる。もうすこし軽めの本で、チェルノブイリの全体像をとらえてから、この本で全体像を組み直すのがいいだろう。
8)1986年当時、チェルノブイリという名前が、ニガヨモギのロシア名であるということで、「ヨハネの黙示録」が話題になった。私はなどは、そちらのほうの話題に共鳴していったので、チェルノブイリを科学的な身近な問題としては、なかなか捉えることができなかった。
9)もし、この25年前の事故を、我が事としてもうすこし積極的に検証していけば、今回の東電原発事故は起きなかったのではなかろうか。すくなくとも、これだけの、原発野放し社会にすることはなかったのではないか、と反省する。
10)今後、二次被害としての健康被害が調査されることになるだろうが、チェルノブイリの事故を対岸の火事として見ていた日本には、このレポートは、参考になる部分が多くある。
11)チェルノブイリ事故を契機として、ソビエトは崩壊していった、とも言われるが、日本もまた3.11を契機として、「よい方に」変化していくことを期待したい。
12)3.11原発を検証するために、スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故、東海村原発事故など、気が重くなるような事実の連続だが、これらをキチンと把握し、整理しておく必要もあるようだ。
13)なお、チェルノブイリ事故は、人為的ミスにより発生したとされているが、実際には直下型事故で発生した、とするレポートも再読する必要がある。
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