「太陽光発電は本当にトクなのか?」 山下和之
「太陽光発電は本当にトクなのか?」
山下和之 2010/04 毎日コミュニケーションズ 新書 207p
Vol.3 No.0428★★★★☆
1)この本は3.11のちょうど一年前に出版されている。だから情報は古いのであるが、時々刻々と変わっている太陽光発電廻りの環境につき、一年前は、さてどういう状況だったのか、ということを知るには大いに役に立つ。
2)「本当にトクなのか?」というのは、話題へ引っ張るための反語であって、答えは「おトクです」ということになる。ただし、よくよく考えてね、ということだ。
3)いま買わないとソンじゃないのか、いや3年後がチャンスだなどと、一番トクできる時期を見極めようと血眼になる必要はありません。本当に自分たちにとっていま必要なのか、いまでなければいつがいいのか、ジックリと家計や将来設計などに応じて見極めることが可能になります。p80「いつ買っても、『設置費用は10年で回収』が目安?」
4)ヤッパリな。初期投資を10年で回収したい、と思っていたのは、私ばかりではなかった。私は別にケチでもビンボーでもないのだ。一般的には、その感覚であるはずである。
5)2010年度に設置した人の買い取りが向こう10年間48円なのに、今年設置した人は向こう10年間42円の買い取り価格だ。なんだか不公平だなぁ、損した、と思っていたが、これには訳がある。
6)10年で初期投資を回収する、という目標を公にした場合、今後、初期投資がどんどん減って数年中には半額にする、と言ってしまうと、当然、私でも数年待って、半値で叩いて設置したいと思う。
7)つまり、早く増やしたい、今後どんどん安くなるだろう、という見込みの中、早期に設置した人が損をするようなシステムではいけない、ということだ。現在のやや高価な価格で設置した人には、向こう10年間買い取り価格で補助しましょうというシステムなのだ。
8)つまり48円→42円と減額してきた買い取り価格が、今後、また増えていく可能性はゼロに近い。つまり、来年度以降はず~と右肩下がりに下っていくことになるのである。
9)逆に言えば、昨年システムを導入した人より、今年導入する人は、42÷48で、対比で言えば88%位の初期投資額になっていてしかるべきだ、とも言える。
10)漠然と考えていた当ブログの、「初期投資100万、10年で回収」という目論見は、別に突拍子もない目標ではない。ソーラーフロンティアの105万(2.4kw)のセットなどは、別に安かろう悪かろう、ということではなく、おのずと安価になっていくだろう方向性を示しているだけに過ぎないのだ。
11)また買い取り(売電)価格の変動を考えれば、初期投資を惜しんで数年待つ、ということも、あまりメリットのあることではなさそうだ。早めに設置して、早めに初期投資を回収してしまえば、あとからのメリットは早くくる、ということになる。
12)ドイツでは、2000年に「再生可能エネルギー法」によって、「フィード・イン・タリフ(EIT)と呼ばれる制度を実施しました。
これは、個人や企業が太陽光発電システムを設置することで得られた電力を、発電コストを上回る固定価格で買い取るもので、後に買収の上限枠も撤廃され、全量買取になりました。これによって、個人が自宅に太陽光発電システムを設置する動きが促進されるだけではなく、投資資金も集まってきます。発電コストより高く買い取ってくれるのですから、投資家も安心して資金を預けることができるわけです。p44「ドイツでは全量を高額で買い取る制度」
13)テレビなどでも、にわかに外国の持続可能な代替エネルギーについての情報が流れるようになってきた。脱原発は世界の潮流であり、ひとりひとりが行動していかなければならない以上、個人としては、太陽光発電システム導入などは、数ある方法の中でも、今、もっとも現実的な行動である。それを促進するために、各国いろいろ工夫しているようだ。日本だって、工夫する必要があるだろう。
14)この本自体は、新築や昨年度まであったエコポイントの導入の仕方などに多くを割いており、必ずしも我が家にぴったりの本ではないが、太陽光発電システムを導入するための補助金申請は、4分の3が中古住宅だ、というのだから、わが家も、臆せず、もっと細かくプランニングしてみる価値はありそうだ。
15)現在(この本がでた当時)30万世帯だった太陽光発電を、10年後には1300世帯にしたい、という公的な目論見のようだ。これには多いに賛同する。つまりは1年間で100万づつが太陽光発電になるということだ。
16)ハイブリッド車プリウスが200万台を超えるのに、約10年かかっている。初期的な高価なイメージや技術の不安感を脱ぎ去って、ようやくブレークしたのはこの数年だが、1000万台になるまでには、まだまだ時間はかかるだろう。
17)他のメーカーや電気自動車などの開発によって、今後うなぎ昇りに増えて行くはずだが、太陽光発電業界も、もっと国家プロジェクトとして、根幹産業として育っていく必要があるようだ。
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