放射能のウソ・ホント 食の安全は?身体への影響は? 大谷浩樹
「放射能のウソ・ホント」 食の安全は?身体への影響は?
大谷浩樹・監修 2011/07 東京書店 単行本 192p
No.0402★☆☆☆☆
1)私のようなドシロートでも、数十冊の原発本をめくってくると、それなりの基礎知識が身につくようだ。それが正しいかどうかはともかくとして、どの程度の範囲に及ぶ領域なのか、何が問題なのか、とりあえず、どこをカバーすれば、自分なりに納得するのか、そういうことが自然に分かってくるようだ。
2)それは別に原発に限らず、スマートフォンについてであれ、だれか、例えば村上春樹のような小説家についてであれ、あるいはチベット問題であれ、我慢して読み進めてみれば、まずまずの自分なりのフォーマットができてくるものである。
3)だから、現在のところ、当ブログにおいても、それなりの概略図というものが出来上がってきている。それを全体的にチェックする意味では、この本は役に立つ。ほとんどが見開き2ページで一問一答式で構成されており、およそ80以上の項目に渡って、チェックすることができる。
4)しかし、ウソ・ホント、という○×式のこの本に対する私の信頼は極めて低い。この本は、著者の監修、となっているが、本当は誰が書いたのかはわからない。誰かが書いて、細かい数字や大筋のストーリーをチェックしたに過ぎないだろう。
5)むかし、なぞなぞがあった。
6)A駅とB駅は1キロ離れている。線路の上に枕木が、1メートル間隔で置かれている場合、A駅とB駅の間には何本の枕木があるでしょうか?
7)1キロ=1000メートル 1000メートル/1メートル=1000本となるが、始点と終点をどのように数えるかで、慎重な人なら、999本か、1001本、と答えるだろう。
8)ところが、答えは1000本でも、999本でも、1001本でもない。正しい答えは0本である。
9)なぜ?
10)「線路の<上>には枕木は一本もない」からである。
11)なんとも悲しくなるなぞなぞだが、残念ながら、この本にはこの手のトリックが満載されている。
12)そもそも、「放射<能>のウソ・ホント」という、曖昧な問いかけをタイトルにしているところからして怪しい。今回の報道にしても、慣例として使われてきた「放射<能>」という言葉は、ほとんどが「放射<線>」や「放射性<物質>」に置き換えられている。
13)この本は、この慣例的な誤解を利用した形で、上のなぞなぞのような<曖昧>な問いかけに対して、○×(あるいは時には△)という明確な答えを提示しようとする。
14)しかし、そもそもが微妙かつ証明不能な分野について、○×で答えることができないのは当たり前だ。どうしても曖昧な表現になる。それを恣意的に○×で答えようとするから、問いかけそのものの中に仕掛けを作っておかざるをえない。
15)ゆえに、私はこの本を信頼しない。書いてある断片的な知識は面白いのだが、この本は、決して科学的な本ではなくて、恣意的な政治的な本である。ゆえに、この本を抜き書きすることさえ、躊躇する。
16)客観的な立場をよそおった、隠れ原発推進派だ。
17)このような輩が横行するようでは、何時まで経っても、真実は表にでない。真理に到達できない。
18)このような輩が横行するから、脱原発派は、言動がきつくなる。
19)交際を求められた相手が、曖昧な答えを出していると、申し込んだ本人は好かれていると誤解して、距離を詰めようとする。本当は嫌いなのだから、はっきり断ればいい。それをしないと、ずるずると、彼を、彼女をストーカーのような中途半端な立場に追いやってしまう。
20)原発が要らないと思う人は、はっきりとNO!と言おう。中途半端な反応は、推進派に間違ったサインを送ることになる。「この人たち、原発を何処まで許容するかな?」 推進派は、こちらの顔色をうかがっている。
21)いや、原発は駄目だ。NO!だ。隠れ推進派のトリックなぞなぞに引っ掛かっていてはいけない。こいつらのいい加減な態度に、はっきりとNO!と言おう。
22)そもそも、国と大資本が推進派なのだ。脱原発派は、ひとりひとりの国民であり、知識も情報も体験も少ない。そこのところを突かれている。分断され、金でほっぺたを叩かれ、見殺しにされる。
23)脱原発の道は必ずしも容易ではない。だからと言って、許容的な曖昧な態度を取ってはいけない。その曖昧さが、彼らをのさばらしてしまった。駄目なものは駄目なのだ。
24)そろそろ皆んなで、NO!と大声をだそう。
25)ゆえに、この本、0点。
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