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2011/08/06

低量放射線は怖くない 日本人の放射線アレルギーを吹き飛ばす! 中村仁信

【送料無料】低量放射線は怖くない
「低量放射線は怖くない」 日本人の放射線アレルギーを吹き飛ばす!
中村仁信 2011/06 遊タイム出版 単行本 125p
Vol.3 No.0388★★☆☆☆

1)どことなく人を喰ったようなタイトルだ。1971年医学部を卒業したということだからすでに70歳に近い年齢の医者なのだろう。医療法人の院長でがん治療に従事している。

2)一般的な読者の無知識を意識してか、放射線と放射能を明確に意図的に区別しており、しかも低量と限定している。怖くない、という。あるいは日本人の放射線アレルギー、と揶揄している。これは著者のテレビ出演を見て出版を勧めた出版社の意図的な編集方針ではあるだろうが、その辺のセンスのお行儀がよろしくない。

3)現在のところ3.11以降、問題になっているのは、放射性物質=放射能であり、情報公開されていない不確定な被ばく量についてなのだ。だから、逆に言えば、「情報公開されていない放射能は怖い」ということにもなる。

4)中村 今回の福島の原発事故では、発表が正しければですが、放射線の量は少ないので遺伝についてはまったく問題はないと思っています。政府の発表は正しいと研究者の間でも言われていますので、信じてよいと思いますよ。p62

5)困ったな、こういう論法では、まったくお話にならない。この「鼎談」は震災後の4月26日に大阪で行われたということになっているが、まったく真実味のない、薄っぺらい本となっている。

6)今回の政府の発表は虚偽が多かったばかりか、後手後手にまわり、正しい情報の隠蔽ばかりか、正しい情報を記録するという努力さえ放棄されていた形跡がある。たとえば、今になって農作物や畜産物の放射能汚染が巨大な被害を生み出している宮城県などでは、知事率先して、風評被害が怖いから、調査しない、とさえ明言していたのである。

7)「研究者」とは誰のことか。多くの研究者は、今回の政府の対応に不満を持っている。

8)現在では日本人の訳30%がガンで死んでいるんですよ。30%と30.9%の差はそれほど大きくありません。p69

9)たしかに昨日、小出裕章講演会を聞いていて、たとえば一定程度の放射線を浴びると将来ガンで死亡する可能性が何十人に1人増える、などという数字があって、はてさて、その程度の数値なのか、とちょっといぶかったことだった。

10)しかし、これはあくまでも実験や計算での話。実際はよく分かっていない。少なくとも、今回の私たちが浴びてしまっている放射線量はまったく明確になっていない。これから何年もかけて調べなくてはならないのだ。放射線治療病棟のような精緻な管理が行われている空間でのことではない。

11)ましてやホットスポットや食物連鎖によって、今後はるかに高濃度の内部被爆を繰り返していく可能性があるのだ。著者や編集者達のオプチミズムは、やはり一般的な国民感情からは外れている。

12)紫外線も放射線も太古からあって、人類はその両方を浴びながら、よいように取り入れて進化してきているので、まったくなくなると不都合が生じるかもしれないというお話でした。
 しかしホルミシスとは、放射線や紫外線がまったくないと生物に不都合が生じるというレベルではなく、微量であれば体によい影響があるというお話です。
p90

13)この開業のお医者さんは、放射線は怖くないばかりか、体によい影響がある、とさえ主張する。そもそも医学的にも放射線治療というものがあり(私も受けた)、有効利用できることはたくさんあるあろうが、今回の原子炉のメルトダウンに伴って、水素爆発で地球上に無差別にノーコントロールで拡散されてしまった放射能汚染のただなかで、こんな「お話」を綿々としているのは、まさにマッドサイエンティストである、と私には思える。

14)中村 ホルミシスは基本的に、長期間持続した、あるいは繰り返しの慢性被ばくです。治療とホルミシスの話とは、ちょっと違うのですが、ガン治療で放射線を使用しています。100ミリシーベルトを週3回、5週間で合計1500ミリシーベルトを全身に照射してガン治療に活かそうという研究があります。

 よく耳にする放射線治療のことでしょうか。

中村 いいえ、これはまったく別のお話です。放射線治療の50分の1位の線量の全身照射ですから。 p115

15)自分もかつて若い時に受けた治療時に、どれだけの放射線を浴びていたのだろうか、と今回の事故後に考えた。上のような話だと、1回で5000ミリシーベル位浴びていたのだろうか。あれを10数回繰り返したと記憶している。

16) 先生はICRP、国際放射線防護委員会の委員を務められたのですね。

中村 はい、1997年から4年間、第3委員会という医療被ばくを検討する委員会に入っていました。 p74

17)世の中にはいろいろな考え方があり、いろいろな組織がありそうだな、ということもわかる。いきなり私のようなドシロートがこの問題を考え始めても、急にはよく理解できないことが多い。しかし、今回は、医療被ばくを検討しているわけではないのである。病院の管理下における「低量」であれば放射「線」は「怖くない」ばかりか、ホルミシス効果がありそうだ、という可能性は残しておこう。

18)しかし、3.11という未曾有の災害の中において、しかも、この災害時を狙ったかのように、このような紛らわしいタイトルでこのような本を出版することの、業界人としてのセンスを疑う。医療人としても、出版人としても。

19)3.11における天地人の中から、あえて地としての原発事故に焦点をしぼり、さらには放射「能」に重点的に注目してやろうというところまできた当ブログではあるが、このような紛らわしい輩が跋扈している3.11以降なのだ、ということは肝に銘じておかなければならない。

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