人間と環境への低レベル放射能の脅威 福島原発放射能汚染を考えるために ラルフ・グロイブ他
「人間と環境への低レベル放射能の脅威」 福島原発放射能汚染を考えるために
ラルフ・グロイブ/アーネスト・J.スターングラス 2011/06あけび書房 単行本 337p
No.0416★★★★☆
1)低量放射線に対する最もオプチミックな本が中村仁信 「低量放射線は怖くない」(2011/06)だとすれば、低レベル放射能に対する最もペシミステッィクなのが、こちらのこの本と言えるだろう。
2)「低量放射線」と「低レベル放射能」という表現の違いがあるが、一般社会人の中でももっとも無知な部類に属する当ブログとしては、その違いに大きな差異を認めない。
3)放射線とは、放射性物質から放たれる力のことであろうし、放射能とは、放射性物質から力を放つ能力のことであろうとすれば、「低量放射能」とか「低レベル放射線」とは表現されにくい、ということはわかる。
4)ただ、表現されようとしていることの、根本的な現象は同じことから発せられているはずだ。
5)1985年に初版が出版され、1994年には改訂第二版が出版された。ドイツ語で出されたものが英訳され、そこからさらに日本語へと重訳されたものと思われる。
6)邦訳の準備が進んでいたところ、3.11原発事故が発生し、日本国内としては、時機を得た出版になった。
7)専門家ならぬ、一般のふわふわした読者でしかない当ブログとしては、このような専門書(読者層を広く設定しているが)を詳しく読み下す力はない。ただ、しきい値以下を、ゼロと読んでしまうのか、こまかく追っかけるのか、ではだいぶ違ったことになっている、と思う。
8)にわかに、どちらが正しいのかは判断はつかない。デジタル思考で、安全、危険、という二価値判断だけでは、今回の放射線問題は解決しないはず。
9)低レベル=低量であるなら、安全とするのは、いわゆる原発推進派で、低レベル=低量であっても、なお危険、とするのが、脱原発派、という色分けになっている。
10)どちらかと言えば、脱原発派の当ブログとしてみれば、当然、低レベル=低量であっても、被曝したくないのに、被曝させてしまう原発は要らない、ということになる。
11)推進派のオプチミズムの一つのささえとなっているホルミシス効果(仮説)も、キチンと証明されている物でもなければ、一般的に支持されているものでもない。ホルミシス効果は、希望する人が自らの意思で被曝すればいいこと(例えばラドン温泉に浸かる)だが、希望しない者たちをまで、無差別に巻き込む放射線の乱射は、ホルミシスとはまったく意味がちがう。
12)こちらの本は、人間の肉体に関するばかりではなく、自然環境、とくに森林に対する影響などを検証する。あまりに広範囲に及ぶ話なので、なかなか追い切れない。こちらは、せいぜい、今回の3.11における影響下において、自らが生活していくのに、現在の環境が適しているのかどうか、ということを、まずは確認したいのである。
13)このような本は、誰か信頼できる専門家がキチンと読みこんで、私たちに分かりやすい形で説明してくれるのがいいだろう。あるいは、時間はかかるだろうが、このような本がある、ということをキチンと覚えておいて、さまざまな資料を乱読した上で、再読、精読してみるのがよいのであろう。
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