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2011/08/15

原発・核事故に備えろ―どう逃げるか? 地球市民として暮らす 林義人・他

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「原発・核事故に備えろ」―どう逃げるか?  地球市民として暮らす
林 義人 (著), 山崎 智嘉 (著) 2000/02 学習研究社 単行本: 160p
No.0399

1)この本をレインボー評価しなければならないことが、悲しい。

2)この本は、1999年9月の茨城県東海村におけるJOC事業所における臨界事故を受けて、その事故検証とともに対策が書かれた本である。すでに10年以上まえに起きた事故であり、それに対して書かれた本である。

3)それにも関わらず、内容が極めて今日的に思える。事故の本質が変わっていないばかりではなく、事故に対する対策が、本質的になんの変化がないことにおどろく。つまり、何にも解決していないではないか、とさえいえる。

4)今回の3.11原発事故は、天災を契機として発生したことであり、その規模は、東海村臨界事故とは比較にはならない。とてつもない大災害となってしまった。しかし、それはすでに予想されたことであり、いずれこのような悲劇的な事故が発生することは予告されており、その結果まで充分シュミレーションされながら、手を打てずにきたのだ。今回の事故は決して天災ではなく、明らかな人災であることを示している。

5)ウランの化合物に放射線を出す性質があることを発見したベクレルは、1896年にラジウムの化合物をポケットにいれていたところ皮膚に紅斑が生じた。このことを聞いたキューリー夫人は同じことを試してみてやはり紅斑ができることを認めている。そして、夫人は白内障や再生不良性貧血などの放射線障害に苦しみ、白血病死した。p67「次々発がんした放射線科学の先駆者たち」

6)そもそも、放射線技術の初期の段階から、その危険性は認識されていたのだ。

7)発明王エジソンもじつはX線が発見されて間もない時代に、それを使った製品を開発しようとしていた一人だった。ところが、エジソンはそのために目に異常が生じ、ダリーという助手にも障害が現われたために開発をあきらめてしまう。医師はダリーの放射線障害として現われた潰瘍を見て「他の病気に比べるべくもない」と言ったという。ダリーの潰瘍はがんに移行して左右の手を切断され、ついに39歳の若さで死亡した。p67「次々発がんした放射線科学の先駆者たち」

8)最初の最初から、このような危険性の中で、人間界は、この危険性をコントロールしようとしてきたのだが、現在のところ、それは不可能という結論がでている。

9)原発事故が起きて放射能に汚染されてもそれだけで即死すうrことはほとんどない。ただし、その後長い間放射線障害に苦しまなければならなくなる恐れもあるし、がんに移行する心配もでてっくる。
 障害を最小限に抑えるうえで大切なのは、できるかぎり被曝量を少なくするということだ。受ける放射能が多くなるほど危険性は多くなってしまうし、被曝量は放射能にさらされている時間に比例して増加する。
p72「一刻も早く逃げろ! 原子力事故から身を守る法 いかに早くにげるかが運命のわかれめ」

10)一般には放射能事故は客観的には把握できない。情報を管理する担当者や政府、あるいは専門家が、適正かつ迅速な指示を出さなければ、一般人は、なにも知らないで、被曝する可能性が高い。今回の3.11原発事故における、彼らの対応は、まったく適正ではなかった、と言える。

11)事故現場から10キロ、10~30キロ、30キロ以上、などのケースについて本書はアドバイスしている。今回も80キロ圏外まで脱出せよ、という指示を出した国もあった。しかしながら、キロ数によって安全が確保されるということではなく、風向きや雨などによって大きく変化する、ということが改めて、確認された。

12)ましてや食物汚染による内部被曝は、キロ数にほとんど関係なく起こりうることが分かり、これからの日本人のみならず、地球人は、みずから作り出した猛毒=放射性物質と共存せざるを得なくなったのだ。

13)小さなポケット線量計でも、5万円という価格なので、一家にひとつというわけにもいかない。近くに核施設や原発のある地域では、町内会などの単位で設置を考えるべきだろう。p95「個人でも買える放射線測定器」

14)ガイガーカウンターについては、別途、購入を考慮中である。遅いと言えば遅いのだが、幸いにして、周囲にすでに購入した人々が多数いるので、それらの人々の計測結果を聞いて参考にしている。

15)現在のところ、かなり高い、という結果になっている。それこそ、ただちに健康に影響がないレベルではあるが、晩発性被害を考慮すれば、その被害はまだまだ予測不可能だ。ましてや、これから放射線の量が増加する危険性も残されているのだ。

16)東海村JOC臨界事故は、この本がでた当時でも、世界の原発事故ワースト4~5位にランクされていた。それでもレベル4の評価だった。今回の3.11原発事故は、レベル7。1986年のチェルノブイリ事故と並び称されているが、今後の検証いかんによって、世界で最大の原発事故として長く記憶されることになるだろう。

17)原発推進派とは誰なのだろう、といぶかってきたが、それは政府そのものだった。国が積極的に原発を推進してきたのだ。いくら原発の危険性を危惧しても、国が推し進める限り、正しい情報が国民に伝わらないのは、当たり前だったのだ。

18)日本では、原発の寿命は30年~40年という想定で設計、建設、運転されてきた。1970年代に建設された原発は、そろそろ引退を考えなければならない時期なのだ。ところが、各地で原発の建設に反対する運動が強くなり新しい原発をつくることは難しくなっているため、今ある原発をできるだけ長く運転しなければならない。p148「原発・核事故はまた起きる1? 延命運転のために毎日が綱渡り」

19)今回の原発事故は、今後、徹底的に検証されなければならないだろうが、まずは、津波が来る前に原子炉が地震で破壊された可能性がある。その後の全電力喪失は津波によって引き起こされたのであろうが、いずれにしても大事故であることにかわりはない。

20)今後、地震大国日本においては、すべての原発が、今回の事故同様の危険性に支えられていると言える。ここで、まず、国が「脱原発」を強く意識しなければ、ほんとうにこの国は終わりなのだ。

21)この本が11年前にでていることから分かることは、日本は過去から何も学ばなかったばかりではなく、事実を直視する勇気さえなかったのだ。

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