いま原発で何が起きているのか―特別報道写真・解説集 原発震災の100日
「いま原発で何が起きているのか」―特別報道写真・解説集 原発震災の100日 フクシマから日本へ われわれはどう生きるか
共同通信社 2011/06 大型本: 88p Vol.3
No.0392★★★★★
1)印刷物としては、やはり単行本より雑誌などの方がより最新のニュースを伝えてくれる。さらには、文章で綴られたものよりは、より写真の方が、一目で「いま何が起きているのか」が分かりやすい。だが、原発の被害状況は分かっても、無色透明、無味無臭とされる放射線や放射性物質が、私たちの生活に「何を起しているのか」を知ることは、本当は写真でもわからない。
2)この本は不思議な本だ。多分、姉妹本だと思われる同じタイトルの本が、数冊ある。共同通信、河北新報、神戸新聞、信濃毎日、新潟日報、福井新聞、山陽新聞、京都新聞、など多数のバージョンが見られる。これは、全国新聞社出版協議会の合同出版企画によるものらしく、それぞれに少しづつ内容に特徴がありそうだ。
3)「原発震災の100日」ということで、6月26日が発行日となっている。現在はすでに8月になっているので、さらに状況は変化しているわけだが、3.11以降の原発震災については、おおよその流れがわかるようになっている。
4)雨が降った後の(3月)23日には、福島県に続き、東京都の水道水で乳児の基準の1キロ当たり100ベクレルを超えた210ベクレルを検出。戸は、乳児に水道水を飲ませることを控えるように求めた。p44「水、母乳の汚染」
5)このベクレルという奴が、いまだによくわからない。
a)一般人はどうやって測ればいいのか
b)危険域はどこからどこまでなのか
c)取り過ぎればどのような影響がでるのか
d)何時まで続くのか
e)誰が責任を取るのか
f)シーベルトなどの単位との関係・・・などなど
6)見開きページで、「原子炉解体 廃炉への道」の石川迪夫が、日本原子力技術協会最高顧問として登場している。「僕は今でも、原子力は推進していくべきだと思う」(p51)と明記している限り、原発推進派、とスティグマを張っておいていい人物なのだろう。
7)国際放射線防護委員会(ICRP)は、非常時の年間被ばく限度は20~100ミリシーベルトでよいと勧告してきた。その最低の20ミリシーベルトを避難基準に採用したのはあまりに愚策で、放射線を気にしすぎだ。仮に真ん中の50ミリシーベルトにすれば、計画的避難区域はたいていの人が帰れる。そういう知恵が政府には足りない。住民の選択に委ねる方法もある。住民の健康診断はして、農作物も買い上げたらよい。p51「防災の不備、初動にも悔い 冷却目指し 内外から知恵を募れ」
8)ガクっと力が抜ける。こういう発言をする人が、日本原発界の最高顧問なんだな。「住民の選択に委ねる」という責任放棄。放射性物質の危険性もなにも全く知らないドシロートたちが、どうやって自己判断せよ、というのだ。その測り方も、意味もよくわかっていないのに。健康診断をして、農作物も買い上げる、というが、それは、石川迪夫という人、自分で全部経費をだすのだろうか。
9)日本のエネルギーは「冬の時代」に入る。電気料金は高くなる、工業国としての地位も危うくなる。どうするかは国民の選択だ。原子力発電というのはエネルギーの問題でもあるが、科学技術を発展させる根幹の問題でもある。p51「同上」
10)なんという火事場泥棒的感覚。なんという居直り強盗的感覚。これが原発村の感覚なのだ。強制的に避難させられた人々ばかりではなく、見えない恐怖に逃げまどっている国民の姿が見えていない。子どもや、これから生まれてくる子どもたちが見えていない。
11)「フクシマから日本へ われわれはどう生きるか」。このサブタイトルは重い。3.11天地人の、人にかかわる問題である。
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