わが家ではじめる太陽光発電<1> 屋根から屋根へ、つなげみんなの発電所 太陽光発電所ネットワーク
「わが家ではじめる太陽光発電」 <1>屋根から屋根へ、つなげみんなの発電所
太陽光発電所ネットワーク 2004/06 合同出版 単行本 159p
240p No.0410★★★☆☆
1)この本の情報は古い。1990年代中盤から始まったとされる日本の太陽光発電の歴史を感じる一冊である。この本が発行された2004年においても、この程度の「惨憺たる」実績だったのだ、と改めて確認する。
2)その後、法制度の転換によって、ますます太陽光発電は、窮地に追い込まれた。最近のメガソーラー騒ぎや太陽光バブルなどの単語など、思いもつかない状況であったのだ。
3)しかしながら、その絶望的な展望の中にあって、なお、果敢に太陽光パネルを屋根に上げるという衝動にかられた人々はたくさんいた。今読んでみても、ややドンキホーテ的喜劇を連想さえしてしまうが、当人たちは至って真面目な人達が多い。
4)この本には約20の導入実例が乗っており、インタビュー形式でなんとも親しみやすい、人間味あふれる一冊ということになる。
5)Q、設置費用などの初期投資分は、何年で回収できますか?
A、太陽電池の取得時期、電灯契約によっても差があります。最近取得した方の場合は、標準家庭(4人家族)の場合、電灯契約が従量電灯Bの場合で30~40年、時間帯別契約の場合20~30年で初期投資が可能です。節電に務めている人の中には、前者で20年前後、後者で15年前後のケースがありました。
電力会社によって深夜電力を併用した電力契約メニュー(東京電力ではナイト8、ナイト10、電化上手など)があり、昼間の電力量が30円/kWhを超えるものがあります。この場合は回収年数が5年前後、短縮することがあります。p136
6)実に気の長い話である。40年と言えば、年金の払い込み機関に相当する。あまりに効率の悪い日本の公的年金だが、40年間払い続けてようやく初期投資が回収、というならば、むしろ、公的年金に金を預けていたほうが、絶対メリットがある。
7)当然、太陽光発電と公的年金制度では、持っている意味が全く違うが、導入メリットを経済的メリットを主に考えるのであれば、絶対に太陽光発電には手を出してはいけない。ただし、それはこの本が出た2004年当時の試算である。
8)3.11原発事故を体験した今、日本国民にとって、なおかつボランティア精神に富み、すぐにでも導入できるような環境のある人々にとって、太陽光発電を、まるでピエロかドンキホーテのような状態にしているのは、政府の失政である。だれでもが、もっと気軽に、導入できる環境を調えていく必要がある。
9)同じような耐久資材から考えて、せめて小型自家用車並みの導入リスクにしなければ、太陽光発電は、一般的にならないし、力あるものにはならないだろう。
10)個人的には、100万の初期投資で、10年で回収。その後は、メンテナンスや改造も含めて、売電が、消費電力を大きく上回るような設定でなければ、導入したくない。
11)Qシステムの維持管理費用はどのくらいかかりますか?
A不都合がない限り、ほとんど維持管理費はかかりません。しかしメーカーによっては「10年保証」を受ける場合、4年おきの有償点検が義務付けられ、1~5万円の費用を請求するところもあります。完全にメンテナンスフリーというわけにはいきませんが、風力発電などと比べると費用は格段に少額です。p136
12)名のある住宅メーカーだからと言って、10年先のことなどわからない。10年保証など、空手形になる可能性が大。ましてや身元不明な訪販会社に設置してもらったりしたならば、要らぬお荷物を背負いこまされる可能性はゼロではない。
13)風力発電を一般の民家が導入することなど、ほとんどあり得ないが、太陽光発電は、南向きの屋根と、若干の投資行為があれば、どこにでも付けることができる。脱原発を、本当にリアリティあるものにするには、まず、この太陽光発電をもっともっと増やすことが大切だろう。
14)導入する家庭が、50万戸を超え、100万戸、500万戸となり、1000万戸となり得るなら、原発など、絶対要らない!と、言えるはずだ。
15)責任ある立場の方々、どうぞ、太陽光発電を「わが家ではじめる」ための、具体的なベストプランを提示して欲しい。
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